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【第44話:牙と森】

斧が火花を散らし、咆哮が森を震わせる。

獣人たちの突撃に対し、クロナ率いる森の一団は怯まず応戦していた。


「弓隊、第二陣は左翼へ回れ!」


クロナの声が森に響き渡る。

伏兵、分断、そして包囲。地の利を活かした戦術が、ゴブリンたちを“狩られる側”から“狩る側”へと変貌させていた。


「クロナ様、右翼に新たな敵影! 獣人の突撃隊です!」


「迎え撃て! 地形を利用しろ!」


報告と同時に、地を駆ける獣の群れが現れる。

狼や豹、熊の姿を思わせる獣人たち――その鋭い牙と爪に、森が悲鳴を上げる。


クロナは自然の力を解放し、足元の地面を隆起させて跳躍、空から戦場を見下ろす。


「……ここだ!」


彼の指先が示した一点から、蔦が地を割ってうねり、獣人の足元を絡めとる。

その隙を突き、ゴブリンの戦士たちが槍を突き立てた。


だが、獣人の勢いは止まらない。

分厚い筋肉に包まれた獣の一体が、クロナに狙いを定め突進する。


「うおおおおッ!」


「させるか!」


ティナの矢が獣人の肩口に突き刺さる。

その動きが鈍った瞬間、クロナの槍が一閃し、敵を地に伏せさせた。


「ティナ!」


「平気、まだいける」


ティナは息を整え、再び矢をつがえる。

だが、敵陣の奥から、ひときわ異質な気配が迫ってきた。


「ティナ……いたな。ようやく見つけたぞ……裏切り者の娘」


その声に、ティナの表情が凍りついた。


「……クロナ、少しだけ、時間を稼いで」


ティナの声は震えていたが、目は決意に満ちていた。


「任せろ」


クロナは自然の気を集め、森の力を一点に凝縮する。

彼の背後から生い茂った木々がざわめき、風が唸る。


そして、獣人の大軍に対し、再び咆哮のような命令が響いた。


「かかれ――奴らを、この森から追い出せ!」

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