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第21話 いないという事実

 ――本邸にいない可能性が高い。


「……どういう意味だ」


 アルトレインの声は、低く落ちていた。


「言葉の通りでございます」


 グレンは淡々と答える。


「本邸には戻っていない可能性が高い」


「……なぜ、そう言い切れる」


「先ほどの執事長の態度です」


 一拍。


「“知らない”と答えました」


「……」


「ですが、あの人物が“本当に知らない”とは考えにくい」


 静かな断定だった。


「……」


 アルトレインは、目を細める。


 確かに。


 あの男は、何も漏らさなかった。


 だが。


 “何も知らない”とは思えない。


「……」


「つまり」


 グレンは続ける。


「意図的に、所在を伏せている可能性が高い」


「……」


 空気が、重くなる。


「……」


 エルナが、小さく呟く。


「……隠されている……?」


「はい」


 グレンは頷く。


「あるいは」


 一拍。


「“戻らない前提”で動いているか」


 その一言で。


 場が止まる。


「……」


「……戻らない」


 エルナの声が、かすれる。


「……そんな」


「……」


 アルトレインは、何も言わない。


 だが。


 その可能性は、最初からあった。


「……」


 その時。


「……当然でしょう」


 カイルが、静かに言った。


「……」


「自ら追い出された場所に、簡単に戻るとお思いですか?」


 一歩、前に出る。


「……」


「しかも」


 一拍。


「“必要だから戻れ”と言われて」


 その言葉は。


 冷たい。


 だが、正しい。


「……」


 エルナが、拳を握る。


「……でも」


 言葉が、出る。


 止まらない。


「……それでも、必要なんです」


 その声は、震えていた。


「……」


「現場が、持たない」


「人が倒れる」


「……」


「それでも……戻らないなんて」


 言葉が詰まる。


 だが。


 消えない。


「……」


 カイルは、わずかに目を細めた。


「……それは」


 一拍。


「“こちらの都合”です」


 その一言が。


 刺さる。


「……」


「必要だから来い」


「困っているから戻れ」


 ゆっくりと、言葉を重ねる。


「……それは」


 一拍。


「要求です」


 沈黙。


 完全な。


「……」


 アルトレインは、目を閉じる。


 そして。


 ゆっくりと開く。


「……ああ」


 低く。


 答える。


「その通りだ」


 否定しない。


 できない。


「……」


「……だから」


 一歩、踏み出す。


「頼みに行く」


 その言葉で。


 空気が変わる。


「……殿下?」


 エルナが顔を上げる。


「……」


「探す」


 続ける。


「見つけて」


「……」


「直接、頼む」


 はっきりと。


 言い切る。


「……」


 ミレイユの目が、わずかに揺れる。


 初めて。


「……」


 セレナは、言葉を失っていた。


 その表情が、崩れる。


 わずかに。


「……」


 カイルは、静かに息を吐いた。


「……そこまで、やりますか」


「……ああ」


「……」


「ならば」


 一拍。


「一つ、助言を」


「……何だ」


「……」


 カイルは、わずかに視線を逸らす。


 珍しく。


「……見つけられない可能性があります」


「……」


「本気で隠れる人間は」


 一拍。


「簡単には見つからない」


 その言葉は、重い。


「……」


 アルトレインは、何も言わない。


 だが。


 理解している。


「……」


 だからこそ。


「……それでも」


 一歩。


「探す」


 短く。


 言い切る。


「……」


 カイルは、しばらく何も言わなかった。


 そして。


「……いいでしょう」


 小さく頷く。


「少なくとも」


 一拍。


「覚悟は、あるようだ」


 それは。


 初めての、明確な評価だった。


「……」


 その時。


「……殿下」


 グレンが、静かに言う。


「捜索についてですが」


「……言え」


「複数の手段を取る必要がございます」


「……」


「公式の手配、非公式の調査、そして」


 一拍。


「……“情報の流れ”を使う方法」


「……情報の流れ?」


「はい」


 グレンは頷く。


「人は、完全には消えません」


「……」


「どこかに、痕跡が残る」


 その言葉に。


 アルトレインの目が、わずかに細まる。


「……」


「特に」


 一拍。


「“あの方”であれば」


 言葉が、止まる。


 だが。


 続きは、明白だ。


「……」


「……何だ」


「……」


 グレンは、静かに言った。


「必ず、“誰かを助けている”はずです」


 その一言で。


 すべてが、繋がる。


「……」


 エルナが、息を呑む。


「……」


 ミレイユの目が、見開かれる。


「……」


 アルトレインは、ゆっくりと息を吐く。


「……」


 そうだ。


 あの女は。


 何もしないでいる人間ではない。


「……」


 ならば。


 探す場所は、決まっている。


「……」


 だが。


 その時。


「……報告!」


 新たな声が飛び込む。


「何だ」


「王都南区にて、小規模な混乱が発生!」


「……」


「ですが」


 一拍。


「短時間で収束しております!」


 空気が、止まる。


「……」


「原因は不明ですが」


 続ける。


「現場では、“誰かが指示を出していた”との証言が――」


 その言葉で。


 全員が、同時に顔を上げた。

ついに“痕跡”が出てきました。


探す側から、追う側へ。

ここから物語は一気に動きます。


続きが気になったら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

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