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魄神、アストレイア

右腕 グーパーグーパー


私「しっろ!」


私はその白い右腕をグーパーさせながら眺めた。ちゃんと自分で動かせる。縫合個所から肌の色が違う。


プリム「白いのはホムンクルスの腕なんだから当たり前でしょ?つなげたばかりだからあんまり無茶しちゃダメよ?」


母は手術室の壁に付けた机の席に座り、メガネをかけつつ、オペ記録を淡々と書いていた。その顔は見えない。


サラサラ


アーニャ「これでまた、五体満足ですね。」


私「そのためにお母さんを訪ねたんだもの。そうこなくっちゃ。」


電子妖精を左肩に乗せ、手術台から降りる。

そして、私は手術着からボンテージスーツを着がえた。後、上着も。


イソイソ……


横の母は机に落とした目をそのままで私の目の色について語りだした。


プリム「アナタは生まれた時、青だった。幼い時、高熱を出して緑に変わった。」


ギシッ


母と目が合う。


私『私と似てるなー。メガネ姿とかソックリ。』


プリム「最初は猫みたいに成長していく過程で目の色が変わったんだと思ってたけど、もう、それは違うわね。」


ダンジョンの最奥で目覚めたときは黄色、今は茶色だ。


私「戦略魔法、マカル返しの玉。私はアヌっていうやつなんでしょ?」


プリム「普通、魔女は戦略魔法を母親の系統を受け継ぐ。私は生玉イクタマ十種とくさ神宝かんだから系、いわゆるオリジナル系で、あなたが使うのが辺津鏡ヘツカガミだったから油断してたわ。これで、魔女特有の目のクマが出ない理由が解明された。」


私『したのオケケが生えてこないのは……?』


母は長年の疑問が晴れてスッキリと言ったため息をついて、また、席に向かった。


プリム「そう言えば、へカテリーナはアストリクスが欲しいとか言ってたわね?」


私「えぇ。」


プリム「作っとくから、エルフの里でも観光してきたら?待ってるのも退屈でしょ?」


私「あ、でもまた色違いのゴブリンが不可視インビジブルでくるんじゃ……」


プリム「仕掛けがわかれば大丈夫よ。不可視インビジブルなんて今度は返り討ちにしてやるんだから!」


ガッツポーズ


うん、大丈夫そうだ。


私「じゃ、その辺、歩いてくる。」


プリム「晩御飯までには帰ってらっしゃいよ?」


私「行ってきまーす。」




私はニートしてた時も夜な夜な外に出歩いていたらしい。

まぁ、近くのコンビニをスクーターですぐ行って、すぐ帰ってきてたけど。


まだ明るいのに素直に観光しに出かけられたのは冒険で外に出たからだろうか?


私「もう、私は引きこもりじゃないんだから。」


アーニャ「にしても、ここは緑が多いですね?」


神代の時代からある背の高い建造物。そのどれもが分厚い苔で覆われていた。

人間に比べて人口の少ないエルフたちをスッポリそのうちに収めているのか出歩いている人は少ない。


アーニャ「まだ日が高いですから、皆さん中で仕事してるんでしょうね?」


しかし、


通行人エルフ (まじまじ)


神代の縫い目のない暗い赤褐色の上着に黒のボンテージスーツ。

腰には鉄臭い二丁拳銃とナイフ。

肩には電子妖精の光る猫。


街を行く人々の視線は世にも珍しい珍獣ワタシに集まった。


うう、緊張してポンポン痛い。

たまに遭遇した全裸徘徊オジサンもこんな感じだったのだろうか?消え入りたい。(たぶん違う)

自然と足は人けのない通りへと向かう。




???「お姉さん、お姉さん。」


ん?私か?


声のする方を向くとおさげの猫型亜人の女性が店の前で客引きをしていた。怪しい店の人?


なるほど、同性愛者と見抜かれたか。


私「何円?」(ズイッ)


鼻息荒い私に、察しのいい猫型亜人のその子は、

え?と言う顔をして小ぶりな胸を隠しつつ、後ずさった。


……ちっぱいはいい。


???「いやぁ、えっと、お姉さん旅の人でしょ?なんか買ってって?と思って声をかけたんだけど……」


私「もしかして、アナタはニキータ?」


ニキータ「そうそう。あいにく、この体は売ってないよ。」




ニキータの店


(ケルト風BGM)


ニキータ「お師匠様の転移魔法のスクロールできたのはいいんですが、お客さんがほとんどこないんですよね。」


アーニャ「なんででしょう?」


私「テナントの立地も問題だけど、鉄臭いからじゃない?」(スンスン)


それもそのはず、

店内には武具に代表される鉄製商品が多く、しかもそには見知った黒光りする大型バイクが展示してあった。


私『この前、売ったやつじゃん?右腕も直ったことだし、買い戻すか?』


値段は……とてもじゃないが、今の手持ちじゃ買えそうにない。


ニキータ「このままじゃ、ノルマで他の(ニキータに負けてしまいます!どうにかならないですか?」


そう言われて、私は店の陳列されている商品を見た。


私「エルフの里は結界があるから、旅人は外界から来られない。」


ニキータ「お姉さんは?」


私「私は特別。」


陳列してあった武具を手にとってニキータに見せた。


私「旅人用の陳列してたら一般人なんか来ない。ましてや、エルフは鉄臭いとこには寄り付かないわ。」


ニキータ「なるほど。では、一般人向けの商品だけ取り扱いますかね?食料品、家庭雑貨とか。」


私「あとアンティークとか?」


アーニャ「鉄の臭いをごまかすために、フローラル系の香を焚いては?」


ニキータ「やってみます!」


ぐぅぅぅ


あら?小腹がすいてきた。

そう言えば、何も食べてないや、最後に食べたのはあの虫くらいか。


私『なんか食べ物は、』「あったあった。」


私はシリアルバーを何本かとピーチのチューハイを取ってレジに向かった。


私「後、アレもある?レトルトの奴。」


ニキータ「レスキューフーズですか?ココは災害が少ないから売れないと思って、奥に仕舞ってたんですよね。」


そういいながら、ニキータは店のバックヤードに入っていった。


私「何そのレスキューフーズって?」


ネーミングが……常食用ではない。そう言えば、母の手作り料理を食べた記憶がない。


いつも研究に忙しくしてて、食べてたのはプロテインバーやシリアルバーばっかりで、育ち盛りの私はそれだけじゃ足りなくて、


私『虫を常食してたような?』


それで、友達もいないし、引きこもりになったのか?まぁ、別にそれはいいんだ。


ニキータがレスキューフーズをたくさん抱えて戻ってきた。


私「……残念だけど、売上には貢献できそうにないわ。手持ちが少ないもの。」


えー?ッと言った顔をされる。私はあまり、たくさんお金を持ち歩かない。なぜだろう?


私『サツ=殺に聞こえるからかしら?』


アーニャ『プリム様にも買っていきましょう。』


そうしよう。お母さんのことだから、またシリアルバーで済ますつもりだろうし……

何種類か見繕う。


会計を待つ間にレスキューフーズの一般向け、常食向けの名前を考える。


私「あったかい、レトルト。常食……」


アーニャ「加熱……ピュレトスなんてどうでしょう?」


ニキータ「何の話ですか?」


私「レスキューフーズの常食向けの名称を考えてたの。」


ニキータ「へー、ピュレトスかぁ。本部に提案してみます!合計でイチキュッパです。」




プリム形成クリニック


私「ただいまー。」


診察室を抜け、奥の居住スペースに向かうと母は狭いリビングの中央に置かれたテーブル席でコーヒーを飲んでいた。


プリム「おかえりー、できてるわよ?あなた用のアストリクス。」


母の戦略魔法、生玉イクタマは何でも虚空から生み出せる。

仕事が早い。

他のホムンクルス技術者がうらやましがってるのを見たことがある。多分。


ズヒュン


母の身体から魄神シキガミ、アストリクスが出てきたが……


私「メスゴリラ?」


相変わらずの筋骨隆々のデカイ身体、彫刻のような端正な顔。


私『そして……』


ユラユラと揺らめく長い髪、その胸には小ぶりながら膨らみがある。……私好みだ、特に胸は。


プリム「失礼ね。アナタの要望通り、ちゃんと、女性型にしたのよ?」


私「その子の名前は?」


プリム「そうねぇ……」


決めてなかったんか……


プリム「アストリクスの女性バージョンだから、アストレイアとか?」


私「いいんじゃないかしら。」


アーニャ「で、それをどうやって身に宿すのでしょうか?」


プリム「へカテリーナが名前を呼べばそっちに入るわよ。」


簡単。


私「では、来なさい。アストレイア!」


アストレイア『承知。』


スルン


彼女は私の体に重なる形で消えていった。


まぶたを閉じると自分の魔力オドの池の中に彼女を感じる。


プリム「そう言えば、ココの長老に開業の挨拶に行かなくちゃ。」


あ、


私「私もついて行ってもいい?聞きたいことがあるの。」


誰かが言っていた、エルフに伝わる伝説の武器について。私はそれを思い出した。肝心なその人が誰かはわからないままだけど。


あの夢の中で大事な誰かに託されたもの、あの光が記憶媒体だったのだろう。


プリム「いいわ、これを食べたら行きましょう。」

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