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第一話 疑り深い彼

 この世で疑り深いことは罪かと聞かれれば、答えは否。

 ではこの世で信じやすいことは罪かと聞かれれば? 答えは応。


 さて、この謎かけをとても熱心に信じてる若者が一人居る。

 一也の名前は、市野谷一也いちのやかずや


 以前髪を脱色したが染め直したとき、失敗した所為で少し薄い質の悪い黒髪に、糸目の黒目。

 細長い目だが愛着のある目は、いつも警戒心で一杯だ。

 背丈は標準の成人男子くらいで、低くもなく高くもない。だが、何処かひょろりとしていて、胴長で細長い印象を与えるだろう。



 十人が一也を見たとして、第一に与える印象は、七人はきっと優しそうだとか、穏やかそうで人殺しなんてしそうにない、だろう。



 一也は確かに優しいことは優しい。だがそれは己に利益が見えたときだけだ。

 一也は警戒心が高く疑り深いので、中々社交辞令以上の接触はしてこないで、期待してる言葉もくれないだろう。

 こんな話がある。

 一也に、アタシ失恋したのと泣きついてきた女性が居た。だが一也は失恋した女を慰めるどころか世の中の男性の恐ろしさを語り尽くして、怯えさせ、更には恋愛としての男性不信にさせたことがある。

 そしてまたそれは平等に男性にも、オレ失恋したんだ、と語ってきたら、己の失恋体験を語り女性不信に陥らせたことがある。



 そう、一也は一言で言えば性格が悪い。

 慰めを期待して言葉をかけてきたものには、怯えを与えて、この世で信じやすいことはとても罪であるということを教えてくれるタイプである。

 だから疑え疑えと笑いながら、諭す。


 一也は何処か世を見据えて、冷めた風貌だった。

 かといって、左翼や右翼などに傾く程冷めては居なくて、世の中には一切期待してはいなかった。


 ただ、お金は大事なものだという認識はあったので、昨日信じてしまった自分が辛い――。


 一也は酒を飲むと、疑り深いのから信じやすい人間というか、騙されるタイプの人間に豹変する。

 そしてそう言うときに限って一也にたかる者が居たり、かつあげされたりするので、一也自身が信じることは罪だということを思い知っていた。


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