第6話
「もしもし?愛どーした?」
「おい。佐藤宇美か?」
聞き覚えのない声。男の人の声。私は突然の事過ぎて何も言う事ができなかった。
「佐藤宇美かって聞いてるんだ。さっさと答えやがれ!」
口調を荒げた男に逆らう事ができず、
「は、はい。」
と答えてしまった。
「よし。今から言う場所にひとりで来い。警察を呼んだ時には、愛の命はないと思え。わかったな?」
「は、はい」
男が指定した場所は、図書館だった。しかも、図書館の館内にいろと言うのだ。
人目がある図書館に呼び出して何の意味が??
朝からいろんなことがありすぎて何も考えられない。
カウンターには、黒縁眼鏡の桜井、年寄りの石川。
どーにか戦力になりそうなのは、桜井。しかし、あの細い体で何か出来るか?
私は、取りあえずいつも行っている、西野圭吾の本があるコーナーに行く。
運が良いのか悪いのか、彼の本のコーナーは館内の1番奥にある。
私は、ひとまず落ち着くために彼の本を一冊とった。
今の時刻は、11時半。
おなか減ってきたし。そういえば、朝コーヒー飲んだだけじゃん。
祝日だからなのか、いつもより人は多いように思える。
私はあの男の考えている事が全く理解できなかった。
私だったら、人気の少ない場所に呼び出す。うん。間違いなく。
その男は普段図書館に行った事のない人に違いない!
取りあえず、男を興奮させないように言うとおりにおとなしく待つ事にした。
数10分後、複数のがたいの良い男がこちらに向かって歩いてきた。
私は、本を閉じそっとかばんの中にしまう。この図書館は本をコンピューターで管理しており、
全ての本にバーコードがついている。つまり、貸し出しのカウンターにて手続きをせずに、
館内を出ると、窃盗防止のためにアラームがなる。この男達は、図書館から出て、場所を変えるはずである。
このままここから出ればアラームがなりカウンターの図書司書の誰かに気づいてもらえるという仕組みだ!
我ながら、名案だと思う。
にしても、あの男は何を考えているのだろう?なぜ、図書館なんかに?
考えても、わからなかった。