62 魔法
二週間が過ぎ葡萄の苗木をお婆ちゃんちに取りにヴィルさんの船とバスを乗り継いで行った。
お婆ちゃんちの玄関横にある空になった物置に荷物は届いていた。中を開けて確認すると苗木が二十本ずつの合計四十本とミンサー、製麺機等も届いていた。
ヴィルさんから借りているマジックバックに大量の荷物は収納出来た。
物置はいつも鍵を掛けて無いので中に入ったままドアを閉めてヴィルさんの移動の魔法で船の船室まで戻ってきた。
「本当に魔法って便利だわ。ヴィルさん、私にも魔力があるって言ってましたよね。私も魔法が使えるようになるかしら?」
「そうだな、訓練すれば使えるようになるかもしれんな。だが魔力を持っていても全ての者が使える訳ではない。試しにレイラやロウと一緒に生活魔法から少しずつ練習して見るといい。帰ったら一緒に見てやろう。」
「本当ですか、ありがとうございます。」
それから私達は食料品等の買い物をして島迄戻った。
眉間に皺を寄せたロウが指を一本立てて
「むーーー!」
と唸っている。
隣でレイラは涼しい顔で人差し指の先に蝋燭のような小さな炎をゆらめかせていた。
レイラは火系の魔法をすんなりと熟せている凄いな。
私も一本指を立ててうんうんと力を込めているがさっぱりだ。
異世界物の本の中に魔法の発動は想像力が大事とか書いてあったけど、私には想像力はあっても魔法は全然無理のようだ。
ヴィルさんも
「イメージが大事、そして魔力が体を巡るようにして指先に流すんだ。」
と教えてくれたが、やっぱり出来ない。
「ロウ、肉を焼いて食べた時の炎を思い出して!がんばって!」
とレイラが励ましている。
ロウはこくんと頷くとじっと指先を見つめて
「ほのお!」
と力強く声にするとポッと指先に炎が現れた。
「わー見て見て、出来たー!出来たよ!」
「凄い、ロウ出来たね。」
「やったー!ロウ凄いよ!私とおんなじよ!」
「ロウ上手くいったな。ユミ殿は魔力の流れは感じているかな?」
「それが良く分からなくて。」
「そうか、では私の魔力を流して見よう。その方が分かりやすいだろう。両手を前に出して。」
「こうですか。」
「失礼するよ。」
ヴィルさんが私の両手を握ると右手から温かな物が腕を通り右脇を通って右足へと伝わり次に左足に、そして左脇を通って左手に流れてきた。
「魔力が私から君の中を巡って私に帰って来るようにしているが、何か感じるかい?」
「ええ、温かな物が私の体を巡ってます。」
「それが魔力だよ。」
「これが魔力。」
「今度は自分の魔力が体を巡るように練習してごらん。」
そう言ってヴィルさんの手がそっと離れた。
自分の魔力。温かなあの感じ。私の中に有るのならお願いゆっくり巡って。
胸が熱くなり左手の方へ、それから左脇を通って左足に、そして右足に行ってお腹の方が温かくなると右手の方へと流れてまた胸へ、ゆっくりと巡る魔力が感じられた。
うん、分かるこれが私の魔力。体の中を何回か巡らせて右手の人差し指の方に魔力を流していく。魔力は少しだけで良い。細く細く魔力を指に流す。蝋燭の炎のように淡い炎よゆらめいて。
ポッ
「あっ、ユミママも出来たね。」
出来た。魔法だ。何も無い所に炎が、凄い
「ユミママ、僕とおんなじ。」
「うん、良かった皆んな同じで。出来たね。」
「魔力のコントロールも出来たようだな、初めてで君の持つ大きな魔力をこれ程絞れるのは凄い事だ。練習を積むと自由に熟す事が出来るようになる。毎日少しずつやって行くといい。ではつぎは水と風だ、三人とももう少しやれるか?」
「「はい」」
と子供達はやる気満々だ。ちょっと休憩したい気持ちを抑えて私も返事をした。
「お願いします。」
途中でテオも加わり夕陽が沈む前まで私達は魔法の練習を続けた。
火魔法を四人共覚え、水も出せるようになった。
私も水は出せるが、一回目はドバッと出てしまい周りが水浸しになってしまった。湧水を想像して出した為だと思う。二回目は水道の蛇口から少しずつ出る所をイメージしてやったら上手くいった。
ヴィルさん曰く、冒険者や旅をする商人達は水と火の魔法が使えないと大変なのだそうだ。
旅の中で食事を作ったり、暖を取るのに火魔法が必要で、水魔法が使えないと飲み水用の重たい水を馬車で運ばなくてはいけない。その分商売用の荷物が馬車に乗せれなくなる。
だから旅商人は自分が魔法を使えない時は、護衛して貰う人の中に必ず火と水の魔法が使える者がいるグループを雇うのだそうだ。
そして風魔法は私とレイラだけが発動した。ロウも随分頑張っていたけれど残念ながら発動しなかった。テオは途中から参加したので風の魔法の練習までは出来なかったから明日挑戦してみると言っていた。
風の魔法は濡れた髪や衣服を乾かすのに役に立つらしい。
そして、風の刃が出せるようになったら兎の魔物も簡単に倒せるようになるそうだ。
それを聞いたレイラは断然張りきりもっと練習をすると言っていたが、もう辺りが暗くなりそうなので、今日の練習はお開きとなった。
皆んなでヴィルさんにお礼を言って屋敷へと戻った。
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