表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱から始めるゴブリン成り上がり譚 〜進化する俺はもう雑魚とは呼ばせない〜  作者: AI+


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

290/334

【第289話:禁忌、解放】

 世界が、鳴った。


 それは爆音でも衝撃でもない。

 法則そのものが軋む音だった。


「――は?」


 ヴァル=グラドが、初めて間の抜けた声を漏らす。


 虚蝕域が広がり切る直前。

 ルーニーは杖を掲げもせず、ただ――指を鳴らした。


「……やれやれ」


 軽い調子の声。

 だが、その瞬間、周囲の魔力の流れが逆転した。


 吸われていたはずの魔力が、今度は吐き出される。

 空間が、悲鳴を上げる。


「禁じ手ってさ」


 ルーニーは一歩、前へ出る。


「使うと面倒なんだよ。後処理が」


 その足元から、光でも闇でもない“何か”が広がった。


 術式ではない。

 魔法陣でもない。


 数式のような線が、空間に直接刻まれていく。


「な……」


 ヴァル=グラドが、明確に後退する。


「それは……魔術ではない」


「そりゃそうだろ」


 ルーニーは肩をすくめる。


「魔術は“世界を使う”もんだ」


 線が、絡み合い、立体を形作る。


「これは――」


 次の瞬間。


 虚蝕域が、止まった。


 侵食でも、相殺でもない。

 ただ、そこだけが――計算外として固定された。


「……俺が嫌いなやつだ」


 ルーニーの声が、少しだけ低くなる。


「世界を信用しないやり方」


 空間に刻まれた数式が、一斉に輝いた。


「禁じ手【原式展開オリジン・フォールド】」


 ――爆ぜた。


 音もなく、光もなく。

 だが確実に。


 虚蝕域が、折り畳まれた。


「馬鹿な……!」


 ヴァル=グラドが叫ぶ。


「成立を否定する領域を、どうして……!」


「否定してないよ」


 ルーニーは、笑った。


「参照してないだけ」


 折り畳まれた空間が、圧縮され、

 黒紫の魔力ごと――一点に封じ込められる。


 大地が沈み、空気が震える。


 その中心に、ルーニーは立っていた。


「俺はさ」


 額から血が一筋、流れる。


「世界を前提にしない魔術が嫌いなんだ」


 息が、少し荒い。


「だってそれ、魔術師じゃなくなるから」


 それでも、杖は下ろさない。


「でも――」


 視線が、遠く、戦場の奥を向く。


(クロナ様が前に立つなら)


(後ろは、俺が壊れる番だ)


 圧縮された虚蝕域が、悲鳴のような音を立てる。


「く……っ」


 ヴァル=グラドが、片膝をついた。


「この私が……術式ではない力に……!」


「勘違いすんなよ」


 ルーニーは、ふっと息を吐く。


「これ、勝ち技じゃない」


 数式が、さらに輝く。


「時間稼ぎだ」


 その瞬間、

 封じられた虚蝕域が、内部から暴れ始めた。


 空間が、再び軋む。


「……やっぱ一回限界か」


 ルーニーは苦笑し、膝をつく。


 視界が、揺れる。


 だが――戦況は、確実に変わった。


 ヴァル=グラドは、立ち上がれない。

 腐界魔術は、完全に止まっている。


「……覚えておけ、魔術師」


 魔将が、低く言う。


「貴様は――危険だ」


「ありがと」


 ルーニーは、軽く手を振った。


「褒め言葉だ」


 次の瞬間、数式が砕け散り、

 封印は限界を迎える。


 だがその“猶予”は――

 仲間にとって、十分すぎる時間だった。


 ルーニーは、倒れ込む直前、心の中でだけ呟く。


(役目は果たしましたよ、クロナ様)


(後は――お願いします)


 禁忌は解かれ、

 戦場は、次の局面へと押し出されていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ