のんべ魂
私の母方の祖父は宮大工だった。
職業柄、縁起ものとして酒を飲む事が多く、祖父は祝酒でも何でも喜んで飲み干す大酒飲みだったという。
しかし晩年はそれが災いして身体を悪くしてしまい、医師に酒を禁止されて自宅療養をしていた。
が、そこは自宅療養、祖父は隠れて時々酒を飲んでいたらしい。
家族もそれを知っていたが、病を別にしてももう老い先短い祖父の事、まあ少しくらいはとあえて口やかましく注意しなかった。
その為もあってか、病は治る事なく祖父は亡くなった。
祖父は床で眠ったまま亡くなったが、その直前に起き出して自分でコップに酒を注ぎ、うまそうに一杯飲んでからまた床に入ってそのまま逝ったというから、正に酒飲みの大往生といえるのだろう。
祖父の葬儀に集まった人達はその最後を聞いて、あのじいさんらしいや、と皆で頷いていた。
しかし。
それでも祖父はまだ酒を飲み足りないのか、祖父の死後、仏壇に供えたコップ酒があっという間に減る様になった。
コップいっぱいに入れていた酒が、供えて数分もしないうちに1/3程になっている。
それだけではない。
お供えとして仏壇周辺に置いてある、金属キャップをまだ開けていない一升瓶の中身までもが短時間のうちに半分以下になる。
それに親戚たちは
『またおじいさんが飲んでござった』
と笑っている。
私がコップ酒を供えた時も、あっという間に減った事が何度かあった。
仏前に酒を供え、手を合わせて拝んでいるほんの数秒のうちに。
私が驚いていると
『おじいさんが亡くなってもうだいぶになるで、最近はあんまり減らん様になったんやが。孫のあんたが久しぶりに顔を見せて酒を供えてくれたんで、喜んでなさるんだろ』
と親戚の者たちはやはり笑って言った。




