表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

191/290

【第190話:黒核、狩猟の胎動】

 牙部隊の第一防衛線。

 クロナはそこへ出ると、地面へ指を触れた。


 黒核が脈打つ。

 世界の“流れ”を狩猟者の視界へ変換する。


 影。灰。侵食。

 第三系統の異物は、この世界の概念にも完全には同化できていない。

 だからこそ、違和感として浮く。


 黒核はその“ズレ”を嗅ぎ取る。


「……いたな。侵攻の起点」


 ティナが横で静かに問いかける。


「クロナ様、どちらの方向でしょうか」


「南東。森の奥の……崩れた祭壇跡だ」


 イエガンの顔が僅かに強張る。


「そこは封鎖したはず……。誰も触れられないようにしていた領域です」


「触れたんだろ。俺らじゃねぇ“外側の何か”がな」


 黒核がひときわ強く鳴った。

 それは「喰える」と告げる胎動。

 クロナにとって、それだけで十分だった。


「行くぞ。ここからは狩りだ」


 黒翼をひとはばたきさせる。

 風が裂け、木々の葉が吹き散る。


 ティナは影を纏い、一歩後ろから付く。

 黒の王に狩りをさせるとき、彼女は攪乱ではなく“支点”として動く。


「クロナ様。この第三影……この世界に“根”を持ってはいないように思えます」


「だから喰いやすい。

 逆に言えば、こっちに根付いたら最悪だ」


 地を蹴るたび、黒核が膨張するように鼓動する。

 それは獣が獲物の匂いに舌を鳴らす本能と、ほとんど同一の衝動。


 喰らえば発展する。

 だが、今回喰らうべきは“影”そのものではない。


 ――侵食している“基点”だ。


 それを喰えば、枝葉は崩れる。

 第三の影は、侵入経路ごと断たれる。


 黒核はそれを求める。

 もっと深い“源”を喰わせろと。


「……待っていろよ。外側のやつ」


「俺が先に見つけて、喰ってやる」


 その言葉と同時に、森の濃度が変わる。


 瘴気の密度が跳ね上がる。


 見えた。

 黒の裂け目。

 世界の皮膜がわずかに破れ、そこに“別の夜”が滲み込んでいる。


 ティナが息を呑む。


「クロナ様……あれは境界の外――!」


「分かってる」


 クロナは黒翼を広げ、裂け目の真上へと飛び込む。


 黒核が、音を立てて牙を剥いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ