第5話 〝第一次新潟県上越市海岸線防衛戦②〟
今回、長めです。では、どうぞご覧ください。
「よっしゃぁ!!」
「とりあえずは、持ちこたえたな!」
「はぁ、はぁ、休めるのか…」
先の猛攻撃で、中国、ロシアの軍勢は消え去った。波際で、伏せている者もいれば、上陸艇まで戻った者もいる。日本は、たった40分という短い時間で、第一次攻撃隊を退かせることが出来た。さらには、第二次攻撃隊の可能性もあった、ロシアのヘリコプターの大軍も『イージスアショア』のミサイル攻撃で塵と化すことに成功。
大勝利。
この言葉が、一番ふさわしい。
すると、大型の通信機を背負った通信科の人が前屈みで走ってきた。
「あ、いたいた。君たち、予備自衛官は二人だけ?」
「はい。我々が、確認しているのは自分らです。」
鯖妥が、即答した。かなり凄いと思う。僕は、限られた人としか話せないから。鯖妥は、コミュニケーション能力が高いな。
「そうか、大半が行方不明だな。やはり、駐屯地攻撃で………宇駐通信から高田。予備自衛官の所存を確認したところ、大半が行方不明であることが判明。そちらの、死者、行方不明はどうだ。送れ」
通信科の人は独り言を呟いてから、高田駐屯地と通信をした。少し経つと、通信科の人が背負っている通信機から声が聞こえてきた。
「こちらシキツウ、新渡戸。こちらも高田駐屯地へ交信中だが、反応無し。駐屯地攻撃で、通信がダウンしたと思われる。送れ」
高田駐屯地からの通信ではなく、スピーチの時に見えたあの美人中隊長からのそれであった。
「宇駐通信、了解。……じゃあ、俺はもう行くから。もし、他に見つけたら近くの通信科に言ってくれれば良いから。」
そう言って、通信科の人はどこかに行ってしまった。
…しばらく、僕がなにも話していないと、鯖妥が突如、口を開いた。
「そういえば、補給してなかったね。鈴宮、行こうか。」
「そ、そうだね。走るか。」
僕と鯖妥で、合計4個のコンテナを運び出すことが出来たのだがとりあえずは一人1つずつ持っていくことにした。移動速度が落ちるからである。
鯖妥が先行し、砂浜を駆ける。
「予備自衛官!補給に参りましたぁ!」
鯖妥が、そう叫んだ。すると、海岸線を見ていた自衛官が青ざめた顔でこちらに向いた。
「伏せろ!!」
その言葉で、鯖妥は一瞬で砂に身を任せた。だが、僕は躊躇ってしまい、少し判断が遅れた。
パァン、と一つ、大きな音が砂浜に響いた。僕は転んだように、伏せようとした。そのまま、重力に任せようと思ったが、何故か体が持ち上がった。そして、背中から倒れる。僕には、何が起こったかわからない。僕に、何かあったのか?確認のために、首、頬、頭の順で顔に触れていこうとした。こめかみに差し掛かったとき、グジュ、と変な音が鳴った。触れている人差し指と中指には、生暖かく、焼肉のホルモンのような感触が伝えられる。その、何とも言えない感触は一生、忘れることはできないだろう。
もしや、撃たれたか?と僕は考えたが、痛みも血もない。
「鈴宮!大丈夫か?!」
鯖妥が、伏せながら近付いてくる。鯖妥は、僕のすぐ近くまでくると、目を丸く大きくし、小刻みに震え始めた。鯖妥は、その震えた口をゆっくり開き、僕に問いかけた。
「お、おい…それ……パックリ割れてんじゃねぇか………」
確かに、ブヨブヨとした感触はある。だが、痛く―――
若干、僕のこめかみに顔を向けていた鯖妥が朱くなっていく。それと同時に、僕の気力がどんどんと奪われていくような、疲労感に似ていて疲労感とは全く別物の…考えが回らなくなっていく。
―――!薄くなりゆく意識の中に、痛みが鮮明に顕れる。段々と、ポットの中のお湯をゆっくりとこめかみに落とされていくような感覚、これは痛みか?ああ、これはヤバい…痛みも……
「顕れる」って、隠れていたものが見えるようになる。っていう意味らしいです。初めて知ったぁ




