エルフの里の魔女達
竹林の道教施設
雪がうっすら積もって白くなった竹林に、
左肩に電子妖精を乗せた黒いロングコートの私と、
派手な色合いのモコモコの金髪ロングの魔女がフラフラしながら足を踏み入れた。
アーニャ「着きました。エルフの里の入り口です!」
ミニエラ「ながかったな、おい。」(ハーハー)
魔女は右手を膝に当てて下を向いて、上がった息を整えている。
私もコートの前を開けて下の黒のボンテージスーツをさらした。
各所に取り付けたミスリルプレートがなかったら、ほぼほぼ露出おじさんスタイルだと自分でも思えた。
私「途中でスレイプニルがエンストしたから仕方ないわよ。」
ミニエラ「あんな人気のないとこでマナ切れとか……もう疲れたぜ。」
地面に向かってメンテナンスがどうのこうのと言っている魔女はさておき、私は監視の虫を探した。
私「フライトの虫は何処だ?」(キョロキョロ)
アーニャ「いませんね。」
ミニエラ「虫?そんなもん、この時期、冬眠してんだろ?」
そう言ってるミニエラの毛量の多いズッシリした前髪にフタホシテントウを見つける。
あ、これかな
(ヒョイ、パク)
ミニエラ&フライト「わっ!食うなよ!」『そんなにうまくねーだろ?!』
……うん、ニガイ。
変な音とともに辺りの景色が歪んでいく。結界が解けたのか?
ミニョーン!
するとそこはエルフの里の入り口で、しんしんと雪が降り積もり、すっかり冬化粧をした背の高い神代の高層ビル群が太くて大きな木と並んでそびえていた。
エルフ達の特徴的な長い耳はイヤーマフに隠れて今は見えない。長時間つけてたら痛そう。
アーニャ『皆さんすっかり冬の装いです。前来たときとは全然、景色が違います。』
私『耳がないと人間と区別がないわ、ホント。』
そして、近くにいたフライトは何やら団体さんの道案内をしているようだった。
そのフライトは手編み(?)の茶色い毛糸マフラーをして、イヤーマフを外している。
人と話をしているからか?耳の先は赤い。寒そう。
私「何してんの?観光のガイド?」
アーニャ『結界で外部との往来がないのに?』
フライト「え?あー、引っ越し手続きの案内。」
その人達には見覚えがあり、一人は私を見て気まずそうに目を逸らした。珍しい顔ぶれに私は歯抜けの記憶からパズルのピースを当てはめるかのように名前あてゲームをしていた。
赤毛のボーイッシュなガンスミスの魔女、ライナー。
焦げ茶のポニーテールの巨乳、仕立て屋の魔女、クチーテァ。
ドワーフの中年男性は……確か、ホルド?口の周りのモサッとしたヒゲ面はどこか見覚えがあるような、ないような。(ニャ~ン)
みんなが冬の装いだと言うのに。1人だけ場違いな魔女がいた。
銀髪のセミロングの大きな血のシミがついた仕事着の魔女、リュプケ。薄着で大丈夫か?
ライナー「あ!リナじゃん、どうしてここに?」
人を指さすな……
リュプケ「あ、ホントだ。」
私「みんなこそ、どうして?」
ミニエラ「なんだ?魔女ばっかり。知り合いか?」
私「ええ。」
私はミニエラの好奇心にちょっと待ってもらって、みんなの経緯を聞いた。
ライナー「ホルドがエレベーター技師に転職するのと同時に、鉱山が魔王に接収されたから、治安が悪化する前に私もついてきたのさ。」
リュプケ「私はついでに一緒に入れてもらったぞ?」
墓荒らしでもするつもりか?このネクロマンサーは。目つきの悪いニヤけた顔からはその真意は読み解くことができない。
私「また会っちゃったね?」
気まずいが声を掛けると、諦めたかのように大きなため息にその胸を揺らした、仕立て屋の魔女が口を開いた。
クチーテァ「彼はあげませんからね?」
私「分かってるって。」
それにつられてホルドも私に挨拶した。
ミニエラ「どうやら落ち着いて、話せる場所に行ったほうがよさそうだな。」
プリム形成クリニック
私「……というわけなの。」
待合室のたくさんのジジババと忙しそうな母プリムに軽く挨拶をして、私達は診察室の奥の居住区画のリビングで互いの近状を話し合った。
ソファがデカくて良かった。みんな座れている。
鉱山組と向かい合って私とミニエラとリュプケが並んで座っている。
リュプケ「おほー、ほほー。」
ネクロマンサーは部屋の隅の本棚にあった母の資料を食い入るように読みあさっている。
ライナー「お前もしつこいよなー、まだ魔王討伐隊してんのかよ。」(ずず……)
呆れたという顔でライナーは眉を上げてコーヒーをすすっている。
ミニエラ「それはそうと、早く私の左手を治してくれよ。」
ホルド夫妻も、特にクチーテァはたくさんの魔女がいることに安心したのかくつろいでいる。
ホルド(ゴニョゴニョ)
キョロキョロしているホルドが何やら隣に座るクチーテァに小さな声で聞いているようだ。
彼女達が安心して暮らせる国にしなければ。私は気持ちを新たにした。
クチーテァ「お母様にはミニエラさんのこと言ったの?」
私「それは、アーニャにた……」
ちょうどそこに、光る猫、私の電子妖精が母に事情を伝えて戻ってきた。ホルドが反応する。
アーニャ「診察が終わったあとに診てくれるそうです。ミニエラさんのこと。」(とことこ)
ピョンと私の左肩に乗る。
ホルド「……アニヤ?」
慌てたクチーテァが転職先の昇降機メンテナンス技師のドワーフに挨拶しに行こうとホルドの手を取って部屋を出ていった。
ミニエラ「何アレ?」
ライナー「アイツラも大変だよなー。」
その時、興奮気味にリュプケが立ち上がり決意表明をした。
リュプケ「決めた!私ここで、医学を学ぶ!」
私「えぇ!?どゆこと?」
リュプケ「プリムさんのとこで助手をやる!」
鼻息荒い銀髪の魔女を見上げる私にミニエラが聞いてきた。
ミニエラ「さすがにただじゃないよな。左手を治す相場っていくらぐらい?」
私「○十万円。」
ミニエラ「えー!そんなに私、金持ってないぞ!」
ここに来る前に、銀行でミニエラのお金を(変装して)下ろそうとしたが既に凍結されたあとだった。
私「じゃあ、ジジババの診察終わるのまだ大分、かかるから、金作にでも行きましょう。」
ミニエラ「うへー、まじかよ。」
ライナー「お、何処行くんだ?ダンジョン?私、新作の試し撃ちしたいんだよね~!」
風の塔
ミニエラ「おい!なんだこりゃ!天機兵じゃん!」
雪が積もった巨大なロボットの残骸を見て何やら金髪ロングの魔女は興奮している。そういえば、ブラックトレインの管理を任されてたな。
私「ミニエラは古代兵器とかに詳しいの?」
ミニエラ「あぁ、ドルガたちと一緒にロボット工学やってたからな!」
また出たよ、知らない魔女の名前だ。
ライナー「それよりも、これ登るのかよ……」
心底うんざりした顔で天高くそびえ立つ風の塔を見上げるライナー。
そこにフライトがやってきて登っても意味ないと告げてきた。
私「は?何で?」
ミニエラ「ダンジョンなんだろ?」
フライト「もうそこはダンジョンじゃ、無くなったんだよ。」
そうなの?
金髪のハーフエルフは人目を気にしているのか何だかソワソワしている。
アーニャ『あ、長老さんの所の孫娘さんとできてましたね。』
そりゃ、女組に声かけてるとこを他の人に見られたくないわな。嫉妬深そうな娘さんだったし、かわいそうな奴。
私「あ、ジャイアントハンターも天機兵も無くなったから?」
頷くイケメン。
ミニエラ「おいおい、私の金は?」
ライナー「どうすんだ、リナ?」
フライト「それなら、もう一箇所この里にはダンジョンになってる区画があるんだ。」
私「そうなの?」
ライナー「この塔みたいなとこ?」
フライト「いいや?今度のとこは大部分が地下に埋まってる。」
ミニエラ「へー、なんかあるかな?」
私「攻略済みのとこ?」
フライト「あんなとこ鉄臭くて、エルフは入らない。ほとんど手がついてないんだ。」
ライナー「やった!神代の銃とかあるかな!?」
ミニエラ「いやいや、なんかの施設だったりして!」
アーニャ『お二人が興奮してますよ?』
私「それなら、そこに潜ろうかな?魔女二人と私がいるんだから余裕でしょ。案内よろ!」
フライト「あ!そうなるよねぇ。」
この期に及んで、人目を気にするな。後で付き合ってる娘さんにする言い訳文でも考えとくんだな。リア充め。
里の隅の地下施設の入り口
フライト「ついたついた。ここさ。」
私「ほんじゃサクッと潜りますか。」
ミニエラ「私は戦略魔法しか使えないぞ?左手ないんだから。」
ライナー「お、それなら私の貸してやるよ。」
ライナーは腰のガンベルトを外してミニエラのモコモココートの上から巻いてやっている。
魔砲のリボルバー、6発装填の銃身の短い奴だ。ミニエラはつやを消した黒い銃を抜いて見ている。
ライナー「人に向けるなよ?」
ミニエラ「護身用、敵に沈黙食らった時には重宝しそう!」
あ、そうかも。(今更)
自身は大口径のロングバレルのゴツいリボルバーを、持っていたガンケースから取り出して腰の後ろに差し込んだ。
銃身熱くなるぞ?やけどしない?
察したライナーは得意げに大丈夫と言う。
ライナー「こいつに装填してるのは氷結魔法の撃てる新作の薬莢なんだ。攻撃力はないけど、当たったらカッチカチだぞ?」
ふーん。
私「製品化したら頂戴よ、それ。」
ライナー「ダ〜メ!ちゃんと買ってくれないと私が困る。」
ミニエラ「よし!行こうぜ!」
私「うん、うん。」
光る電子妖精を先頭に暗闇のダンジョンに入っていく私たち。
ライナー「じゃあな。イケメン。」
フライト「気をつけろよ〜。」
アンタは後ろの鬼の形相の娘に気をつけろ。
続く




