表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/67

5.鑑定

「真っ白だ」


 京の言葉に、鏡花は顔を上げる。廊下も明るかったが、この部屋は白い石が光を反射し、更に明るく感じた。


「……眩しい」


 目の奥が痛みそうな明るさだったが、鏡花以外の三人は平気なようで、興味深そうに部屋を見渡した。


「なんというか、ギリシャっぽい」

「プロスタイル形式だな」

「御門くんは物知りだね」

「ギリシャ神話と医学は関わりがある」


 プロスタイルとは、前柱式ともいう、正面に4本の柱を建てる形式の神殿である。柱が建っている以外は、平面で構成されている。


 御門の説明を聞ききながら、部屋の奥へと目を向けると。祭壇らしき場所に白いローブを着た人物と、高校生四人組が立っていた。


「あれは……」

「あ。制服、懐かしいなぁ」


 鏡花たちが高校時代の思い出話に花を咲かせる暇もなく、セーラー服の少女が祭壇の上、水晶玉の前に誘導された。


「この水晶の上に手を置いてください」


「こう、ですか?」


 白ローブの人物は、少女が水晶に触れると、背丈ほどある杖を構えて、コツン、と杖先を水晶玉に押し当てた。


『神に与えられし力を示したまえ』


 聞き取りにくい、エコーが掛かったような声でそう言うと、一瞬、水晶玉が白く光った。少し間を開けて、水晶の中に文字がじわじわ、浮かび始める。

 水晶は西瓜程度の大きさがあるが、距離の離れた鏡花たちには内容が読めない。


「これは……」

「やはり聖女か」


 しかし、一拍遅れて湧き上がった歓声に、彼らの求めていた結果だったのだろうと、鏡花たちは理解した。


「スキルは……、【博愛】と【信仰】。どちらも美徳スキルですので、文句なしの大聖女かと」


「スキル、って、何ですか……?」


「ああ、心配しないでほしい、聖女殿。スキルは神から与えられた力で、選ばれた者しか持っていないものだ」


 あちらの見窄らしい女とは違って、選ばれた君に相応しい。派手男は一々鏡花を扱き下ろさねば気が済まないらしい。


 黙って聞いていれば解決するなら、どうでもいい。鏡花は小さく溜息を吐いた。


「スキルは魔力を使わず、魔法と同等、或いはそれ以上の力を発揮できる、素晴らしいものだ」


 異世界から来たものは、この世界の者とは違い魔力を扱うことができない。その代わりに、感情の力をスキルという形で扱えるようになるのだという。


 魔力操作に適した器官があるのか、と御門が小さく呟くと、京が無言で首を横に振った。違いが気になっても、絶対に実験しないでほしい。


 そんなことを考えている間にも、白ローブによるスキルの説明は続く。


「【博愛】スキルは治癒魔法の強化版で、重症のものも一瞬で完治する力があります。勿論、毒や麻痺といった状態異常も治療する力があります」


 完全な回復役ヒーラーである。即死さえしなければ、幾らでも回復できる能力は、戦いにおいて大きな助けになるだろう。


「【信仰】スキルは浄化や祝福の効果があります。魔王を倒すために必須のスキルですので、このスキルを持っている方を聖女と呼びます」


 聖女に必要な【信仰】だけでなく、回復ができる【博愛】を持っているので大聖女という肩書きになるらしい。


「どちらのスキルも、魔王討伐において大きな力となるでしょう」


 白ローブはそう締めくくり、残った男子三人にも水晶に触れるよう指示を出した。


「おお……、素晴らしい……!!」


 結果、一番爽やかそうな男子のスキルが【正義】と【希望】。【正義】は、聖なる光で敵を薙ぎ払う強力な攻撃をする、聖剣のスキル。【希望】は自身の体力を大幅に回復する不屈のスキルだ。

 クラスでも中心そうにいそうな彼が、勇者の肩書きを手に入れた。


「勇者はスキル二つ持ちの大勇者。賢者と聖騎士も【美徳】スキルだ。これは決まりだな」


 メガネをかけている男子のスキルが【知恵】と【節制】。異世界人には扱えないはずの魔力を扱えるようになり、更に魔力消費を抑えるスキル。


 体格のいい男の子のスキルは【堅固】一つだったが、周囲に防御壁を展開するだけでなく、身体を硬化させるという防御スキルの中でも最強のものらしい。


 白ローブの説明も、派手男の言葉も、興奮からか声は上擦り早口気味だ。


 ひとしきり盛り上がったところで、派手男は思い出した、という風に部屋の入り口、鏡花達を見た。


「お前達は……、最早必要もないが、念のため、鑑定だけはしておくか」


 早く来い、と派手男は、視線だけで指示を出した。既に聖女と勇者は決まっているので、鏡花たちは大して価値がないのだ。


 だから、丁寧に扱う必要もない。


「勇者達の役に立つなら、旅に同行させても良いのでは?」


「期待はするまい。おい、女、手を置け」


 だから、鏡花が祈るのは、使えないスキルであることだ。戦えず、支援もできず、旅に出ても役に立たないので元の世界に帰ることになるような、そんなスキル。


 たとえ、希望もなく、疲労を溜め、心労を蓄積し、ただ働くだけだとしても。


 病の父を支えられるのは、ただ一人の家族である、鏡花だけなのだから。


 だから、どうか。スキルなど無くていいから、帰らせてほしい。


 そう願いながら、触れた水晶は辺りの光を飲み込むような、黒い光を放ち。


「……【嫉妬】に、【無感動】?」


 おどろおどろしい字体で、二つのスキルを示したのだった。


次回以降、毎週金曜21時更新となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ