レジスタンス
「ウホ〜!ウホホ!」
ガチャガチャ
「ウホホホ!ウホ!」
昼間でも足元を光で照らす位の王都。
そこら中に重武装を施した警備のものがあふれていた。
オーガ、オークは大通りを、狭い路地はゴブリンが。私は、路地に身を隠しつつ大通りの様子を伺っていた。
私「それと、カラス?」
大通りの向こうに見える建物の屋根の上にはたくさんのカラスがとまっている。
どこからともなく集まってきている。コウモリと同じようなシステムなのだろうか?
アーニャ『どんどん増えてます。手に負えません。早く、ここを脱出しましょう。』
私は路地を通ってこの警備で溢れた区画から出ることを考えた。
私『くっそー、路地にもゴブリンが入ってきてる。』
ピコーン
私『あ、そうだ。アーニャ、ヘルメーカーにも消音かけてみて?』
アーニャ『これは人用では?』
ピロピロピロ!
私『まぁ、見てなさいって!』
プシュ!
ボン!
兜の中で頭がはじけた音がする。頭を無くした体がその場でフラフラしだす。
私『おっと!』
相手は重武装、駆け寄って、残った体をそ~っと壁に凭れさせる。倒れられたら大きな音が鳴る。
アーニャ『やりますねぇ。』
私『静音よ。』
右目から何故か涙が一筋。
逆まつ毛か?今は気にしてられない。私は電子猫のアーニャを左肩に乗せて次の区画へ急いだ。
幸いここには不可視を見破ってくるモンスターはいない。警備の数が多すぎるためか、カラスは反応しない。
私『フー、脅かしやがって、まるでカカシじゃない。』
簡易バリケードで道を封鎖していたゴブリンの十数体の群れの横を不可視で通る。
私は不可視の効果時間内に急いで向かいの路地に入った。消音靴で多少、速歩きしても気づかれない。
ビシュ……ン
不可視が解除される。数秒リロードタイムだ。私は路地の先をうかがった。
アーニャ『警備の多すぎるところはコチラの動きがカモフラージュされるみたいですね。逆に少ないところを通り抜ける際はカラスに注意しないと。』
路地の出会い頭
ゴブリン「ウッ!ウホー!」
私「げ!」
左のヘルメーカーを一発。弾ける鎧の腹部装甲、爆発する内臓、飛び散る血しぶき。
ゴブリン「うぶ!」
ギャア!ギャア!
けたたましいカラスの警報。
そして、大声を上げながら路地に殺到する追跡者達。
私「ま、まずい!」
アーニャ「早く奥へ!」
カラスに頭を突かれながら路地を奥へと走る。路地の入口には青いオーガがいて魔法で建物の壁や屋根を頭上に降らせてくる。
がっ
私「いったぁ!」『ん?そうでもなかった。』
角材かレンガか が背中に当たる。しかし、上着もミスリルアーマーを施した神代のスーツも無傷だ。
私「さすが神代だ!何ともない!」
路地の中にゴブリン達が何体も入ってきて私を捕まえようと追いかけてきている。
アーニャ「チャージショットです!」
シュイイィィィ……ン!
ドン!
左手のヘルメーカーで先頭のゴブリン数体を撃ち抜く。
路地がその死体で塞がれる。
アーニャ「今のうちです!」
路地を闇雲に走ってゴブリンたちを撒いたはいいものの袋小路に入る。ヤッバイ!
???「こっちだ!早く!」
マンホールから端正な男の顔が出てきて手招きをしている。助かった!
姿は見えないがすぐ近くまで、ウホウホとゴブリンたちが迫っている。
私は素早く地下に降りた。
地下通路
片手剣剣士「急げ!」
両手剣剣士「すぐ追っ手が来るぞ!」
私「あなたたちは?」
見るからに脱いだらすごいであろう逞しい男性が二人。
地下を駆け抜ける二人のあとに私は続いた。
どれだけ、曲がり角を曲がっただろう。私達は息が切れていた。
片手剣剣士「ここまで来たら、もう追ってこれまい。」(はーはー)
私「助かりました……」『けど』
二人とも金髪を短髪にしていて剣士風の格好をしている。
私『片手剣と、もう一人が担いでるのはツーハンドソード?』
アーニャ『パターン白から青へ。中立対象から味方として識別しました。』
何いってんだ?この電子妖精は……
トーマス「俺はトーマス。そっちのやつはバッツ。」
金髪の片手剣の剣士は盾を持っている方の手でツーハンドソードの相棒を指差している。
イケメンに負けず劣らずの両手剣剣士は地下の匂いが気になるのか、鼻を押さえている。
バッツ「レジスタンスってやつさ。そういうあんたは?」
私「私はへカテリーナ。町医者をしてた(はずの)プリムの娘。」
トーマス「へカテリーナ?魔王討伐隊の?」
バッツ「死んだって聞いてたぜ。まぁ、いいや。急ごう。時間食っちまった。」
二人は歩き出した。私も後を追った。
私「どこへ行くの?」
トーマス「団長のとこ。」
バッツ「おいおい、今はリーダーだぜ。」
その後も二人は私をチラチラ見ながら何やら話している。
私とアーニャは脳内会話を始めた。
アーニャ『いいのですか?ついて行って?』
私『いいのよ。魔王をやるとなると、今後、レジスタンスの協力が必要になるし。情報も欲しいのよ。』
私達は地下通路の一室に入った。
部屋には中央のテーブルに大きな王都の地図があり、腕を組んだ人とその横に魔法使い風の格好の男女が3人。
トーマス「ホワイト団長!トーマス、バッツ、ただいま現着しました!」
ホワイト「遅いぞ!何をしていた、お前たち!」
ドン!
机に手を勢いよく置いた男が怒鳴る。その黒髪には白いのがたくさん目立っている。トーマス達は首をすくめて平謝りしている。
私『団長?なんか見たことある人だ。(記憶があいまいだが……)』
白髪交じりの黒髪をトーマスとかと同じく短髪にして腰に剣をぶら下げている。
私『この人たち、騎士団の人?』
アーニャ『ですかねぇ?私、外に出るの初めてなもので……』
電子 妖精にはそこら辺の情報はないのか。インストールされてるのはスニーキング魔法だけか。昔の私みたい。
ホワイト「ん?そちらのへんてこな娘さんはだれだ?」
へんてこ……
トーマス「ゴブリンどもが騒いでた原因です。」
バッツ「魔王討伐隊の魔法使い殿です。名前は、えーと?」
私「へカテリーナ。通称リナです。」
ホワイト「ダイアーさん知ってますか?」
魔法使い風の格好の3人の中の一番歳をとっているように見える男が私をまじまじ見ている。
ダイアー「あー、プリムの娘はあんまり家から出ないタチだったからなぁ。まぁ、言われてみればプリムの面影もあるような……?」
悪かったな。ニートで。ダイアーの後ろの男女が私の見た目を指摘する。
女魔法使い「神代の服です。それだけでも手練れだって分かります!」
男魔法使い「そっちの猫は電子妖精ですよ!すげー!初めて見た!」
ダイアー「アンジェラ、コメットその辺にしとけ。ホワイト殿そろそろ……」
ダイアーの一言で部屋の雰囲気が一気に張り詰める。
アーニャ『?空間の緊張感が増しました。敵もいないのに?』
私『空気ってやつ?』
ホワイト「そうですな。2人も帰ってきたことだし、作戦を決行するぞ。」
トーマス「そのことですけど!」
バッツ「リナさんを俺達の所に組み込んではどうでしょう?」
ホワイト「ダイアーさんを女性救出隊に組み込むのか?」
トーマス達はウンウン頷いている。
私「何の話ですか?」『あ、今さっき王宮の方へ連れて行かれてた女性の列を見たな。』
ホワイトさんと目が合う。メガネ越しでもその眼光の鋭さに圧倒される。
私『うへー、私の苦手な人だー。』
芯の強い人は私のような社会不適合者はあまり受け入れられないだろう。
ゲテモノは大丈夫だし、同性愛者だし、初対面の人にはなかなか打ち解けられないし……
ホワイト「これから俺たちは女性救出に向かう。作戦の成功する見込みを少しでも上げるために、君にも協力してほしい。」
私『チラチラ見てたのはそういうことか。』
アーニャ『危険では?』「作戦概要の説明を求めます。」
トーマス「女性たちの警備を減らすために俺たちで陽動を行う。」
バッツ「その間に本隊が女性たちを救出する。」
ダイアー「ようはオトリです。」
私「ソレってだいぶ危険じゃない。」
アーニャ『断りましょう。』
私は答えに渋った。
魔法、今はヘルメーカーだよりだし、右腕もない。記憶も歯抜けだ。
自分で自分が分からない。
地に足をつけていないような状態だ。
それを、母に会って補おうとしている。腕も記憶も。
アンジェラ「お師匠様がこちらにいらしたら百人力ですね。」
コメット「魔法を使えるやつが一人でも多けりゃ、女性救出作戦は成功しそうだ。」
ホワイト「決死隊になるし、渋るのはわかる。けど、やらなくちゃならない、頼む。」
レジスタンスのリーダー格であろう人に頭を下げられている。私は隣にいるトーマスたちを見た。
トーマス「アンタがいればなぁ。」
バッツ「俺たちもみすみすやられるつもりはないけどな。」
トーマス「大丈夫。リナさんは死んでも守ってやるよ。」
爽やかな青年のウィンクにドキッとする。ヤバい、赤ちゃん欲しいかも。
私「分かったわ。やりましょう。」『これも何かの縁だもの。』
アーニャ『方針、了解しました。やりましょう。』
私はトーマス達に付いて地上に出た。




