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「聖女はこんなに地味ではない!」ーー転移後まもなく、国外追放された私が、実はスパダリ王子に溺愛されていた!

作者: 天音 楓

「死ぬぅぅぅぅうう!」


 異世界に召喚されて、わずか30分。


 私、椿原つばきはら 華乃かのは森の中で巨大な魔物に追いかけられていた。


「ひっ、ちょっと待って! 私まだ異世界初心者なんですけど!?」


 ガァァァァッ!


 牙をむき出しにした魔物が、容赦なく襲いかかってくる。


(なんでこんなことに......!)


 つい先ほどまで、私は綺麗な大聖堂のような場所にいた。


 聖女召喚の儀式で呼び出されたらしく、目の前のウィンドウには【聖女】の文字。


 チヤホヤされる展開だ! 


 と期待したのも束の間ーー


「この女は聖女ではない。見た目が地味すぎる」


 玉座に座った国王に、鼻で笑われた。


 確かに、周りの人間は西洋人のような派手な顔立ちばかり。


 黒髪で平たい顔の私は、明らかに浮いていた。


 だけど、22歳、身長175センチで痩せ型の私は地味だなんて言われたことはない。


 頭に血が上った私は、思わず言い返した。


「はぁ?私、聖女ですけど。なんか文句あります?」


 その結果――国外追放。


 そして今、何の知識もないまま魔物に襲われている。


(あああ、やっぱり口答えなんてするんじゃなかった!死にたくないぃぃぃ!まだやりたいことたくさんあったのにーー!)


 その時だった。


「下がっていろ!」


 鋭い声と共に、剣閃が空を裂いた。


 黄金色の髪、青い瞳、引き締まった体ーー。


 魔物を一閃で倒した青年が、私に手を差し伸べる。


「大丈夫か? 怪我はないか?」


 ......顔がいい。


 いや、状況を考えろ私!でも、顔がいい!!


 これは......運命の出会いってやつ!?


 その瞬間、私の脳内で勝手に妄想が始まった。


*妄想*


 綺麗な大聖堂。神父様が私に問いかける。


「あなたはこの者を愛し、一生を共にすることを誓いますか?」


「はい、誓います!」


 ーーチュー



「......おい、聞いているのか?」


「はっ、はい! 大丈夫です! ありがとうございました!」


 慌てて現実に戻る私。


 この好青年との出会いから。


 私の運命が動き始めることになるーー。



 アルゼン王国につくと、お金がないことと、聖女であることを伝えると、客間に案内された。


 驚いたことに、あの好青年ーーアレンはこの国の第一王子だった。


 脳内でアレンという名前が何度も再生されていく。


「それで、カノ。……改めて聞いてもいいだろうか。なぜ君のような女性があんな森に一人でいたんだ?」


 アレン様が、心配そうに私の顔を覗き込む。


(うっ……その綺麗な瞳で真っ直ぐ見ないで! 嘘をつくべき? でも、このスパダリオーラに嘘は通用しない気がする……よし、全部ぶっちゃけよう!)


「……実は私、別の世界から召喚されたんです。でも、『地味すぎるから聖女じゃない』って、前の国の国王に追い出されてしまって……」


「……地味? 君を、か?」


 アレン様が絶句する。


「ああ。あんなに清らかな聖なる魔力を放つ者を、地味などと……。その国王は節穴どころか、目が腐っているのではないか?」


「そうですよね!」


「それに、この世界は今、異常なほど瘴気に侵されている。聖女の助けを必要としない国など、正気の沙汰ではない。……カノもし君さえ良ければ、この国で力を貸してはくれないだろうか?」


「私で、お役に立てるなら……!」


「助かる。君の身の安全は、この俺が責任を持って保証しよう。……まずは父上に紹介させてくれ。この国の国王だ」


 こうして、私は命の保証と「推しのそば」という最高のご褒美をセットで手に入れることに成功したのだ。


 私は国王の謁見の場に連れていかれた。


 これまでマナーや作法とは無縁な生活を送ってきた私は、豪華な玉座の間の雰囲気にのまれ、完全に動きが壊れた機械のようになっていた。


 右足と右手が同時に出るようなぎこちない歩き方で進み、跪こうとして膝をカクンと曲げすぎて危うくバランスを崩しかけた。


 なんとか態勢を立て直して跪く。


「……面を上げよ。椿原華乃。

 そなたの力、アレンから聞いた。

 我が国を救う聖女として、改めて歓迎しよう」


 国王様は、最初の国のクソ豚国王とは大違いの、厳格ながらも優しい瞳をした方だった。


「そなたは前の国で不当な扱いを受けたと聞く」


 国王様の声に、私ははっとして顔を上げた。


「は、はい……。その、地味だと……」


「地味?」


 国王様が目を細めた。


「聖女の真価は外見ではなく、その魂の在り方にある。前の国の王は、真に大切なものを見る目を持たなかったようだな」


 うわぁ……さすが!


「我が国では、そなたを聖女として、一人の人間として、敬意を持って迎え入れる。安心して力を貸してほしい」


「は、はい!ありがとうございます!」


 思わず勢いよく頭を下げた私。


 無礼打ちを恐れて沈黙を貫こうと思っていたのに、国王様の温かい言葉に、自然と言葉が出てしまった。


 でも、それが功を奏したのか、国王様は柔らかく微笑んだ。


 もちろん、国外追放なんて不名誉な沙汰もない。


 私は国王様から広々とした自室を与えられ、当面はそこを拠点に活動することになった。


(よし……! これでアレン様を拝める環境が整った!)


 自室に向かう最中、アレン様と廊下でバッタリあった。


「カノ、これから、聖女としてこの国を守っていただきたい」


 眩しい笑顔で声をかけてくる。


 鎧の隙間から見える首筋、汗で少し張り付いた前髪。


 私はクリティカルヒットをくらった。


「い、いえ! アレン様のお役に立てるなら、瘴気のひとつやふたつ、一息で飲み込んでみせます!」


「飲み込んではダメだぞ? 健康が第一だ」


 アレン様が私の頭にポン、と手を置く。


 その瞬間、私の心臓はドラムロール状態。


 でも、彼の方はというと、


「では、私は訓練に戻る。また今度。」


 ーー軽い。羽より軽い「またね」だ。


 彼はまだ、私のことを「有能な聖女(便利な仲間)」としか思っていない。


 見てなさいアレン様……!

 あなたにとってなくてはいけない存在に変えてみせる!


 私は心の中で、特大の「えいえいおー!」を三唱した。


 部屋に着くと、暑かったので、ズボンを脱いでから、反省会を始めた。


 アレン様を振り向けられたかな。

 変なこと言ってないよね?

 顔赤くなってたかな?


 するとーーコンコンコン


 部屋を叩く音が聞こえた。


「はーい!どうぞ!」


「アレンです!」


「あ……」「……ん?」


 私はアレンの目線を追いかけた。


 ………あ!?


 ズボンを脱いでいたのを忘れていた。


 ここのとき、頭の中では交通事故が起きていた。


「また、あとで…」


 アレンはそういい残し、部屋を出ていった。


 扉が閉まった音だけが虚しく響く。


 私は脱ぎかけのズボンを握りしめたまま、しばらく石像のように固まった。


「……終わった」


 聖女としての威厳、ゼロ。

 

 しかも、女としても、ゼロ。


 アレン様からの好感度、測定不能。っていうか、第一王子の目に聖女の生足(しかも脱ぎかけ)を焼き付けてしまった。


 これ、アルゼン王国の法律で処刑されない?

 大丈夫?


「なんでノックに対して『どうぞ!』なんて言っちゃったのよ私のバカーーー!!」


 私は枕に顔を埋めてのたうち回った。


 アレン様のあの、なんとも言えない見てはいけないものを見てしまったような、困惑と気まずさが入り混じった顔。


(あ、でも、あの時のちょっと赤くなった耳元、めちゃくちゃ可愛かったな。)


 いやいや、現実逃避してる場合じゃない!



 夕方になると、再び、コンコンコンと響く。


「は…」


 ちょっと待て、ズボンよし!


「はーい、どうぞ!」


 使用人がやってきた。


 どうやら、私を向かい入れるための夕食会をやるらしい。


 アレンだと期待した分、少ししょんぼりしてしまった。


 私は夕食会へ向かった。


 机の張り紙には『ツバキハラ カノ』の文字。


 ここだな!


 よし、まずは深呼吸だ。

 姿勢を正して、地味聖女なりに気高く振る舞うのよ……!


 と、気合を入れた瞬間、隣の椅子が引かれた。


「失礼。隣、いいだろうか」


「えっ、ア、アレン様……!?」


 まさかの、というか当然の如く、隣の席はアレン様だった。


 昼間の「ズボン脱ぎかけ事件」が、走馬灯のように脳裏を駆け巡る。


 嬉しい反面、気まず過ぎて、高級そうな肉料理がただのゴムにしか感じられない。


 ふと横に目を向けると、アレン様も手元のフォークを動かさず、どこか一点を見つめている。


 よく見れば、彼の綺麗な耳たぶが、夕食会の赤い絨毯じゅうたんよりも赤くなっている気がする。


 一言も話さず、周りの会話に助けられながらも、2時間が流れ、食事会は終わりを告げた。


 大量のチョコを口に加え、バルコニーに空気を吸いにいくと、隣にアレンがやってきた。


 私はアレンを見て心臓の音が脳内に響く。


「……さっきは、すまなかった。その、突然訪ねてしまったから」


 アレンが真面目な顔(でも耳まで真っ赤)で謝ってくる。


「大丈夫、悪いのは私だから」


「……でも、あのときの…スタイルが……その、とても……」


 アレン様の声が優しく響く。


 でも、なぜか段々と遠くなっていく気がする。


(あれ……?なんだか視界がぼやけて……)


 気づけば、私の意識はそこで途切れていた。



「うっっ……」


 鳥の鳴き声に目が覚めると、自室のベッドの上だった。


 頭が割れるように痛い。


(あれ……?私、バルコニーで……アレン様と話してて……)


 夢か…人生そう上手く、関係が回復しないよね…


 重い体を起こそうとしたとき、横目に人がいることに気づいた。


 なんと、アレン様が横で寝ていた。


「……え、待って。……は?」


 視界の端に映る、黄金色の髪。


 規則正しい、穏やかな寝息。


 そして、シーツから覗く、たくましい肩。


 間違いなくアレン様だ。


 昨日の食事会で気まずさのあまり一滴も酒を飲まなかったはずなのに、なぜか私の記憶がバルコニーの会話で途切れている。


(まさか私、緊張しすぎてバルコニーで気絶した!? それをアレン様がここまで運んでくれて、そのまま……え、添い寝!? なんで添い寝してるの!?)


 私は音を立てないように布団を剥がした。


 すると、アレン様が少し身じろぎをして、私の方へ顔を向けた。


 ひっ、顔が近い! 睫毛が長い! 吐息がかかる!


(これ、私が「はい、誓います!」って言ったら、そのまま冒頭のチューに繋がっちゃうやつじゃないの!? 現実が妄想を追い越してどうするのよ!)


 し、死んでしまう。


 とりあえず、ベットから起きよう…


「離したくない、行かないでくれ……」


 なんて、無自覚にアレン様が私の服の裾を掴んで引き寄せてきたらどうしよう!?


 そんな全腐女子の夢みたいな妄想が頭をよぎりますが、現実はもっと、こう、物理的な問題でした。


 ベッドから音を立てないように脱出しようとした、その時。


「……えっ」


 何かに引っかかったような感触。


 見ると、私のパジャマの袖を、アレン様が大きな手でしっかりと握りしめていた。


「う、嘘でしょ……」


 昨夜のバルコニー。


 断片的に記憶が戻ってくる。


 気まずさに耐えきれず、私は出されたお菓子をバカ食いし、実はその中に入っていたお酒たっぷりの高級チョコで、まんまと撃沈したのだ。


 千鳥足でアレン様に絡み、「置いてかないでー!」「アレン様は私の推しなんだからー!」と叫びながら、彼の服を掴んで離さなかった私。


 それをアレン様が優しさ(あるいは力尽く)で介抱してくれた結果、どうやら私も彼を離さなかったし、彼も私を離せなくなってしまったのかも…


「ん……カノ……?」


 アレン様がうっすらと目を開けた。


 寝起きの、少し掠れた声。


 ーーヤバい。今の声、脳内保存用ボイスに登録完了。


「お、おはようございます、アレン様……。あの、その、手が……」


 私が真っ赤になって指さすと、アレン様は自分の手が私の袖を握っていることに気づき、目を見開いた。


「……っ! す、すまない! 昨夜、君があまりに泣いて縋り付くものだから、落ち着くまでと思って隣にいたのだが……いつの間にか寝入ってしまったようだ」


 アレン様がバッと跳ね起きる。


 その顔は、朝日よりも赤かった。


「泣いて……縋り付いた……?」


(私、何したの!? 酔った勢いでどんな醜態をさらしたのよ!?)


「ああ。『アレン様がいなきゃ生きていけない』とか、『結婚して一生養って』とか……かなり、切実に……」


「……死にたい」


 私は再び枕に顔を沈めた。


「振り向かすぞ!」なんて意気込んでいた昨日の私を殴りたい。


 これはもう、振り向かせるどころか、再び国外追放されるレベルじゃないの!?


「だけど、カノ……昨日の言葉悪くなかったぞ」


 そう言い残して、部屋から出ていってしまった。


 ええええっ!? アレン様、今なんて言いました!?


「嬉しかった」!? それって実質、プロポーズへの快諾じゃないですか!!


 華乃さんの「一生養って」という、腐女子特有の切実かつ大胆な要求が、まさかのアレン様の心にクリティカルヒットしてしまったようです。


 これぞ「怪我の功名」ならぬ「泥酔の功名」ですね。


 私は枕に顔を埋めたまま、しばらく身動きが取れなかった。


「……悪くない、ぞ……?」


 アレン様の去り際の、あの少し照れたような、でも決意を秘めたような低い声が、脳内で無限リピートされる。


(待って、待って。整理しよう。私、昨日のバルコニーで『スタイルがいい』って褒められた後に、酒チョコで酔っ払って、『結婚して養え』ってクソデカ感情をぶつけたのよね?)


 普通の王子様なら「無礼者!」で終わるところだ。


 なのに、彼は「悪くない」と言った。


 ……これ、もしかして。


 振り向かせるどころか…


「……あー、もう!! 顔が熱い!!」


 バタバタとベッドの上で悶絶する。


 でも、ふと冷静になる。


 アレン様は「第一王子」だ。

 

 そして私は、地味だと言われて追放されたどこの馬の骨ともしれない自称聖女。


 もし本当に彼とあの冒頭の結婚式を実現させるなら、私はただの居候じゃいられない。


(見てなさいよ。アレン様が『離したくない』って、今度はシラフで、全世界の前で言うようにさせてやるんだから!)


 私はガバッと起き上がると、パジャマのままガッツポーズを作った。


「えいえいおー!!」


 拳を突き上げた瞬間、またコンコンとドアが鳴った。


「カノ、忘れていた。今日の瘴気調査、私と一緒に来てもらうことになったから。……準備ができたら、下に来てくれ」


 ドア越しのアレン様の声は、心なしかさっきより弾んでいる気がした。


 ーー毎回タイミング悪過ぎませんか!


 だけど……デートだ!



 森へ向かった。


 まだ聖女としての役目はできないけど、魔物なれもかねてらしい。


「俺の後ろにいれば全て守って見せるからな」


(本当にありがとうございます!)


 アルゼン王国の騎士たちが周囲を警戒する中、私はアレン様のすぐ後ろを歩いていた。


 視界に入るのは、アレン様の広いたくましい背中。


 さっきの言葉が、脳内でエコーのように鳴り止まない。


(『俺の後ろにいれば』……ですって!? 尊い、尊すぎる。何そのスパダリ発言。好き。結婚して(2回目))


 森の中は、想像以上に瘴気に侵されていた。


 紫色の霧が立ち込め、木々は黒ずんでいる。


「……ひどい」


「ああ。ここまで広がっているとは……」


 アレンが険しい顔で周囲を見回す。


「カノ、俺の後ろにいてくれ。何かあったら、すぐに逃げるんだ」


「はい」


 私はアレンの背中を見つめた。


(……この人は、いつも私を守ろうとしてくれる)


 その優しさが、胸に染みる。


(だから私も、この人を守りたい)


 その時――


 ガァァァァッ!


 茂みから、巨大な魔物が飛び出してきた。


「っ!カノ、下がっていろ!」


 アレンが剣を抜いて前に出る。


 だけど、魔物は一体じゃなかった。


 次々と、周囲から魔物が現れる。


「くっ……!」


 アレンが苦戦している。


(……このままじゃ、アレン様が!)


 私は覚悟を決めた。


「アレン様!」


「カノ!?何を――」


「私に、任せてください!」


 私はアレンの背中に手を添えた。


 そして、心の中で祈る。


(お願い。この人を、守らせて)


 その瞬間、私の手から眩いばかりの白い光が溢れ出し、アレン様の全身を包み込んだ。


 私はアレン様の背中に、そっと手を添えた。


「アレン様、危ないことはしないでくださいね。……えいっ!」


 その瞬間、私の手から温かく、目が眩むほど真っ白な光が溢れ出し、アレン様の全身を包み込んだ。


「……っ!? なんだ、この力は……体が、軽い……!?」


 無自覚に発動した。


「……っ、体が熱い、いや、力がみなぎる。カノ、君がやってくれたのか?」


 アレン様が信じられないものを見るような目で私を振り返った。


 その体からは、神々しいまでの白いオーラが立ち上っている。


(……えっ、待って。今、私『えいっ』て言っただけだよね? )


 驚いている暇はなかった。


 聖なる光を纏ったアレン様が、襲いかかる魔物に向かって一閃。


 ただの剣撃のはずなのに、光の刃が空を裂き、巨大な魔物を一瞬で光の塵へと変えてしまった。


「……すご……。戦闘力がカンストしてる……」


 あまりの格好良さに呆然と立ち尽くす私の元へ、アレン様が駆け寄ってくる。


 彼は剣を収めると、私の両肩をがっしりと掴んだ。


「カノ……! 君はやはり、聖女だったんだな。こんなにも温かくて、強い力は初めてだ」


「あ、アレン様、近いです……!

 あなたの力になれたなら良かったですけど……」


 アレン様の目は、心底感銘を受けたようにキラキラと輝いている。


 これまで「便利な仲間」として見ていた目が、今度は自分を支えてくれる唯一無二のパートナーを見る目に変わった瞬間を、私は腐女子の鋭い嗅覚で察知した。


(あ、これ落ちた。完全にフラグ立ったわ。しかも、アレン様のこの表情……『俺の聖女』って独占欲がチラ見えしてる気がする!)


 周囲の騎士たちも、ざわざわと跪き始める。


「なんという浄化の力……」

「あの地味な身なりの女性が、これほどの……」


 ――ふん、地味って言ったブタ、見てる?


 私の聖女パワーは、この国の第一王子を虜にするレベルなのよ!


 さっきまで私を「地味だ」「本当に聖女か?」と疑った目で見ていた騎士たちが、手のひらを返したように色めき立った。


 おいおい、さっきまでの冷遇はどこへ行った。


 これがモテ期ってやつか?

 だけど、しもべたちよ。

 私はアレンという男に惚れてしまったんだだから、タイミングが悪かったわね。


 と、心の中で毒づいていると、隣のアレン様の空気が一変した。


 アレン様が私の腰を抱き寄せ、周囲を射抜くような鋭い視線で睨みつけたのだ。


「.....聞こえているぞ。カノを我が国の聖女として正式に迎えるのは当然だが--彼女のこの『姿』も『力』も、誰にも分けるつもりはない」


 えっ、アレン様?声は低くなっててめちゃくちゃセクシーなんですけど!


 そのまま彼は、私を馬に乗せると(もちろん密着)、周囲の視線を遮るように自分のマントで私を包み込んだ。


「アレン様、近いです.....」


「しっかり捕まっていろ!」


 城に戻るまでの道中、私の心臓は魔物との戦闘より激しく暴れていた。


 そして城の門をくぐるなり、アレン様は馬を降りるのももどかしいといった様子で私を抱き上げた。


「アレン様!?」


「父上に、報告がある」


 そのまま、玉座の間へと直行する。


「報告、ですか?」


「ああ。君を我が国の、いや――」


 アレンが私の目をまっすぐ見つめる。


「俺の聖女として、正式に迎えたい」


「……っ!」


胸が、熱くなった。


(俺の、聖女……)


 その言葉が、胸に染みる。


 玉座の間に入ると、国王様が待っていた。


「アレン。カノ。森での活躍、聞いたぞ」


「はい、父上。カノの力があれば、この国の瘴気を浄化できます」


「うむ。それは心強い」


国王様が満足そうに頷く。


「カノ。そなたを、この国の正式な聖女として迎え入れたい。それと同時に――」


国王様が意味深に微笑む。


「アレンの正妃として、迎え入れたいと思うが……どうだろうか?」


「……正妃!?せ、せせせ正妃って、あの、つまり……結婚ってことですか!?」


 私の声が玉座の間に響き渡る。


 静まり返っていた広間で、背後にいた騎士たちが「おぉ……!」「ついに殿下が!」と一斉にどよめいた。


 その反応で、アレン様は自分がしでかしたことに気づいたらしい。


 いや、正確には――国王様がしでかしたことに。


「っ!ち、父上!?何を勝手に!」


「何を言う。お前、さっき『俺の正妃』と言ったではないか。」


嬉しいけど、まだ心の準備が――!!


「……正妃!? せ、せせせ正妃って、あの、つまり……結婚ってことですか!?」


 私の声が玉座の間に響き渡る。


 静まり返っていた広間で、背後にいた騎士たちが「おぉ……!」「ついに殿下が!」と一斉にどよめいた。


 その反応で、アレン様は自分がしでかしたことに気づいたらしい。


「っ! い、いや! ちがっ、違う! 聞き間違えだ! 俺は今、噛んだだけだ! せ、せ、せいじょ!聖女だと言ったんだ!」


 アレン様は両手をぶんぶんと振って、耳まで真っ赤にしながら、ガバッと私から視線を逸らした。


 いやアレン様、めちゃくちゃ慌ててるじゃないですか。声も裏返って、もはや裏返りすぎて超音波になってますよ。さっきまでのセクシーな低音ボイスはどこへ行ったんですか。


(えええええっ!? 今の、照れ隠し!? それとも、あまりの恥ずかしさに無かったことにしようとしてるの!? 私の『養われ計画』、今の「噛んだ」で確定でいいんですよねーー!?)


 ああ、もう! 余裕たっぷりな独占欲からの、この余裕ゼロな赤面……。


 ギャップが尊すぎて心臓がもたない!

 

(……いや、絶対言い間違いじゃない。あの目はマジだった! とりあえず、早急にこの世界のウェディングドレス事情、徹底調査始めまーーす!!)


 今日も、私の幸せな勘違いは続いていくーー。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


地味聖女(中身は腐女子)なカノと、スパダリ王子のちょっと不器用な恋物語、いかがでしたでしょうか。


初めての異世界恋愛作品で手探りな部分も多かったのですが、「甘い」「尊い」「この二人好きかも」そんなふうに少しでも感じていただけたら嬉しいです。


少しでも「面白い」「この続きも読んでみたい」と思っていただけたら、下の☆から評価やブックマークで応援してもらえると励みになります!


反応が良かったら、この物語の続きにも挑戦したいと思います!

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