70 イルカの船
お待たせ致しました。
今夜は月が雲に隠れ、明かりがないと隣にいる者の顔も分からない。
あの船がこの港に停泊してから三日目には二台の馬車に果物のような物が船から下され積まれて運ばれて行った。騎士団で後を追ったら大手の商人の店に運ばれた。馬車が帰った後荷物を幾つか調べさせてもらったが、怪しい荷物ではなかったときいている。
それからも毎日昼夜交代で見張りがついた。
五日目の今日、真っ暗な夜中に動きがあった。
私は幸運にも探索のスキルを持っているので人が何処にいるかが分かる。だが今日は荷を運ぶ者達の顔が分からないのは痛い。目撃したと証言出来ないからだ。
船から荷が下され、三台の幌付きの荷馬車に積まれている。
船から荷を下ろす足場の所には海に落ちないよう僅かな明かりが灯されているが人の足しか見えない。
何人もの人が荷馬車と船を行ったり来たりして荷が積まれているようだ。
あれ?あんなに人がいたのに船に戻る人数が少なくないか?靴を履いている者達だけが船に戻っていく。
裸足の荷運びの者はここで雇われた者達で積み終わったから帰ったのか?いや、あの馬車の所から離れた者は居なかった。船に戻らなかった者達は荷馬車に乗った、または乗せられたのだろう。
何人もの人が三台の馬車に乗っているのが探索スキルで確認できた。
ではあの裸足の者達が・・・
ランタンを灯して馬車がゆっくり動き出した。私は荷馬車の後を追う。こう暗くては荷馬車はスピードは出せない。後を追うにはこの暗闇が良い条件になっている。ランタンの灯りも目印になる。
この港街から出る道は一本しかない。もし私に気付かれても街の外でもう三組、二人ずつの騎士団が隠れて後を追うよう手筈されている。
荷積みが始まった事は団長と冒険者ギルドに連絡済みだ。
少し離れた場所で同じように荷下ろしを見張っている騎士団の同僚が魔法で知らせの手紙を送った。
荷馬車は港街を出て最初の別れ道で一台違う方に向かった。
三台が違う場所に向かうかもしれないという事は想定済みだ。分かれ道の林の中で隠れていた一部隊が違う道に進んだ荷馬車の後を追った。
後の二台を私達が追う。林の中の残りの騎士四人も後ろから付いてくる。
船の側で念の為テイムのスキル持ちが見張っている。三台の荷馬車は私達の目を欺く為に使われるかもしれないからだ。
手紙を送った同僚も念の為残っている。何か動きが有れば本部に手紙を飛ばして知らせてくれる。
一刻ほど進むと一台の馬車だけ王都の手前の領地の方へ道を逸れていった。もう一台は真っ直ぐ王都へ続く道を進んでいる。
私は逸れた方の荷馬車を追った。王都へ向かって行った方に二人の騎士が距離を置いて付いて行く。
道を逸れた場所から半刻、荷馬車が子爵領の一件の屋敷に入って行った。
離れた場所に馬を置き、三人で屋敷の周りを囲い違う場所から敷地へ乗り込んだ。
荷馬車は屋敷の裏の建物の前まで入り込んで荷を下ろしている。御者が降りて荷台から荷を下ろす者を三人下ろしたようだ。屋敷の明かりで顔が見える。裏の建物から二人出てきた。一人は商人のような服装をしている。この屋敷の主人だろうか。もう一人は、子爵だこの領地を治めている子爵だった。
木箱が下ろされていく。荷下ろしをしているのはさっきの三人だが、手を鎖で繋がれたまま作業をさせられている。
ん?首につけられているのは奴隷の首輪だ。この国でそれを付けられるのは犯罪者に対してしか許されていない。犯罪奴隷達は男も女も国の鉱山で働かされる。犯した罪によって仕事場は選ばれるが、一般の者に奴隷が渡される事は無い。
探索すると荷馬車の御者、商人、子爵の三人、それから荷を下ろしている三人と荷馬車の中に体の小さな者が二人、裏の屋敷に他には人は居ない事が解った。
相手が三人、こちらも三人、他のものは手錠をしているから、敵だとしても戦えまい。行けるな。
仲間の場所を探索してライトの魔法で合図を送ると返事が返って来た。
いざ参らん!
あっけなく彼らは捕まった。手錠をされていた三人に話を聞いた。
少し訛りはあるものの、喋っている言葉は分かる。
アステラ王国のあるこの大陸の者はみな同じ言葉を話す。この大陸の海の向こうの西にある国々と南東の大陸の国の言葉は違うので、他の大陸の者達ならば貴族だけしか言葉が理解出来ない。平民は他の大陸の言葉を学ばないからだ。
まぁたまに商人達は商売上言葉を学んでいる者達もいるがそんなに数は多くないだろう。
一応私は貴族の出であったので、子供の頃から他大陸の言葉は習っていたが、今回は必要なかった。
鎖に繋がれた三人の彼らと馬車の中にいた子供二人はレーン王国の近くの島に住んでいて、イルカの船の者達に捕まり奴隷にされて売られる所だったという。
五人全員が手に鎖を巻かれ、奴隷の首輪を嵌められていた。
馬車に証拠の為下された荷を積み直し、手錠の鍵を御者から奪い、御者と商人、子爵の手に嵌め、荷馬車に乗せた。
奴隷にされていた五人には少し辛抱して貰い同じ荷馬車に乗ってもらった。子供達が彼らを怖がるだろうから三人には猿轡をして縄で胴から足までぐるぐる巻きにして転がしておいた。
騎士の一人が荷馬車を動かして、彼の馬は私が引いて城まで移動した。
王都の入り口の騎士に奴隷売買の罪で船を取り押さえるよう直ぐに団長に連絡をして貰い我らはそのまま城に向かった。
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