古代兵器 ブラックトレイン
私「あの速さなら、ココに来るのは明日の朝かな。」
甲板上に大型の砲を何門も取り付けてある動く黒い要塞。それを尻目に一足先にオアシスについた私はレジスタンスの本部のある王宮に急いで知らせに行った。
バッツ「移動する長く黒い要塞……。」
トーマス「間違いない古代兵器だ。」
バッツ「またアレと対峙するのか。」
クソデカため息をついた、騎士団の生き残り達は目をつむり天を仰いでいる。攻略、もしくは撃退する対策を考えているのだろうか?
こころなしか、ふたりは震えているようにも見える。
トーマス「…………決死、戦力差がなぁ。」
バッツ「中を制圧するにしても、そこまでたどり着けるかどうか。」
見るからに、その顔は絶望で暗い。
アーニャ『そんなにですか?』
私『さぁ?』
キュオオォォォ!
ドォォォーン!
その時、空を切り裂く音と共に外で大爆発する音がした。
ビリビリ
空気と大地が揺れ、振動で立ってるのもやっとだ。
私「何?」
バッツ「始まった……!」
トーマス「艦砲射撃だ!」
そこへ慌てた様子の兵士が私たちのいる部屋に駆け込んできた。
「伝令!敵の襲撃です!」
トーマス「分かってるよ!」
バッツ「街に被害は?」
「街の外の南の砂丘に着弾!街に被害はありません!」
キュオオオォォォ!
ドバッシャァァァァン!
トーマス「今度のは、オアシスにか?!」
バッツ「湖は街の北だ!」
トーマス「クッソ!」
その後も次々と砲弾は街の外に着弾する。何でこんなことを?
そう思った私にはすぐに理解できた。
アーニャ『見てください、二人の様子が!』
騎士団の生き残り達は身を小さくして床で震えている。顔を床に擦り付けながら、言葉にならない小さな声でブツブツ何かを言っている。
私『精神攻撃?』
アーニャ『砲弾恐怖症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)です。』
とても、軍を指揮できそうにない。
私はどうすればいいかわからずオドオドする兵士の胸ぐらをつかんで怒鳴った。
私「王宮に民間人を避難させなさい!」
「わ、わかりました!」
部屋を出ていく兵士の背中に声を浴びせる。
私「それが済んだら兵を集めて!」
「避難、完了しました!」
コメット「ようやくか、だいぶかかりました。」
その声に私は無言で頷いた。
断続的に続く砲爆撃に民間人も兵士も疲弊、焦燥しきっていた。
王宮の広場で民間人達が身を低くして互いに手を取り合ったり、何かしら神に祈っている。
時折、パニックを起こしたやつが立ち上がって、兵士数名で取り押さえている。
アンジェラ「まずいですね。」
民間人の避難が終わるまで、私と魔法使いの二人は広場の様子を広場に出る通路で見ていた。
そこへ、兵士の一人がコメットに耳打ちしに来た。
コメット「今、正式に我々に指揮権が委ねられました。」
ドオオオォォォン!
(グラグラ)
着弾の瞬間、その場にいた全員の体が宙に浮いた。王宮の建物が揺れる。
アーニャ「近くに着弾。王宮南の堀のすぐそばです。」
ザワザワ
私「落ち着かせて。」
近くにいた兵士に指示を出して浮き足立つ民間人を落ち着かせる、集団パニックは避けなければ。
「はい!」
アンジェラ「一刻も猶予がありません。」
コメット「打って出ますか?」
私「そうね。」
アーニャ「どう攻めます?」
私「隊を少数に分けて、魔法で霧、砂塵を起こして接敵。敵要塞を制圧する。」
アンジェラ「それしかないですよね。」
コメット「やるっきゃない!ですね!」
私「やりましょう。私たちで。」『浮遊もあれば欲しいけど。』
アーニャ『アレを使えるのはエルフくらいです。魔女も使えません。ましてや、人間の魔法使いでは。』
私『無理よねぇ。』
ドオオオォォォン!
「ああ!街に!」
城壁の兵士が外を指差して叫ぶ。
コメット「あいつら、脅しでやってるわけじゃなかったのか?!」
アンジェラ「占領統治のことも考えて街に被害を出してないと思ってました!」
私「壊れた建物がある方が恐怖のリアリティがあるってことよ、見た目に。」
アーニャ『行きましょう。』
私「出陣するわ!」
「え!?降参しないんですか?!隊列は?」
私「団体で固まってたら狙い撃ちされちゃうわよ。散兵で行くしかない。」『これだからペーペーは。』
アンジェラ「馬、ラクダ、騎乗できるのは全部使って!」
コメットは魔法使いの子を捕まえて何か伝えている。
私『あー、煙幕かな?』
「アレの呼称はどうしますか?」
そうねぇ。
私「ブラックトレインとしましょうか。」
冬季の乾燥しきった砂漠に、湖から季節外れの霧が発生する。
ヒュオオォォォ……!
それと同時に砂嵐で一気に視界が悪くなる。
私「さっむ!」
コメット「防寒護符どうぞ。」
私達は馬に騎乗して街の路地で待機していた。
視界が利かない中、王宮の城壁でランプ(?)の光が回っている。
コメット「天候魔法、うまくいったか!」
アンジェラ「戦略魔法クラスの魔法陣、ダイアーさんに習っててよかった。」
標準できないのか、街への砲爆撃も止む。そこへ歩兵が走ってやってきた。
「配置、完了しました。」
私「突撃!」
街の至る所から散兵で兵士達がブラックトレインに向けて走り出す。
砂嵐でもわかるくらいの距離にそれは佇んでいた。
つや消しの黒い装甲、継ぎ目のわからない細い壁のような要塞が前方にあった。
アンジェラ「近い!デカイ!」
コメット「って言ってもまだ数キロはありそうだ!」
2人を先行させる。他の兵士達もブラックトレインに駆けている。
アーニャ『……仕方ないですよ。不可視。』
ビシュゥゥゥン
彼らはおとり。有効打が打てる距離に私が接近できるまでの。
ドドドォーン!
ブラックトレインの上部の連装砲が火を吹く。
キュオオ!
ドォォォン!
ドドオォォォン!
近くを走っていた騎兵が粉微塵になり宙を舞う。
コメット「ひるむな!とりつけ!」
アンジェラ「火球!」
しかし、まだ距離があって魔法使いの火球は届かない!
少々、パニックを起こしてないか?新兵だし仕方ないのか。
私『魔法、効くのかしらアレ?』
アーニャ『多分、対魔法コーティングされてるでしょうね。』
歯抜けの記憶からエルフの里の人型の機械モンスターを思い出す。
あと少し。
私『ジャイアントハンターの射程距離は数百m!』
それ以上は空気の摩擦で距離減衰して、大した威力にならない。
小さい光の矢と違い、ジャイアントハンターの光の矢は空間ごと削り取る性質から空気にも反応するのか有効距離があった。
ブラックトレインの甲板から小さな火が放たれて、先行させた兵士達がバッタバッタとやられている。
アーニャ『近距離火器!』
ドドド!ドド!…………!
甲板上の火器にゴブリン(?)が取り付いている。他のゴブリンや敵兵達は弓でこちらを撃ち下ろしている。
ビシュゥゥゥン
私「そこまでよ!ジャイアントハンター!」
ヴン!
前方の空間が揺らぎ、大型の弓に巨大な光の矢を引き絞った大女が出てくる。
私「撃て!」
ドシュ!
ドォォォン!
音速を突破した光の矢がブラックトレインの装甲にぶち当たる!
土煙を上げてオアシスを目指していたブラックトレインに大穴が開き、その動きを止めた。
私「やった!」
ジャイアントハンターから放たれた光の矢が空間ごとその装甲を削り取ったのだ。
その衝撃で一瞬、ブラックトレインからの攻撃が止む。
コメット「いまだ!突入!」
アンジェラ「一気に制圧するぞ!」
魔法使いや兵士達が大穴から中へとなだれ込んでいく。
私は走る馬の上で立ち上がると、その背を蹴ってブラックトレインのはるか上の甲板上に飛んだ。
アーニャ「高威力ジャンプ!」
私「そんな名前だっけコレ?」
着地した甲板上には何処を向いても敵ばかり。
ゴブリン「ウ、ウホー!」
私「光の矢!」
周囲の空間が揺らぎ、全方位へ光の矢が放たれる!
ドッ!
「ウホ"っ!」
「ぎにぁ!」
「おづっ!」
甲板にいたゴブリンや人間達に光の矢が深々と突き刺さっている。
ブラックトレイン自体には傷がつかない。やはり、魔法コーティングがされているようだ。
私「死ね死ね!」
辺津鏡のリロードタイム中はヘルメーカーの出番だ。私はそれを腰だめで連射した。
ドドドドドド……!
敵の五体の至る所が弾け飛ぶ。防御態勢など無駄だ。鎧など紙切れに等しい。
「うげぇ……」
大量の血を口から止めどなく垂らしていた敵兵が膝を突き倒れる。あらかた片付いたか?
死屍累々(しーん)。
私「さてと。」
シュイイィィィ……ン
チャージショット
ドン!
甲板上の火器を破壊する。
ドグシャァ!
私「わぁ!」(死体ガシッ)
中の何かに引火したのか、思いのほか大爆発する。破片よけにした敵兵の死体が激しく損壊する。
(グチャァ)
私「っぶな!」『きたな!』
アーニャ「アレはやめといたほうがいいですね。」
電子妖精が向いている方向、巨大な連装砲を見やる。
あー、絶対、今の比じゃなさそう。
連装砲に敵兵の死体を詰めているとどこからともなく魔女がやってくる。
戦場に似つかわしくない体のラインを強調している艷やかな赤いドレスの金髪の魔女。
私『うわぉ、スケベー!』
黒褐色の神代の上着、そして黒いボンテージスーツの私とは正反対のピッチリ感だ。
???「また、派手にやったな!見つけたぞ!私のおもちゃに大穴を開けたのはお前だな!」
その金髪の長い髪が砂嵐で舞っている。髪で隠れた顔から青い瞳が怪しく歪んでいる。
?魔王軍のやつか?
アーニャ「そこで止まれ!」
チャ
私はソイツにヘルメーカーを向けた。
ミニエラ「私はミニエラ。これの管理を任されてる。」
私「へー、ボス戦ってわけ?」
ミニエラ「ふん!後はお前だけだぞ!」
え?下の奴らは?
アーニャ「風刃!」
ミニエラ「無駄だ!八卦鏡!」
風の刃はミニエラの直前で空間に飲み込まれるように掻き消える。
私「え!?」『辺津鏡?』
アーニャ「防御魔法!?」
ミニエラ「私の戦略魔法は特殊なんだ。」
そう言うと魔女は胸の前で両手で素早く形を作った。
ミニエラ「そして、使う魔法もな!」
ド!
甲板上の床材が矢のように飛んでくる!
私「うっ!」『ナニコレ!』
アーニャ「ヘイスト!」
間一髪、飛んできた杭(?)を避ける。
ミニエラ「避けたか、並の魔法使いじゃなさそうだな!」
私は連装砲の陰に隠れて魔女と対峙した。
私「魔王なんかに加担して!アナタになんのメリットもないでしょーに!」
ミニエラ「それがあるんだ!私は魔女の中でも爪弾き者だった。そんな私を魔王は要職に採用してくれたんだ!」
アーニャ「実力で排除するしか無さそうです!」
ミニエラ「やってみろ!いくぞ!」
続く




