女性救出作戦
私「くっさ!」
バッツ「もう、地下はごめんだ……」
地下の出入り口、
私達は王都の縁にあった教会の便所の裏から地上に這い出た。そして、隠れながら大通り入口を目指した。
トーマス「臭い地下も、これで終いさ。」
私「次はないの?」
バッツ「あぁ。」
これっきり?女性は定期的につれてこられてるんじゃ?
トーマス「あくまで中立派の諸侯を動かすためのパフォーマンスさ。」
バッツ「こんなのを何回もやれる戦力は今のレジスタンスにはないしな。」
ふーん。政治的な話になってきたなぁ。私が思ってる以上にことは複雑なのね。
魔王をぶっ飛ばす。ってのを軽く考えてた。
トーマス「中立の諸侯に反体制派の味方についてもらえれば、ようやく魔王軍と五分の戦いができる。」
バッツ「だといいが……もう、全滅はゴメンだ。」
古代兵器。
ニキータはそれで元国王軍はボコボコにされたと言ってた。彼らはその生き残りなのだろうか?
私『なにはともあれ、』「アーニャ、風属性の魔法できる?」
アーニャ「了解です。」
使えば炎が出るというナイフを天に掲げた私はそれをユラユラ振り始めた。
建物の屋根にいたカラスたちがこちらに気づく。やつらが叫ぶと同時くらいに、
アーニャ「風刃!」
ズッパァァ!
カラス達「グギャァー!」
ズヒュゥゥゥ……ン!
私『うお!結構、ゴッソリ!』
炎をまとった風の刃がカラスを切り刻み、建物の外壁に燃え移る。
私「計画通り!」
雨上がりでようやっと乾いてきたであろう家は瞬く間に火事になった。
そこへ大通りの向こうから、消火班のゴブリンと警備のゴブリン、オーガ、オークが大挙して押し寄せてくるのを見て、前衛の二人は剣を構えた。
バッツ「来るぞ!開戦!」
トーマス「頼りにしてるぜ、リナさんよ!」
私「こっちこそ。」
アーニャ「前衛接敵。チャージショット!」
シュイイィィィ……ン!
ドン!
向かってきていた赤オーガの頭をヘルメーカーで吹き飛ばす。
オーク「!?」
青オーガ「ひるむな!重装甲兵、突撃!」
燃え盛る大通りを重装甲のゴブリンが押し寄せる。
大通りの出入り口に陣取った剣士二人がそれを食い止め、足が止まったところを私のヘルメーカーが仕留める。
トーマス「ザコはいい!体のでかいやつを頼む。」
オークとかのことか?
ドゥン!
ビシ!
オーク「おづ!」
兜の隙間、視界確保のための穴めがけてヘルメーカーを一発。狭い兜の中で大きな音を立てて内容物が破裂する。
ボグァ!
ドロォッ!
兜の穴という穴から血が流れ出る。
ドシーン
ゴブリン「ウホー!」
オークの巨体が地面に倒れ、巻き込まれたゴブリン達が抜け出そうともがいている。
ゴオォォォ!
燃え盛る街が鉄を焼き、大通りの端にいた重装甲のゴブリンたちが悲鳴を上げる。肉の焼ける音がなり、焦げ臭い匂いが立ちこめる。
ゴブリン「ほあ"ぁー!!」
同時くらいに王宮の方から爆発音が聞こえる。本隊が作戦を開始したのか?その後も断続的に爆発音が響いている。
トーマス「作戦成功の合図は!?」
バッツ「まだだ!オレンジの狼煙だ!もう少し耐えろ!」
トーマスの方は激しく燃える炎や真っ黒な煙で王宮が見えない。バッツ側からならかろうじて見えるのか?私からも見えない。
ブスブス……
二人の肩アーマーからも白い煙が出始める。
前衛の二人も炎に近い分、スリップダメージが入る。
私「アーニャ!二人に回復魔法!」
アーニャ「了解!」
ポワワワ……
トーマス「おお!助かった!」
バッツ「回復魔法?リナさんは神官様?」
ズッヒュゥゥゥン!
うぐ、そんなわけあるか。魔女の学校しか出てない。アーニャのおかげだ。
私「二人共、もう少し後退して!」
青オーガ「ちくしょう!逃がすか!回り込め!水散弾!」
ドバッ!
二人めがけて水属性の散弾が発射される。
ゴブリン「ウ"ホ!」
あ、ゴブリン達の後頭部に水弾が当たり、前のめりで何人かが倒れる。が、そんなことは青オーガは構い無しだ。
青オーガ「クソ!水散弾!」
ドバババッ!
二人は盾や剣で防いでいる。
トーマス「ぐっ!」
バッツ「まだまだ!」
さすがにゴブリン達もオーガにキレている。
ゴブリン「ウホー!ウホホ!ウホーホ!」
青オーガ「やかましい!」
ドガラカァ!
燃えていた家が崩れゴブリンたちを巻き込んで大通りをふさぐ。
「□"□"〜〜!」
ゴブリンの声にならない悲鳴が炎に巻かれている。
トーマス「よし!ラストスパートだ!」
バッツ「おう!」
私「魔法に気をつけて!」
狭くなった分、その場所を押さえておけば、いくら数が来ようと、一度に相手にするのは二、三人なのでこちらとしてはありがたい。
ドゥン!
青オーガを狙うも、持ち上げたゴブリンで防がれる。
持ってたゴブリンがボン!っと弾ける。
青オーガ「うっ!アブねぇ!」
パシュー!
バッツ「来た!オレンジ!」
遠くに救出作戦成功の煙が立ち上がる。発煙弾ってやつか?
トーマスがバッツの肩を叩き、後退を開始する。
トーマス「本体も寡兵だ!このまま引きつけつつ後退するぞ!」
バッツ「おう!」
王都東は大火に包まれている。
青オーガ「ちくしょう!逃がすか!」
ゴブリン「ウホー!ウホホホ!ホホ!ホホ!」
青オーガ「しょうがねぇ!先に消火だ!避難も忘れるな!テメーらは消火を手伝え!」
一部は消火活動に回ったが、それでも追撃部隊が次々に追いついてくる。
トーマス「囲まれるぞ!」
バッツ「わかってるさ!」
私「横から!」
ドゥン!
ゴブリン「ぎゃ!」
ボン!
それまでは、大通りの出入り口を抑えていればよかった。
数が来ても相手は広がることができなかったが、その場を離れるとなると、敵は散開する。数で取り囲まれる。
ヘルメーカーは一回、一回撃鉄を上げないと行けない、片手では連射が難しい。
ドゥン!
カチリ!
ドゥン!
私『結構、難しいのね?撤退戦って。』
そんな事を考えていると敵に囲まれる。まずくない?
トーマス「ダイヤモンド陣形!」
バッツ「3人じゃ無理だ!」
ガキィン!
すぐ近くで剣がかち合う音がする。あわわわわ……
私は少しパニックになりかけていたが、辺津鏡の管理人の声を聞いて、正気を取り戻した。
マフ『……貴女、何か忘れてない?』
光の矢!
私『いつも使わないから忘れてた!』
マフ『しっかりなさい。宝物庫の方よ。』
私は頭の中に辺津鏡の門の中に宝物庫の門をイメージした。両開きの大きな扉。
マフ『それでいいわ。後はその扉を貴女の鍵で開けるだけ。』
私「開け、辺津鏡の宝物庫。」
トーマス&バッツ「?宝物庫?」
マフ『光の矢。』
(ガチャリ)
宝物庫の扉を開くと、私の周囲の空間が揺らめき始めた。
ユラ……
異変を察知したゴブリン達が距離を取る。まぁ、身構えても無駄だ。
ドッ!
一斉に無数の光の矢が放たれる!
ドヒュヒュヒュ……!
囲んでいたゴブリン達の頭上に次々に光の矢が降り注ぎ、その身体はハリネズミのようになる。
アーニャ「これは!」
私「奥の手よ!」(わすれてただけ……)
辺津鏡のリロードタイムに入るころには、生き残ったゴブリン達は恐れをなして散り散りに逃げていった。
トーマス「すげぇ!なんだコリャ!」
バッツ「今のうちだ!次の地点まで走れ!」
アーニャ「我々も行きましょう。」
私「オッケー!」
ダメ押しでヘルメーカー。
ドゥン!
パァン!
逃げるゴブリンの後頭部に一発。針を突き立てた水風船のように首から上が弾けた。
合流地点
そこはニキータがいた神社。
夕闇が辺りを包んでいる。光はつけれない、追撃が心配だ。
ここまで来るまでに、かなり遠回りして追撃してくるゴブリンどもを何度もハリネズミにした。
しかし…………
コメット「二人ともよく無事だったね!」
トーマス「コメット!」
神社の敷地内には、魔法使いの男女二人、後は見たこともない兵士たちと助けた女性陣。アレ?
バッツ「団長とダイアーさんは?」
アンジェラ「お師匠様と団長は殿で……」
コメット「きっと、捕縛されたんだよ!あの2人が死ぬわけないよ!」
長い沈黙
剣士A「これからどうする?トーマス。」
バッツ「お前が団長代理だぜ。」
トーマス「……予定通り、西のオアシスへ向かう。」
バッツ「何隊かに分けて敵の追撃をかわそう。」
剣士A「ついでに作戦成功の知らせを持って各地を巡ろう。」
剣士B「この人は?」
兵士たちの一人が私を指さす。
アーニャ「エルフの里に行く予定です。」
私「お母さんに合わないと。」
トーマス「そうしてもらえると、都合がいい。」
バッツ「よし、すぐ出発だ。」
剣士A「隊を分ける!四方に逃げるぞ!」
慌ただしく出発の準備が始まる。
私は辺津鏡からニキータから仕入れた食料を全てトーマス達に渡した。
私「女性陣に優先してあげてね?」
バッツ「分かった。」
トーマス「リナさん、助かったよ!」
私「うん!生きてたらまた会いましょう!」
アーニャ「ナビゲーションは任せてください。プリム様の痕跡を追尾します。」
私はトーマス達と別れ王都からは南に位置するエルフの里に旅立った。




