表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

196/281

【第195話:黒核の案内、川底の門】

西の川は、夜の冷たい光を映していた。


クロナは川辺に降り立ち、水面にそっと手を触れた。

黒核が脈打つ。

川底のもっと奥……“底の下”に、気配が沈んでいる。


「……ここだ」


ティナが横で息を呑む。


「川底に“門”があるというのですか」


「正確には……川底そのものが『蓋』になってる。隠すための蓋だ」


イエガンは河原の石を蹴り飛ばした。


「臆病なやつほどこういう場所に潜る。閉じたまま外を見張る。そういうタイプだな」


クロナはゆっくり立ち上がり、黒翼を広げる。

黒核に意識を集中させると、脈動が水面に触れ、微かな色の揺らぎが走る。


その揺らぎは、渦のような模様に形を変え――

川底の石が、一枚ずつ外へ押し出されるようにずれていく。


まるで巨大な鍵が開いていくように。


「……見えた」


クロナは低く呟いた。


そこには、黒く縦に裂けた穴があった。

水の下ではない。

川の“内側”のさらに奥へ向かう、異様な暗い通路。


ティナは慎重にクロナへ視線を向ける。


「クロナ様。この先には……従来の影とは違う、異質な匂いがあります」


「わかってる。幼体を喰った時、少しだけ感じた。

 あいつら自身が“素材”みたいな作りの存在だ。俺たちとは違う」


イエガンは剣を背へ戻した。


「戻れない道なら、なおさら行く。

 群れを守る牙は、主人の背中にあるもんだ」


クロナは薄く笑い、翼をたたんだ。

そして通路へ足を踏み入れる。


薄暗い道は、川の水音がどんどん消えていき、

ただ、低い重い呼吸のような響きだけが残っていく。


黒核が静かに脈動し続ける。


ここから先は伺われている。

こちらの癖も、戦い方も、全部“観察”されながら進む道だ。


だが――

それでも進む。


「行こう。ここから本物の勝負だ」


クロナの言葉と共に、

黒い通路はさらに深く、その奥へ続いていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ