第3話 〝理不尽な布陣〟
恒例の用語チェック!
〈登場兵器、部隊〉
・榴弾
着弾した後に爆発し、周囲の人、建物の大量破壊に効果的な弾。陸上では、歩兵を主に殲滅するのに用いられる。但し、海上では装甲が厚い艦には効果は期待できない。それは、貫通能力が低いからである。
・徹甲弾
貫通性能が高い弾。
○陸上自衛隊
・73式大型トラック
いすゞ自動車により造られた、トラック。自衛隊では、『カーゴ』と呼ばれていることがある。『カーゴ』は、高い耐久性を誇っており、東日本大震災(東北沖大地震)の時には、津波によって『カーゴ』が水に浸ってしまったが、その後は普通にエンジンに火が点いたらしい。
○部隊
・海兵隊
海軍に所属している部隊。海上からの上陸はもちろんのこと、陸上の任務でも素晴らしい戦果を発揮することができる。日本で海兵隊に当たるものは、海上自衛隊及び海上保安庁の『特別警備隊』である。
《総員!衝撃に備えよ!敵弾着弾まで、三、二、一、今!》
駐屯地内放送で、それが流れた直後。ヒュルルル、と海岸から聞こえてきた。どんどん、音が大きくなってくる。一瞬、円筒状の砲弾が見えた。
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「おい!大丈夫か?おい!!」
段々、曇っていた声が鮮明に聞こえてくる。…鯖妥の声だ。無音の世界から脱したと思ったら、悪魔の叫びが聞こえてきた。高い周波数に、取り囲まれる。少したつとそれは治まり、周囲の惨状が目に滲みてくる。
駐屯地の施設に砲撃されたようで、建物には大きな穴が開いており、今は小さな炎が上がっている。
「当然ながら、榴弾を使ったな。」
「な、なんで、そんなことが…」
鯖妥は、ポツリと呟いた。咄嗟に質問した僕の声は、無意識に震えていた。
「通常、艦には徹甲弾と榴弾があるが、爆発炎上してるから榴弾と言って間違いないだろう。俺、こうみえてミリオタだから。」
鯖妥は、呑気に喋っているが目には真っ直ぐとした光が差し込んでいた。
「おい、海岸に海兵隊が上陸した。アメリカ軍の到着まで、あと30分もかかるらしい。オスプレイは、全機舞鶴に向かったからな…」
突然、自衛官が話しかけてきた。どうやら、会敵したらしい。
「ここが、それまで持つかどうか。大和魂を見せてやるぞ!」
その、自衛官は続けて言った。
「分かりました!日本人の根性を見せてやりましょう!」
「鯖妥の言うとおりだ!僕たちで、ここを防衛するんだ!」
僕は、こういう時はいつも後ろにいる立場だが、この自衛官に“大和魂”を叩き込まれて、やってやろうという気持ちが恐ろしいほど湧いてきた。
「…ってことで、今から後方支援に向かう。君たちは第3中隊だよね。じゃあ、『カーゴ』に乗ってくれ。弾薬を届ける。」
自衛官にそう言われ、僕たちは『カーゴ』に乗った。先程の攻撃で、ここら辺にいた予備自衛官は散開。部隊は散り散りになっていた。
※2020年7月25日 新潟県上越市海岸線※
『カーゴ』に揺られながら、数分で爆音や銃声が聞こえてきた。ニュースでよくやる、アメリカの銃撃戦のようだ。いや、当然ながらそれよりも酷い。たまに、苦しそうな叫び声も上がっている。それが耳に入ってくると、僕の心拍数も上がっていくのが分かった。
…映画の中の世界。
そうとしか表現できない。ヘリコプターのローター音が鳴り響き、銃声が鳴り止まず、海洋から鉄の大粒が降ってくる。すると、通信機に耳を当てていた曹が声を上げた。
「2時斜め上方!ミサイル!!」
その声を皮切りに、『カーゴ』が横転しそうになりながらも急カーブを切った。だが、遠心力が僅かに勝る。
凄まじい爆発音と共に、僕の意識が飛んでいった。
書いてるときに、ワクワクします!




