第五話 子供の為に捨てれる程度のプライドならそんなものは捨てておしまい!
「え? 冒険者!? Sランク!? どうしてこんな所に!?」
え? なんでなんで? なんでこんな所に急に現れるの!?
突然やってきてバンバンバンバンとんでもない事ばっかりし始めていきなりすぎて対応できないよ!
これはどういう采配ですか女神様!?
私は一体どうしたらいいの!?
「冒険者ギルドより近辺にキングオークが出現したから討伐してほしいと頼まれました。なので被害の相談や弁償に関しては全部冒険者ギルドにお願いします。それじゃあ」
ペコリと頭を下げて去っていこうとするスィアと呼ばれていた銀髪の女の子の腕をガシっと掴んで引き止める。
「ま、まってまって! お願い、ちょっと待って!」
「はい。ちょっと待ちます」
スィアは足を止めて再びこちらに振り返った。
なんだ教育の行き届いた素直ないい子じゃない!
Sランクだけあってきっと立派な親御さんに育てられたんだね!
えーと、とにかくあれだ。私がさっきまでしようとしてたのはなんだ……。
アイサちゃんを助ける!
そうだそうだ、衝撃的な出来事の連続で忘れるところだった。
助けるためにはなんだ。えーとえーと、どうしたら助けて貰えるんだ!
どこから説明したものか。っていうか、こんな女の子達に頼んで助けてもらっていいのか?
だってどうみても私より年下の女の子達だし、私だってこれでも大人だし、年下の女の子に助けてなんて言っていいのか。いやでもこの子たちが強いのはさっき目の前でみてるし、アイサちゃんの事だってあるし、もうそんなこと言ってる場合じゃないような気もするし
「はい。ちょっと待ちました。それじゃあ、これで」
「ストーップ! 言うこと素直に受け止めすぎー! まだ何も言ってないから! もうちょっと待って!」
引き返そうとするスィアの腕をもう一度捕まえて引き止める。
何この変わった子! 待ってって言ったら普通は相手の用件聞くまで待つのが普通でしょ!
まったくどんな教育受けてきたんだか! 親の顔が見てみたいよ!
などと考えながら話を続けようと口を開くと、どこからか男の声が聞こえてきた。
「ハハハ、いや悪いね。冒険者さん方。ウチのモンが迷惑かけちまったみたいでよ」
それはヒゲ男の声だった。
目を向けると森の中からヒゲ男とフードを被った二人組がこちらに向かって歩いてきていた。
あのヒゲ! 守るって言ってて我先にと逃げ出した奴らがどの面下げて戻ってきたんだ! それでウチの奴って何いってんだよ! もうなりふりなんて構ってられない!
アイサちゃんを守るため! 強い人なら子供にだって助けて貰わなくちゃ!
「あ、あの! 私達この人に誘拐されそうなんです!」
「お、おいおい、ホルス嬢ちゃん! 何バカな事言ってんだ! まってくれ、冒険者のお嬢さん方! オレ達はそんな奴じゃねぇ! 誘拐だなんて人聞きの悪いことしちゃいねぇよ!」
「だまらっしゃい、この悪人ヒゲ! お願いです! 信じてください! 私達この人に騙されて連れていかれそうなんです! これはもう誘拐です誘拐!」
スィアの手を取ってその目を見て必死に訴えかける。
空色の綺麗な瞳は何度見ても美しいし、その顔は何度見ても可愛い。
こんなにかわいい美少女なら心だってきっと優しいに決まってる! 必死に頼めば絶対に助けてくれるはず! しかも冒険者でSランクなんだもん! 困ってる人をみたら放ってなんかおけないよね!
スィアはちょっとだけ考えた後、こちらの顔を見直した。
「えっと、そういったご相談は冒険者ギルドの窓口までお願いいたします」
業務対応ー! これがSランクの冒険者のいう事なの!? 逆にこういう事が言えるからSランクなの!?
「ハハハ。手間とらせてすまねぇ、冒険者の嬢ちゃん。いや、実はオレはある場所までこいつら護送してる途中でな。こいつらちょっとワケありでよ。今日見たことは誰にも言わねぇで帰ってくれねぇか?」
「そうですか。それじゃあ」
「待ってー! おかしいって、それはおかしいよ! 普通誘拐されてるっていう女の人よりヒゲの怪しいオジサン信じる!? ちょっと冷たすぎない!?」
「でも、相手の見た目に騙されて油断しちゃいけないってギルドマスターが言ってました。やっぱりお姉さんでもオジサンも同じ位に信じるべきかなって」
「それって魔物と戦う時の話じゃない!? 信用ってそういうのじゃなくない!?」
女神様ー! 奇跡で助けをよこすならもう少し一般常識のある子をよこしてー! ピンチに戻ってるー! あーもう、なんとかしないと!
一生懸命に頭をひねっていると後ろからチアツィと呼ばれていた猫耳の子が前に出てきた。
「ちょっと待って、スィア。仮に誘拐されようとしてるならアタシは見過ごすなんて気分が悪いね。証拠を見て判断しようぜ」
なにこの猫耳の子! 口調がぶっきらぼうなだけで常識人!?
そうか女神様! ホントの助けはこの子だったんですね!
お口がちょっと悪いくらいなんですか。猫耳も尻尾も顔も超かわいいし、おまけに気もきくなんて最高じゃないですか! もう一日中頭を撫でまわしたい!
「あぁ、証拠な。まってな、いま見せてやっからよ」
「あっ。ちょ、ちょちょ、それ見せるのまってください!」
そうだった! この男何か秘密の書類を持ってるんだった! なんかよく分からないけどそれ見せられたら説得されちゃう!
「あの、その男の人が出すのは偽物のなにかですから! この人たちはホントに悪い人なんです!」
「ハハハ、ダメだぜ、ホルス嬢ちゃん。これにはオレ達が誰の使いで来てるかしっかりと……、ん? あれ……? あれっ!? あれぇっ!?」
懐を探っていた男が素っ頓狂な声を上げて全身を探し始める。
その様子はあったはずのものがなくなって焦っているベタな様子だ! しめた!
「チッ……! さっき森に逃げた時に落としやがったか……! いや、違うんだ、冒険者の嬢ちゃんたち! さっきまではここにあったんだけどよぉ!」
「ざまぁみろですよ! ドジヒゲオジサン! 悪い事ばっかりしてるから女神様が天罰下したんです! さぁこれで私達の事を信じてくれますよね!」
チアツィは顎に手をあてて小さくうなずくと真っ赤な瞳をこちらに向けてきた。かわいい。
「それで誘拐されてるって証拠は?」
「エッ?」
誘拐されてるって、証拠?
誘拐されてる証拠ってなに? これから私誘拐されますって看板とか? 私が商品でその引き渡しの契約書とか? 私が今誘拐されてますって身分証明しろってこと?
「ちょっと待って! 誘拐されてる証拠ってなに!? 私は何をだせば誘拐されてる証拠になるの!?」
「そうか……。そうなると、どっちかだけ信じてあげたら不公平だもんな。冒険者ギルドの窓口までどうぞ」
「また業務対応! この世に人情ってないの!?」
「アハハー。それじゃあさー、こういうのはどうー?」
次に前に出てきたのはルイダと呼ばれていたエルフの子。
エルフには初めて会ったけど、エルフってすごく頭のいい種族ってイメージあるし、この子ならきっとすごくいい提案してくれるに違いないよ! 今度こそお願いしますよ女神様!
ルイダは人差し指を立ててニコニコ楽しそうに話しはじめる。かわいい。
「二人にどうしてここにいるのか話してもらってー、信じられる方を信じるってことでー」
「はっ! はいはーい! 私が先に説明します!」
ナイス提案だ! 向こうは悪人のヒゲオジサン! まともな理由なんて話せるわけがない! こうなればこっちに分がある! 正直に話せばきっと分かってくれるはず! 女神様、私に説明する力を!
「えっと、私がなんでここにいるのかと申し上げますとですね。えーっとですね、今朝街を歩いていたら知らないオジサンにギャンブルに誘われまして初めのうちは絶好調で大勝していたんですけども、そこで話しかけてきた商人さんからお金を預かって代わりにギャンブルをした所、大負けして商人さんの借金の代わりに連れていかれることになりまして……、それでこのヒゲオジサン達に連れられて今ここに至る……、っていう……」
冷静に考えてこれ聞いて誘拐信じられる要素ってないな。誘拐されてるっていうか自分で背負った借金のカタに連れていかれてるだけだし。これって完全に自業自得じゃない?
「ホルスさん……。私が聞いた話は……」
ハッとして振り返るとアイサちゃんが口を開いて絶句していた!
しまった! アイサちゃんにはもっといいように言ってたんだった! やらかした!
「ち、ちがうの、アイサちゃん! えっと、この事情は……! あのー……! そのー……!」
「あれー、なんだか一気に胡散臭くなっちゃったねー?」
あーもう女神様! これが見栄を張った天罰ですか!? だとしてら今じゃなくてもいいじゃないですか! なんで今なんですか!
「ハハハ。無理すんなよ、ホルス嬢ちゃん。そんな嘘じゃSランクの冒険者様方は騙せやしねぇぜ」
ハァ!? 誰が嘘だって!? 今のは全部正直に言ったし! アイサちゃんにはちょっと誇張と削減を繰り返して伝えてただけで嘘は言ってなかったもん! たぶん!
睨みつけた先のヒゲ男はニヤニヤと口元を歪めながら話を続ける。
「あー、さっきの話は半分だけホントでな。この女達は町で悪さしてた小狡い女詐欺師達でね。正確にいえばこいつのは借金じゃなくて、こいつがさる貴族様をこの色気で誑かして騙し取った金の事なんだよ。この体みたらどうやったかなんて嬢ちゃん達でも分かるだろ? それでオレ達はそのさる貴族様から依頼されてこいつらを捕まえて連れ帰るところってわけだ。証拠にその貴族様からのちゃんとした依頼の紙も、あった。あったんだが……、森に落としてきちまった。でも、この話で分かるだろ? それで納得してもらえねぇか?」
ハァー!? 誰がいつどこで色気で人を誑かしたって!? 私の体は清廉潔白! 生まれてこのかたずっーと清いままですが! 嘘八百並べ立ておって、この汚いヒゲオジめ!
「嘘! 嘘です! 今のヒゲオジサンの話は全部嘘! こんな人信じちゃダメです! 私は冒険者ギルドだってどこだって色気で人をたぶらかした事なんて一度もありませんから! 私こうみえても神官なんですから!」
「おいおい、往生際が悪いぜ、ホルス嬢ちゃん。いい加減に観念しなよ。とにかくホルス嬢ちゃんはオレが連れて行くぜ。アンタらも金も貰ってねぇのにわざわざ面倒な事することねぇさ。この嬢ちゃん達はオレ達に任せなよ」
「うーん、どっちの事も信じられないかなー。じゃあーここは冒険者ギルドの窓口にー」
「また窓口! 窓口に行けるならこんなとこでこんな言い合いしてないよ! もっと人情味に溢れてすぐに頼れるご相談先はありませんか!」
「アハハー、人情味に溢れるかは分からないけどー、すぐに頼れるご相談先はもう一人だけだねー」
ルイダはアハハーと笑いながら四人いた子の最後の一人、大きな杖を持った女の子のソシィの方へと振り返った。
「ねぇ、ソシィー。ソシィは二人のどっちを信じるかいいアイディアあるー?」
「私ですか? うーん……」
ルイダに尋ねられたソシィはほっぺにムニュッと指を当てて小首をかしげる。かわいい。
この子ならきっといいアイディア出してくれるに違いない! だって杖を持ってる魔法使いなんだよ! 絶対頭いいし何かしら心得てそうだもんね! 頼むよ女神様! 今度こそ私達に救いの手を!
「じゃあそこの馬車で送ってくれる方で……」
体力が無かった……!
人情味に溢れるっていうか、疲労の感情が溢れ出してる……!
そうだよね。さっきまで息切れしながらもみんなに言われて頑張ってたもんね……!
あーでも、どうしよう! 私馬なんて乗ったことないよ! テキトーに頭とか撫でたらいけるか!? いけるよね!? 愛があれば大丈夫だよね! もう嘘とかホントとかなりふり構ってられないし! 後は頼んだよ女神様!
「あ、あの! 私! 私はお父さんに乗馬を何回か教えて貰ったことあるので! で、出来ると思います! みなさんのこと町まで送れます!」
その声はアイサちゃんのものだった。
ピンと片腕を伸ばしたアイサちゃんが私とヒゲ男の隣に並んで必死にアピールしている。
もうアイサちゃんすごい! 天才! お父さんに代わって今すぐ抱きしめてあげたい!
お父さんが愛人作って亡くなってその上に借金とかいう最悪の状況なのに、それにも負けず必死に頑張ってるアイサちゃんは今この瞬間、世界の誰よりも立派です! 女神様! この子の残りの人生にありったけの幸せをあげてください!
「私も! 私もアイサちゃん手伝います! 私は乗馬なんてしたことないですけど……。私も頑張りますから! だ、だからどうか私達を信じて助けて下さい!」
アイサちゃんと一緒に大きく手を上げる。
ホントに力になれるかは怪しいけれど!
それでもせめてアイサちゃんの味方ではありたいから! 女神様! 力を貸して!
すると、隣にいたヒゲ男はそんな私達二人の事をせせら笑った。
「ククク。アホな嬢ちゃん達だな。馬なんてオレ達は戦場でアホ程乗り回して来たんだせ。そんなガキと女に任せるよりよっぽど安全に送り届けてやるぜ。第一その馬車はオレ達が使ってたんだぜ。勝手に嬢ちゃん達が使っていいわけねぇだろ! そんな簡単な常識も分かんねぇのか? バカな嬢ちゃん達だぜ! ブワハハハ!」
ヒゲ男はこらえきれなくなったのか腹を抱えて大笑いを始める。
ヒゲ男の言葉に私は……、グゥの音もでない。
隣のアイサちゃんもすっかり縮こまって押し黙ってしまう。
そりゃそうですよ、ヒゲ男の言う通りですね。
でもさ、子供が頑張って声あげてるのにそんな事いうのはなくない?
そりゃあ、正論いったらそうなりますけどね。
確かに馬車は私達のものじゃないですね。馬車操るのあなた達の方がきっとうまいんでしょうね! 子供と乗ったことない人に任せるよりも安心なんでしょうね!
分かってますよ! そんなに都合よく物事がうまくいくほど甘くないってことはもうここまでの経験でさんざん分からされてますよ!
でもさぁ!
泣きたくなるなるほど辛い思いしてる子が頑張って声だしたんだよ!?
それで助けて貰えないだなんて。
そんなのさ……!
そんなの絶対おかしいよ!
「まぁ、これで決まりだな。馬車はオレ達が使う。行先は町じゃなくてオレ達の取引先になっちまうけどな。まぁ、アンタらの事は手厚く歓迎してもらえるように伝えておくからそれで勘弁してくれ。さっ、とっとと嬢ちゃん達も乗って―――」
「ホ、ホルスさん!?」
膝をついて地面に額を擦りつける。
「Sランクパーティーの皆様! どうか! この子だけでも連れて行ってあげてください! 私の事は信じられなくてもいいですから! どうかこの子だけは助けてあげてください! お願いします! お願いしますっ!!」
何度も何度も、何度だって頭を下げよう。信じてくれるまで。
人間、必死で真剣に頼めば必ず思いは伝わるはず。
これ以上アイサちゃんに悲しい思いなんてさせたくない。
女神様、一生で一度のお願いです。
私はどうなってもいいですから、どうか、どうかアイサちゃんだけは助けてあげてください。
「お願いします! この子だけは助けてあげてください! お願いします!」
「ホルスさん……! もう、もういいです……! もういいですから……!」
「あー……、やめなよ嬢ちゃん。みっともねぇなぁ。冒険者の嬢ちゃん達も騙されちゃいけねぇぜ。これはこういう詐欺師のいつもの手なんだ。こうやって情にほだされて騙された男たちをオレは今まで何人も見てきた……。アンタらもこれに騙されたら破滅させられるぜ! おら、立ちな嬢ちゃん! さっさといくぞ!」
ヒゲ男に肩を掴まれても構わずに頭を下げ続ける。
私は絶対に信じてくれるまで絶対にあきらめない!
アイサちゃんのこと助けてくれるまで絶対動かない!
肩を掴んで力づくで起こそうとするヒゲ男に抵抗して、体重をかけて全力で頭を下げ続ける。
「お、お、お゛~! お゛ね゛か゛い゛し゛ま゛す゛~~!!」
「グギギ……! この嬢ちゃん無駄に体重が重い……!!」
女神様っ!!! このヒゲに特大の天罰をっ!!! 地獄に落ちろっ!!!
「このっ、いい加減にしろっ!」
「キャッ!」
ヒゲ男の全力に引っ張られてさすがに耐え切れずに起こされる。
一瞬みえたヒゲ男の表情は背筋が震えた。
目はきつく吊り上がり薄茶色の歯をむき出しにした、怒り狂った獣のような形相。
ゴブリンのような魔物やリーダーや戦士のようなただのスケベ男なんかの比じゃない。
凶悪な殺意を向けてくる恐ろしい化け物の顔がそこにあった。
激怒したヒゲ男は私の顔を殴ろうと拳を固めた振り上げる。
殴られる、そう思って歯を食いしばって目を瞑り身構えた。
「ちょっと待って」
スィアの凛とした声が響いた。
ゆっくりと目をあけるとスィアがヒゲ男の腕を掴んで止めていた。
「……ガキ。何してるんだ。手放しな」
「離したらアナタはこの人を殴る。だから離せない」
無表情のまま、スィアは口だけを動かす。
ヒゲ男は呆れたように小さくため息をついた。
「……言ったよな。情にほだされて騙されるんじゃねぇよ。これはこいつらのいつもやり方なんだよ。こんな奴らよりオレ達の方がよっぽど信じられるってさっき分かっただろ?」
「いいえ。あなた達を信じることはできない。私達を騙しているのはあなただから」
どれだけ睨まれようととスィアは表情一つ変えることはない。
ヒゲ男は話を続ける。
「おいおい。冗談はよせよ、お嬢ちゃん。オレ達が何を騙してるって言ってるんだ?」
「あなたはホルスの事を詐欺師といった。でも、ホルスは詐欺師ではない。少なくともこれまで詐欺を働いたという話を聞いたことはない」
え……? あれ? なんで今私の名前を?
「……ほぅ、それじゃあなんだ。お嬢ちゃんはこのホルスの嬢ちゃん知ってるってのかい?」
「ホルスはすごく有名な冒険者。冒険者ギルドにいてホルスを知らない人はいない」
え、え、えぇー!? うそ、うそうそうそ!? こんな展開あり!?
Sランクの冒険者の人が私みたいなこっぱも木っ端な冒険者の事知っててくれたってこと!?
そんな奇跡ある!?
め、女神様ー! 奇跡をありがとうー! 一生感謝しつづけますー!
スィアはヒゲ男の顔を見ながら話を続ける。
「彼女は2か月前に教会から冒険者ギルドにやってきた神官。ギルドを歩けばその美貌で虜にした男冒険者から持っている金と金品と夜の時間を貢がせては破滅へと追い込み、パーティーに加われば男たちを自分の思うがままに操って全身が干からびるまで全てを絞りつくすという、冒険者ギルド内で『パーティークラッシャー』と呼ばれているすごく有名な女冒険者」
全然いい方向じゃなかったー! すっごい悪い方向に知られてたー!
さっきまでの決意も覚悟も雰囲気も全てが台無しだよ!
私もう怖くてアイサちゃんの方振り向けない! 今どんな顔してるのか知りたくないから!
あぁもういいよ! 好きに呼びなさいよ! アイサちゃんが助かるなら私のプライドなんてどうでもいいです! 子供の為ならその程度のプライドを捨てるぐらい私には何て事でもないんですから! 私は『パーティークラッシャー』! 『パーティークラッシャー』でいいですよ!
「またの名を『ムチムチプリンのエチエチ大魔王』」
「誰だーっ! 誰だ、そんな呼び名を広めている奴はー! 『パーティークラッシャー』は許しても! さすがにその呼び名は許さないよー!」