エルフの里へ
レジスタンスと別れて、エルフの里を目指して王都を南下し始めて、数日。
ほとんどの記憶も右腕も無くした私と電子妖精の猫アーニャは一回、追撃隊と遭遇したが光の矢で返り討ちにした。
遮蔽物のない野戦で光の矢の弾幕に勝てるワケがない。ヘルメーカーで壁抜きもできるし。盾も鎧も並のものでは私に勝てない。
私「しかし……」
歩き疲れた私はヒッチハイクで荷馬車を捕まえて、エルフの里の近くまで乗せていってもらうことにした。
私「あ"ー、たすかったー!」
アーニャ「この二三日、野山を歩き続きでしたからね。」
道中、野党が出るとかで、ヘルメーカーやナイフで武装していた私は護衛にはピッタリだったようだ。
ガラガラガラ……
荷馬車の牧草の上に寝っ転がり、秋の終わりの無駄に高くなった空を見上げる。風は冷たいが、まだ日の照ってる昼間は暖かい。
アーニャ「便利ですよね、辺津鏡の光の矢。」
私「そのおかげで私は大事な記憶をなくしたから、ハイリスク、ハイリターンよねー?」
多分、そんな気がする。アーニャ。この子を見ていると何か心の奥がざわつくのだ。
ガラガラガラ……
胸に乗せている電子妖精をおもむろに、撫でようとするが、
スッ
左手はその体を通り抜ける。
私『少し、ピリピリする。』
彼女は生き物ではない、電子妖精なのだと再認識する。空には赤トンボの群れが飛び交っている。アレなんかは二匹繋がって、飛んでる?エチエチ。
ガラガラガラ……
アーニャ「あそこの分かれ道で下ろしてください。」
御者の農夫「あんたら道教の人?」
私「?いいえ?」(多分)
御者の農夫「?あの道っていやぁ、道教施設しかないんじゃ?」
私「エルフの里があるって聞いてるけど?」
アーニャ「私たちはそこに行くんです。」
御者の農夫「ありゃ?おかしいな。エルフの里は先の戦でなくなったって聞いたけどな?」
私「そうなの?」
御者の農夫「酒場でエルフの里に行ったっていうやつに聞いたんだ。何でも、いくら進んでもたどり着かなくて、気がついたら道教施設の前に戻ってるんだと。」
アーニャ『酔っ払いの話ですか。』
私『まぁ、気になる話ではあるわね?』
野党にも追撃隊にも遭遇せずにここまでこれた。エルフの里に続く道で荷馬車を降りる。
私「日頃の行いのおかげね。」
西のオアシスに向かった女性陣に食料をあげた。功徳が巡ってきたのだろう。ナンマンダブ、ナンマンダブ。
ん?神社、教会、そして今度は道教施設か。それに魔女にドワーフにエルフまでいるこの国って案外、多文化共生できてるいい国なのか?
私『ソレを魔王が破壊しようとしてるのか。絶対、これ以上やらせないわ。』
脳裏に破壊された神社が思い起こされる。
アーニャ「この森からプリム様の魔力の反応があります。行きましょう。」
食料はないが、私はそこらの昆虫食でどうとでもなる、火もナイフで起こせるし。
パシ!
街道と草原を隔てていた木のガードレールに止まっていたバッタを捕まえる。
私「プリップリッじゃない。」
ヒョイッ
虫『わー! 』
口の中を放り込む。何か聞こえたような?気のせいかな?
アーニャ「寄生虫……」
私「よく噛めば死ぬ。」
ムッチャムッチャ
……ニガイ。
しかし、
ゲテモノが行けることに有用性を実感する。
記憶がゴッソリと抜け落ちてる私が自分に自信を持てているのはそういうのも関係しているのかもしれない。
道教施設
竹の森に入ると、確かに道教施設が見えてきて、中から線香の匂いがする。死者の埋葬でもやっているのだろうか?
気になった私は中を覗くことにした。
(ダウナー系BGM)
私「あ!やった!ニキータがいる!」
美味しい虫の図鑑とかあるかな?聞いてみよう!
前髪で目の隠れた黒猫亜人が無愛想に挨拶する。道教施設の中は初めて入る(多分?)
中には腰の高さの台にいくつもの棺が安置されていて、その中の一つ、傍らに一人の魔女がいた。彼女はこちらに気づいた。
銀髪の目つきの悪い魔女「お、何時ぞやの。腕はどうした?何か他にも、変わったか?メガネか?」
ニキータ「お客さん、リュプケさんとは知り合い?」
私「多分?」『記憶が曖昧だわ……。』
シャツ姿の魔女は興奮気味に続けた。
リュプケ「まぁ、いい。それより、こいつを見てくれ!新しい作品なんだ!」
自慢げな魔女は棺を開けると、
中から、明るい茶髪をボブカットにした女性が上半身を上げる。そのエルフ耳に見覚えがある。しかし、どこで?
リュプケ「?どうした、お前?あ、感動してるのか。」
あぁ、なんだろう、言葉が出ない。涙はたくさん出るのに。
生気なく青白くも美しい彼女は目を閉じ、額に何か黄色地に赤で文字の書かれた札を貼っていた。
リュプケ「いいだろう?ダンジョンの最奥にあったって聞いてる。エルフの死体なんて、そうそうお目にできる代物じゃない!」
ニキータ「ネクロイド、商品化できそうですか?」
リュプケ「あー、まだわかんない。もうちょっと、研究しないと他のゴーレムと差別化できない。このままじゃ、冥徒とかセクサロイドが関の山、薄利多売さ。」
ニキータ「その時はウチでも取り扱いさせてくださいよ!」
リュプケ「だな。頼むよ!」
猫亜人と魔女は倫理観度外視の商品で金儲けする事に妄想を膨らましている。鼻息が荒い。
私「ちょっと、ちょっと!彼女を売るつもり!?」
私はその死体に抱きついていた。冷たい。まるで死霊みたいだ。
私「私が買うわ!」
リュプケ「えー?これ、非売品なんだけど。」
私「そうなの?」
リュプケ「エルフの死体は珍しい。今後の研究のためにも手元に置いときたいんだ。」
パチリ
私とそのエルフ死体は目が合う。
あ、好き。
やっぱり、欲しい。そばに置いときたい。
私「どうしたら譲ってくれる。」
リュプケ「ダメだって!」
ムムムム……
アーニャ『諦めましょう。』「それよりも、エルフの里はこの道であってますか?」
ニキータ「多分?」
リュプケ「私が来たのもエルフの死体目的だったんだけど、この先には何もなかったぜ?」
アーニャ「変ですね。プリム様の反応は確かにこのあたりからなんですが?」
ニキータ「それよりお客さん、なんか買っていってよ。」
エルフの森(?) 竹やぶ
行けども行けども、霧がかった竹やぶが続いてる……
アーニャ「おかしいですね?魔力反応はこのあたりからなんですが?」
私「道教施設からだいぶ歩いたわよ?」
そして、また、道教施設が目の前に見えてくる。
何度目だ?もうだいぶ日も落ちていて、辺りは暗くなり始めている。
アーニャ「もう一度。」
私は道教施設に背を向けて歩き出した。
発光するアーニャの体の光で周囲は見渡せているが、
ヒュー
ブルルッ
冷える。オシッコちびりそう。
アーニャ「何かのギミックがあるんですかね?」
エルフの術?魔女にも似たような家を守る魔法があるって聞いた。
魔女のやつなら魔力障壁を感じるからそこで何かしらの合図をすればいいだけだろうけど、エルフのは何も感じない?
私「とりあえず、光の矢かヘルメーカーでもぶっ放してみる?」
スチャ
アーニャ「試してみましょう。」
???「わー、やめろ!」
あ、なんか出てきた。
霧がかった竹やぶの中からエルフの若者が一人、サラサラしてる白に近い淡い金髪を肩口まで伸ばしているイケメンが現れた。
私「トンガリ耳?」
アーニャ「エルフさんですね。」
???「あー!よく見たら、今さっき虫を食べたやつ!」
私『男は最近は食べてないぞ?』「アンタ誰?」
フライト「俺はフライト。エルフの里で陶芸をやってる。今は人手が足りないから、こうして外の監視もしてるのさ。」
アーニャ「エルフの里まで案内してくれませんか?」
フライト「もう里の中だよ。」
エルフの青年が手で素早く何種類かの印(?)を組むと、今さっきまての竹やぶは消えて、そこは、こけむした背の高い建物の並ぶ広場に変わった。
建築様式からして神代からありそうな古代遺跡をすみかにしているようだ。
私「東洋の魔法?」
フライト「エルフ流さ。」
エルフのは魔法技術は魔女のとは文化形態が違うと授業で習っていた(?)と思うが、ホント全然、違うようだ。
フライト「神代の服着てっけど、アンタ魔女?肩の光ってる猫は使い魔?」
エルフの青年は珍しそうに私たちを見ている。
神代の上着にミスリルアーマーを所々にくっつけたピチピチの黒ボンテージスーツをまとってて、
私『片腕、メガネ、巨乳、くどい顔……オマケに電子妖精。属性てんこ盛りだもんね。』
アーニャ「そんなとこより、ココにプリム様がいるはずです。」
フライト「プリム様?最近、王都から流れてきた魔女の人?」
私「お母さんに会いに来たの。」
エルフの青年と目が合う。
フライト「あ、そう言われてみたら似てるな。あの人なら、数週間前から寝込んでるよ。」
私「お母さん、何かあったの!?」
アーニャ「案内してください!」




