せかい迷作激情w。「マッチョ売りの少女」
……冬の寒い街角で、ひとりの少女がマッチョを売っていました。
「マッチョを買ってください!誰かマッチョを買ってくださ~い」。
少女が声を掛けても、道行く人は、みんな目を反らせて行くばかりです。
「困ったわ、このまま家に帰ったら父さんに怒られてしまう。
1ダースのマッチョが1体も売れていないんですもの」。
途方に暮れた少女は、あまりの寒さに、マッチョの肌を擦り合わせました。
すると、どうでしょうマッチョたちが踊りだしました。
なんか油とか塗った上半身裸のマッチョの体が、汗ばんで
キラキラと輝きました。
……少女はうんざりしました。
が、取り敢えずはマッチョの熱気で暖かくなったので、
再びマッチョの肌を擦り合わせました。
マッチョは、ますます激しく躍り上がり。
辺りには鼻を突く汗の臭いが立ち込めました。
……少女は吐き気をもよおしましたが、
もうここで止める訳にはいきません。
とにかくマッチョをなんとかしない限り、家には帰れないのです。
少女は3たび、マッチョの肌を擦り合わせました。
なんということでしょう、少女の前におばあちゃんが現れました。
「こんなところで、何の騒ぎだい!」
おばあちゃんは厳しく叱咤しました。
「世界ボディビル大会を目指すんだ!
ぼやぼやしている時間はないよっ」
「止めて、おばあちゃん!
あたし、ムッキムキになんて成りたくないのよおお~~」
少女の悲痛な叫びと、
駆け足マッチョのリズミカルな足音が去って行きました。
可哀そうに、また可憐な少女がひとり、
この世から姿を消したのです。
街の人々は思いました。
「買って、あげれば良かったのかな?マッチョ。
使いどころが分からないけれど」。
……どっとはらい。