raining
いい加減、腐ったカレーライスをどうにか処分しなければならなかった。
処罰、投棄、存続。鞭を手にした私には、その皿ごとカチ破るように、カレーの飛沫やら、お百姓様が必死こいて育てたであろう米粒のなれの果てを、顔に腕に浴びるのだった。
だいたい私の感性は常軌を逸している。だから蔑まれる。懐疑的な瞳は、蛇腹なわたしの尾っぽから額までメッタ刺しにしてくれる。
みんな生きて、みんな泣く。
それは分かっている。
でもいがみ合って、すれ違って、他人の涙の、ひとつぶの重さを私は知らない。
同様に、私の涙のひとつぶも、なんだか意味を成さないものに思える。
閃光。有無を言わさない強いしなやかな光が、私の瞳に入ってくると、私は無色透明の液体をぼろぼろと零した。頬骨を伝い、唇をかすめながら、歯に、舌に覆いかぶさって、あの味が(腐敗したカレーライスか。)を想起するような、しょっぱさに苛まれた。液体は食道を通り、臓器を突き破って心臓の心室の戸を叩き破る。空から、赤い雨が降る、降る、降る。少し透明で、マーブル模様みたいな雨粒が、いろんな形の、いろんな人間の、痛みという痛みが雨になって降っていた。
洗濯物をしまわなければと思った。
私は足早に、自宅に戻ろうとした。そうだ、家には誰もいなくて、お気に入りのワンピースなんか、
明日着ようと思っていたのに、濡れては困る。あの白いワンピースが、マーブルの赤色に染まったら困ってしまう。
玄関の鍵を乱暴に開けて、私は22段ある階段をドタドタと音を立ててのぼった。
バッグをほおり投げ、窓の二重ロックをはずして、おもてに出る。
果たしてワンピースはまっしろだった。
他の衣類も慌てて取り込んだけれど、いただいたバラのハンカチも、家族皆が使う洗面のタオルも、一滴として液体を含んでいないのだった。




