うわさの裏番長
『うわさの裏番長』
登場人物
かよこ 女
番長 男 悪い奴じゃない
友達1 女
友達2 女
委員長 女 THE委員長
不良1 女 (人数によって男でも女でも)
不良2 女 (人数によって男でも女でも)
明転
舞台には三人の女子高生。座って弁当を食べていたようである。何気ないことを話している。
友達1 あ、そうだ。この話知ってる?
友達2 んー?
友達1 この学校の、裏番長の話。
かよこ ウラバンチョー?
友達1 そう。裏番長。
友達2 誰それ。外人?
友達1 ちがうよ。番長。裏の、番長。
友達2 番長って、不良マンガとかにでてくる?
友達1 そうそれ! その学校のトップ!
かよこ 学校のトップは校長でしょ?
友達2 校長先生って番長だったの?
友達1 あんなひょろひょろで番長つとまるわけないじゃない
友達2 そういうのが強いから燃えるのに
かよこ ああ! ギャップ萌え!
友達1 あのヒョロっぱげに萌えられるとかストライクゾーン広いね
友達2 そっちの萌えるじゃなくて、もっと熱い方!
かよこ 熱い方の萌え?
友達1 熱い萌えねー……ガチムチ系?
友達2 番長の話じゃないの?
友達1 そう番長! 裏番長の話だよ!
かよこ まず表の番長が誰よ
友達2 校長でしょ?
かよこ 番長先生?
友達1 それもういいから。ていうか、表の番長も知らないの?
かよこ そんなのいる?
友達1 いるいる。日夜喧嘩に明け暮れて、その成績は全戦全勝。まさに不良のトップ! って感じの人。
かよこ 感じってことは実際そうなわけじゃないんだ。
友達1 いやでもアレは絶対そうだってば。制服改造してあるし。リーゼントだし。
かよこ え……
友達2 ああ! いるいる。たまに見かけるよリーゼントの人。あの人かー。
友達1 かよこも見たことあるでしょ? 目立つし。
かよこ え、ああ。見たような、見ないような……?
友達1 あんなの一回見たら絶対忘れらんないでしょー。
友達2 その人が表の番長なの?
友達1 そう! こんなの予備知識よ。こっからが本題。
友達2 裏のほう?
友達1 裏のほう!
友達2 裏ってことは、出て来ないんだよね。表には。
友達1 そうだね。裏だからね。
友達2 どんなことしてるの裏番長は
友達1 それがね……裏から番長を操ってるっていう話
友達2 喧嘩無敗の番長を?
友達1 そう。
友達2 ははあ。それで裏番長ねぇ。
友達1 ……かよこ?
かよこ え!?
友達1 もしかして、あんま興味ない?
友達2 あー。それで静かだったの。
かよこ え、あー、うん。そこまで。
友達1 そっかー。こういう話好きかなーと思ったんだけど
友達2 私は好きだよー。
かよこ あはは
友達2 あ、そろそろ時間じゃない?
友達1 ん? あー、ほんとだ。かよこ、あたしら部活のミーティング行かなきゃだけど
かよこ ああ、そうだったね。
友達2 教室まで一緒に戻る?
かよこ んー。本読んでたいからいいかな。
友達2 そっか。じゃあね。
友達1 行ってきまーす。
かよこ はい。いってらっしゃーい。
友達1、2はける。
かよこ 番長……か。関係なければ好きな話なんだけどね。
友達1、2がはけた方向から声だけ、
友達2 あっ。
友達1 おおう。
友達2 あの人だよね。
友達1 そう番長。
友達2 わあぁ。
二人 喧嘩強そう。
友達1、2がはけたほうから番長があらわれる。改造制服にリーゼント(かつら)いかにも番長といったいでたち。
番長 !
かよこ !(目をそらす)
番長 姉御! こんにちはっす!
かよこ (嫌そうな顔)
番長 あれ? 姉御? どうしたんすか? 体調でも悪いんすか?
かよこ ……あのさ
番長 ハイ! なんっすか!?
かよこ ……その姉御っていうの、やめない?
番長 え? なんでっすか? 姉御は姉御っすよ。
かよこ いや、だから、姉御って呼ばれる理由がないし
番長 大ありですよ! 前も話したじゃないっすか!
かよこ いや、だからそれが納得いってなくて
番長 (遮って)ほら、俺って顔が怖いからか知らないですけど、みんなから結構さけられたりすること多くって
かよこ それは顔じゃなくて髪型じゃないかな
番長 姉御が初めてなんっすよ。俺の顔みても驚かずに接してくれたの。
かよこ コンタクト外しちゃっててただの天パかと思ったんだもん。
番長 その上、めっちゃ親切に道教えてもらって……
かよこ そりゃ訊かれたからね。
番長 同じ学校だって知ってびっくりしましたよ。
かよこ 私も驚いた。
番長 それで、これはもう運命だと思って、勝手ですけど義姉弟の契りを結ばさせてもらいました。
かよこ 本当に勝手すぎるよ。
番長 だから、姉御は俺の姉御なんです!
かよこ 君はまず人の話を聞くところから始めようか。
番長 そりゃ、俺みたいなやつが姉御の弟分なんて役不足だと思います。
かよこ 役不足の意味もちゃんと調べてね。間違いがちだけど。
番長 でも! 精一杯! がんばろうと思います!
かよこ わざとだろ? わざとやってんだろ?
番長 どうかしましたか? 姉御!
かよこ うん、なんかもう呼び方は諦めるよ。
番長 ハイ! ありがとうございます!
かよこ やっぱわざとだろ……。
番長 何がっすか?
かよこ それはもういいや。
番長 姉御がいいんなら俺もいいです!
かよこ うん
番長 はい!
かよこ えーっとさ
番長 なんっすか!?
かよこ だから
番長 (コクコクと頷く。リーゼントがゆれる)
かよこ その髪型なんだけど
番長 ああ、これっすか? リーゼントって言うんですよ。カッケーでしょ!?
かよこ それぐらい知ってるよ。
番長 さすが姉御! 博識でいらっしゃる!
かよこ あー、だから、なんでリーゼント?
番長 なんでって、そりゃ、カッケーからっすよ。
かよこ でもさ、ほら、校則違反なんじゃないかなーとか
番長 センコーどもは何も言ってこねーんで、大丈夫なんじゃないっすかね?
かよこ そうなんだ。
番長 そうなんっすよ。
かよこ でも、制服改造してるのは注意されるでしょ?
番長 いや、されねーっすね。カッケーからだと思いますけど。
かよこ かっこいいから注意されないってことは無いんじゃないかな……。
番長 そうすか?
かよこ そうだよ。
番長 そうでもないっすよ?
かよこ そうでもないのかー。
番長 カッケーでしょ?
かよこ でもさ、
番長 ハイ。
かよこ だから、
番長 ハイ。
かよこ 言いづらいんだけど、
番長 ハイ!
かよこ その……
番長 ハイ!
かよこ ……
番長 ハイ?
かよこ イクラちゃん?
番長 (サザエさんのイクラちゃん風に)ハーイ!
かよこ へーベルハウス?
番長 (咳払いの後、CMっぽく)ハーイ
かよこ 普通にノリいいよね
番長 恐縮っす!
かよこ でも怖がられるんでしょ?
番長 ああ……そうなんっすよ。困っちゃいます。クラスの皆にも「さん」付けで呼ばれちゃうし……
かよこ それはなかなかだね……。
番長 ……。
かよこ ……でもさ、話してみれば普通なのはわかるんだから、こう……服装っていうか、そういうところが、その、悪いんじゃないかなーって思うんだけど、
番長 (かよこの話を聞かずに)どうして怖がられちゃうのか、自分なりに考えてみたんですけど
かよこ いや、だから髪型と…
番長 やっぱ顔だろうなって思って
かよこ いや服装と…
番長 生まれつきのものって直しようがないじゃないっすか。
かよこ 服と髪はすぐに…
番長 だから、俺は思ったんです。じゃあ、俺を受け入れてくれる数少ない人を大事にしようって!
かよこ 大事にして! まず私の話を大事に聞いて!
番長 つまり、親父とお袋。そして姉御と委員長。あと、タマとミケ。
かよこ 肉親と猫抜いたら二人しかいないの!?
番長 俺はこの四人と二匹を大事にしたいんです!
かよこ なら話を聞いてってば!(叩く)
番長 ハイ! なんっすか?
かよこ だからね、
番長 ああ! 委員長とタマとミケのことは姉御には話してなかったっすね! うっかりしてました。いくら博識とはいえ、わからないっすよね!
かよこ え、ああ、まあそうだけど、
番長 委員長は、うちのクラスの委員長なんですけど、クラスで唯一俺のことを「くん」付けで呼んでくれるんっすよ! いろいろ話しかけてくれるし、すげぇ優しくって、なんっつうか、その……へへへ。(にやける)
かよこ ……ふーん(ニヤニヤと)。意外と青春してるんだ。
番長 あはは、お恥ずかしいかぎりっす。ああ! それで、タマとミケはうちで飼ってる亀っす。
かよこ タマとミケ亀なの!?
番長 ハイ。そうっすよ。
かよこ え、でも、タマはともかくミケって、
番長 亀っすよ?
かよこ 三色でもないし毛も無いのにミケ?
番長 ハイ。亀っす。あ、でも、全体的に緑で目元に赤と黄色があるんで、一応三色っすね。
かよこ ああ、ふーん……そうなんだ。
番長 そうなんっす。
友達1がいつの間にか舞台袖から覗いている。初めは驚いていたが、話を聞いているうちに何かに納得したように近づいてくる。手には封筒。
友達1 かよこ。
かよこ えっ! ……あ!
番長 あっ、姉御のご友人っすか?
かよこ ちょっ! だからその姉御っていうの!
番長 え? 呼び方は認めてくれたんじゃないんすか!?
かよこ 人前では呼ばないでよ!
番長 ええ! 聞いてないっすよ!
かよこ 聞いてくれなかったんじゃない!
友達1 かよこ……。
かよこ あ、あはは、だから、えーっと、これは
友達1 あんたが……裏番長だったのね。
かよこ ちがう!
番長 え! 姉御、裏番長だったんすか! カッケー!
かよこ 誰のせいだと思ってんの! (向き直って)いや、違うのこれは。だから、その……そういうのじゃなくて、えーっと、何から言えばいいのか、姉御っていうのは、そういうなんか階級じゃなくて愛称みたいなもので、全然そういうそうぞうするようなことは、ていうかそもそもコイツ番長じゃないし!
友達1 (噴出して笑い出す)
かよこ え? え!?
友達1 (笑いながら)そんなの見てれば分かるってば。……ふう。あー、あんなうろたえてるかよこ初めて見たわ。
かよこ どういうこと?
友達1 どういうこともこういうことも、だって話し聞いてたら全然番長っぽくないし。むしろしゃべり方的には下っ端?
番長 ? 俺のことすか?
友達1 こういう事情かーって感じ。あ、どーも始めまして。姉御さんの友人Aです。
番長 やっぱり! 始めまして。姉御には大変お世話になってます!
かよこ ちょっと、ちょっと待って。え?
友達1 話すと普通だね。パッと見 怖いから勘違いしてたわ。
番長 いやいや、そう言ってもらえると嬉しいっす。
かよこ えーっと、もう怖くないってこと?
友達1 さっきからそう言ってるじゃん。かよこテンパりすぎ。
かよこ ああ、うん。えーっと、オッケー。わかった。え? 部活のミーティングは?
友達1 終わってなきゃここ来てないって。
かよこ ああ、そっか。うん。
友達1 それでさ、えーっと番長くん? 番長くんって呼んでいい?
番長 俺をですか!? いいっすよ! てかそう呼んでください! 番長ってめっちゃカッケーっす!
友達1 番長くんって強い?
番長 強い?
友達1 いや、実は、こんなもの渡されちゃって……。
友達1、封筒から紙を取り出す。そこには大きく『果たし状』と書いてある。
友達1 いやー、なんで私に渡されたのかと思ったけど、かよこ繋がりかー。それにしても今どき果たし状ってねぇ?
番長、果たし状を開いてみる。一枚の写真が落ちる。その写真を拾い上げて見ると、
番長 ……委員長!?
かよこ えっ!
暗転
明転
舞台上には不良1、2、委員長。委員長は不良2に捕まっている。
不良1は舞台中央で仁王立ちしている。
不良1 『果たし状!
てめぇはあたしらを差し置いて目立ちすぎた!
本日12時30分、体育館裏にて待つ!
来なかったらこの女がどうなるかわかってんだろうな!』
という文章をあたしは送ったはずなんだが、おい! 今何時だ?
不良2 12時32分19秒! あ22秒!
不良1 なんにしろ、遅刻だよなー!
不良2 もう2分30秒はたったからなー! いや35秒はたったからなー!
不良1 じゃあ、この女がどうなるかわからせてやらねーとなー!
不良2 どうするんだ?
不良1 そんなお前……どうしような。
不良2 とりあえず、こう、脱がす?
不良1 うーん……もうちょっと待つか。
不良2 わからせなくていいの?
不良1 いや、ほら、来てないのに脱がせてもわからないじゃん?
不良2 あ! 確かに。頭いい!
不良1 でしょ?
委員長 あの、なんで私捕まってるんですか?
不良2 そんなお前、人質だよ人質。
委員長 んー。誰の人質なんですか?
不良1 番長に決まってんだろ?
委員長 だから、ばんちょう? って誰なんですか? 聞いたこと無い名前です。番町さんにも番町くんにも心当たりがないんですけど。
不良2 番長だよ番長! 番長は番長だよ!
不良1 名前じゃねーぞ? 役職だ。その学校の不良たちのトップと呼ばれる存在だよ。
不良2 だけどあいつが番長なんて認めない!
不良1 そのとおり! あたしらの許可なしに番長なんてなめた真似はさせねー!
委員長 じゃあ、まだ番長じゃないんですよね?
不良1 あぁん? ……ホントだ。
不良2 番長じゃないんじゃん!
委員長 じゃあ、誰なんですか?
不良1 ……うっせー! 屁理屈ほざくな!
番長駆け込んでくる。続いてなぜか友達1も。
番長 委員長! 大丈夫すか!?
不良1 ようやくおでましだ!
不良2 おいおい。えーっと、3分48秒の遅刻だぜ?
不良1 どうしてやろうかなぁ!
番長 や、約束どおり来たんだ! 彼女を解放しやがれ!
不良2 時間に間に合っってねぇーって言っってんだろうが怒るずぉ!!!
番長 ちくしょう!
委員長 長谷川くん……番長だったの?
不良1 番長だなんて認めねぇ!
友達1 ……そう。彼が番長よ。人質さえとられてなければあんたらなんか一瞬でひとひねりにできる、番長よ。
不良2 まじかよ人質とってて良かった。
不良1 てめぇ、さっきのパシッた女!
友達1 何? いたらおかしいかしら? ほら、番長からも言ってやりなさいよ。
番長 ハイ! じゃなかった! おうっす! お前らやめといたほうがいいぞ! 番長なんだからな! 俺は番長だから、アレなんだぞ! もうカッケーし、こう、アレなんだからな!
友達1 本来なら人質とられてようがあんたらなんか相手にならないんだからね。彼は一晩で暴走族を壊滅させたこともある伝説の番長なんだから。
番長 そうなんすか?
友達1 話合わせなさい。
番長 そうなんだぜ!
委員長 そんな……。
番長 いや、ちげーんすよ委員長。これはそういう
友達1 話合わせなさいってば!
番長 そうなんだぜ! 騒音でうるさい暴走族をアレした番長なんだぜ!
友達1 でも、残念ながら今日あんたたちの相手をするのは彼じゃないわ。
不良1 ああん? てめぇら、まさかセンコーにちくったんじゃねーだろうな?
番長 ちげぇ。
不良2 じゃあ、誰が相手だって言うんだ?
友達1 それはね、果たし状を開けるときに偶然そばにいた、この学校の、
二人 裏番長だ!
かよこ、現れる。
不良たち う、裏番長だと?
委員長 うら……ばんちょう?
間。
かよこ あ、えーっと、わ、私が、裏番長だ!
友達1 裏番長は女の身ながらも番長の数倍いやさ数十倍の強さなんだから!
かよこ そ、そうだぞ! お前らをひとひねりの番長をひとひねりなんだから!
番長 まじっすか! 流石は姉御! あいつらなんか0.5ひねりってことっすね!
かよこ そうだぞ! 0.5ひねりで、ぜ、前方宙返り四分の三ひねりに、できるんだからな!
不良2 やべぇよ、合計で1.25ひねりされるよ! そんなことされたら腰から上が横向いちまう!
不良1 おちつけ! はったりに決まってんだろ! あんなやつがそんなに強いはずねえ!
友達1 わかってないな……。
不良1 何!?
友達1 昔の偉い人は言いました。『強そうじゃないヤツが強いから燃えるんだ!』
不良たち な、なんてこった!
委員長 ギャップ萌え……!
かよこ 今のうちに逃げれば、この昼休み中走って追いかけまわすだけで許してやる!
友達1 裏番長は喧嘩は強いけど足は速くないから今のうちがチャンスよ!
不良2 もう怖いよ! 今のうちに帰りたいよ!
不良1 待て! 足は速くないなら逃げ切ることだって……
番長 あ、姉御! 昼休みで終わらなかったら俺のチャリ使っていいっすよ。
友達1 裏番長チャリこいだら超速いよ! 暴走族に追い付いたこともあるんだからね!
不良2 もういやだ! もう怖い! 帰る!
不良1 ああ! 待てこら馬鹿野郎!
不良2、委員長を離して走ってはける。
不良1、番長たちを見る。
番長とかよこ、一歩近寄る。
不良1 ちくしょう覚えてろぉー!
番長 わかった!
かよこ うん!
不良1 嘘です忘れてくださいぃぃ!!
不良1走ってはける。
少しの間。
友達1 作戦成功! 二人ともお疲れさまー。
かよこ 一番ノリノリだった人がよく言うわ。
番長 喧嘩とかにならずにすんだっすね! 流石は姉御のご友人!
友達1 でっしょー?
委員長 長谷川くん……
番長 あ、委員長! ケガとか無いっすか?
委員長 ケガは無いし、あんまり怖くもなかったんだけど、
番長 あ、さっき言ってたのは嘘っすから。ホントは番長じゃないっす。
委員長 ああ、やっぱりそうなんだ。ビックリしたー。
番長 ……。
委員長 長谷川くん?
番長 俺……強くなりたかったんすよ。
委員長 え?
番長 俺、昔からちょっと浮いてて、友達とかいなかったんっす。でも、この浮いちゃってるのって、きっと俺の性格だから、直らないんだろうなって思って……
友達1 なんか語り始めたよ?
かよこ ああ、こうなると周りの声聞こえないみたいだから、おとなしく聞くしかないよ。
番長 それで、どうしたらみんなと仲良くなれるかなーって、みんなと、遊べるかなって考えて、じゃあ、ヒーローみたいに強くてカッケ―奴になったら、みんな俺のこと見直してくれるかなって。
委員長 ……うん。
番長 思いつく限りの強くてカッケ―格好をしてみたんっすけど、今度は、怖がられるようになっちゃって……
友達1 まあ、そうだよね。
番長 結局、今回委員長が巻き込まれたのは、俺のせいなんっす。
委員長 ……。
かよこ 今回のことは100パーセントあいつらのせいだと思うけど
番長 でも、さっきの姉御と先輩を見て、強さっていうのはこういうことなんだ、マジでカッケ―ってのは、こういうことなんだって気付いたんっす!
かよこ さっきのどこにそんな要素が……
友達1 あ、先輩ってあたしか。
番長 だから、俺にはもう、これは必要ないっす。
番長、リーゼントのかつらを外す。
友達1、ツボって一人で笑っている。
番長 俺はこれから、姉御や先輩みたいな、マジでカッケ―奴になって見せます! だから、委員長、もしそうなれたら……!
委員長 ……!
番長 俺の、友達になってください!
委員長 ふふっ
番長 え?
委員長 長谷川くんって、おもしろいね。それに、そっちの髪型のほうが、かっこいいよ。
番長 え? そ、そうっすか?
委員長 友達って、なろうと思ってなるものじゃないと思うな。いつの間にかなってるものだよ。きっと。
番長 お、おお、カッケ―。
委員長 だから、私と長谷川くんは、もうきっと友達だよ!
番長 ……!
かよこ、番長に近づき、肩に手をおく。
かよこ よかったね。
番長 姉御……。……委員長!(泣き気味に)
かよこ ほら、泣かない泣かない。
委員長 そろそろ授業始まるね。遅刻しないように、行こっか!
番長 ハイ!
番長と委員長、和気あいあいとはけていく。
かよこ、優しげにそれを見送る。
かよこ ……裏番長ってのも、悪くないかもね。
友達1 あれ、何? これは、ついてけないあたしがおかしいの?
友達2 あー! やっと見つけたー。
友達2、あらわれる。体操着(ジャージでも可)に着替えている。
友達2 ふたりとも何してたの? 次体育だよ?
かよこ ああ! そうだった!
友達1 着替えないと!
友達2 ああ、そういえば、ついさっき裏番長の話きいたんだ。後で話すね。
かよこ え、いや、ちょっと、その話今して!
友達2 あれ? かよこは興味ないんじゃ……
かよこ 興味わいてきたから! 長い内容?
友達2 ううん。そんなに。たしか、裏番長の正体は強そうには見えない女子。だけど実はめっちゃ強くて、走ってる車を素手で止めたり、頭突きで拳銃をへし折ったり、一晩で暴力団を壊滅させたり、自転車で新幹線に追い付いたり、あとは…(考え付く限りの裏番長伝説と、かよこと特定できる特徴を列挙)…
友達1 ……なんていうか、ドンマイ。
かよこ 裏番長なんかだいっきらいだぁー!!!
エンディングC.I.(ロックな感じの曲)
暗転
終劇