魔王の意外な言葉、僕たちは驚愕した
僕は剣を構える。
だがその声は全く意に介していないように言う、
「そうかもしれない。
だが、ならばきこう。
我はこの世界に何をした?」
「なに、、を?」
言っている意味が分からなかった。
魔王は悪であり、勇者である僕と対を成す存在、
何を『した』から倒すというよりも、魔王の『存在そのもの』が悪。
故に倒さねばならない。僕は無意識にそう考えていた。
しかし、その悪のオーラとは真逆に、その言葉には知性の光を感じたのだ。
圧倒的な悪のオーラに対して、それは大きなちぐはくさだった。
だから気になり、応えた。
「ひとつ聞きたいけど、、あなたは、この世界を滅ぼそうとしているんでしょ?
その存在自体が人々を惑わす。それはあなたの仕業なんですよね?!
それが、悪いことでなくてなんだというんだ!?」
そう、前に読んだ、勇者の伝説にはそう書いてあった。
魔王は、魔王大陸と呼ばれる場所のある範囲に、城や守護者とともに出現する。
そして勇者が倒さなければ、いずれ人々は狂気に陥り、殺し合いや国同士の戦争をするというのだ。
今でこそ、魔人と人々は干渉しあわずに平和な日々を送っている。
だが、ここで魔王を倒さなければ、僕が元いた世界のように、人と魔人との戦争が始まってしまうのである。
だからこそ、勇者の使命もすんなりと受け入れられた。僕がやらなければいずれ世界は滅亡し、また僕は死んでしまうのだから。
それを前提に今まで僕は旅をしていたのだ。
しかし、だからこそ魔王が次に言ったことは直ぐに信じられることではなかった。
「いや。それは違う。
我は、『我という存在』自体は、人類に対して何も『していない』し、これからもするつもりは『ない』」
僕たちは驚愕した。
「!!」
「な、なんですって!?」
「それはどういうこと!?」
つい戦いの手が止まり、同時にモンスターたちも大人しくなる。
「やはりな。これだけの相手に、全く息を切らしていない
そこまで貴様らが戦えるのなら、いいだろう、全て語ろうではないか」
「な、なにをだい?」
「全てだ。
具体的にはこの世界の秘密、そして我が置かれているこの状況を、だ」
この世界の秘密、、?
個人的には聞きたい。だが彼女たち二人は警戒しているようだった。
「うさんくさいわねぇ、、」
「どうする?ユー、まやかしかもしれないわよ?」
「確かにね」
そう、これこそが魔王の幻術。話術などによる状態異常をかけている最中かもしれなかった。しかし、
「でも、僕はそうとは思えない」
何故ならば僕らはレベルアップして、魔法耐性が高い。洗脳などそうそうされるはずもない。
先ほどのインモキュバスによるアリサとマリヤの干渉もあったが、あれは彼女たちの真の心、欲望を増幅させただけである。
もし僕らが世界の破滅を願っているのならば危険かもしれない。だが勇者として世界を救うために戦って来た僕らが、今更そんなことを望むはずはない。
ならば、洗脳は不可能なはずだ。今の僕らに、例え魔王であろうと欲望を真逆のベクトルに捻じ曲げることなどできはしないはず。
「それに、何か気になるんだ」
「気になる、、?」
そう、何かこの魔王は、僕らに何かを伝えたがっている。そんな気がしてならないのだ。
いや、正確に言うならば、何か頼みを伝えようとしている。
勇者になってからというもの、多くの人の頼みを聞いたりすることも多かった。それはそう。モンスター退治などである。
たしかに僕らは勇者の力であらゆるモンスターを屠る能力を持った。
とはいえ、悪いことをしているモンスターを倒すためには、まず聞き込みや、人の困っている表情を察する能力がなくてはいけないのだ。
その経験から、相手の雰囲気で困ってあるかどうかはなんとなく察せるようになったのだ。
それは魔王も例外ではない。
「だから、聞いてみよう」
自信を持って言うと、信頼してくれているのか、二人も確信を持って頷いてくれた。
「わかったわ!」「ユーくんがそういうなら」
納得してくれたようだ。
それを見て魔王は語りだす。
「さて、貴様らも気づいていると思うが、我を見てどう思った?」




