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60 キノコ

 



 朝早く目が覚めたので、朝靄の中、頂上の崖の方まで行って景色をながめ、ロッジの側迄ぐるりと一周して帰ってきた。


 昨日植えた苗木が今日はもう倍の高さになって枝も伸びていた。

 ヴィルさんが魔法をかけてくれたのかな?もしかして、苺も?と見に行くと沢山の赤い実が朝露に濡れてキラキラと輝いていた。

 端の方の苺だけまだ緑色だがその苺の周りに羽の生えた小さな生き物がくるくると飛び回っている。

 その生き物からキラキラした光が溢れ出て苺に注がれた。すると緑の苺はみるみるうちに赤く色を変えた。


 私は何を見ているんだろう。羽の生えた生き物は人間の形をしているように見える。まるでディスニーの緑の服を着た小さなあの子のようだ。


「み、見間違いじゃ無いよね?」


「あれっ?もしかして私が見えてる?」


 その小さな生き物が喋った。


「み、見えてます。」


「やっと認識して貰えたわ。良かった。貴方の世界では魔素が少ないせいなのか全然気づいてくれないんだもの。」


「え、えーっと?この苺を沢山実らせてくれたのは貴方なの?」


「そうよ、当然でしょ。」


「あ、ありがとうございます。もしかして昨日植えた苗木も?」


「そうよ、私。貴方の世界の土地にある畑も木も私と私の仲間が実らせてたのよ。分からなかった?」


「す、すみません、全然気が付かなくて、ここに住んでいるエルフのヴィルさんがやってくれたのかと思ってました。」


「あーそうね、エルフにもそんな力があるわね。でもこの島全体を私達妖精が今は貴方の為に働いているわ。」


「え?私の為に?」


「そうよ、前のお爺さんの時にも手伝っていたけど、彼は最後まで気付いて貰えなかったから貴方が気づいてくれるとは期待はして無かったけど、流石聖女様の娘だけあるわね。」


「へ?聖女様の娘?貴方が?」


「違うわよ、貴方の事よ!貴方聖女様の娘で、次期聖女でしょ?」


「ごめんなさい、何の事かさっぱり解らないわ。」


「まぁ、いいわ、私、この場所を守るように、妖精王から言われてるの。貴方の手伝いもするわ。よろしくね。」


「あ、此方こそ宜しくお願いします?」


「何で疑問形なのよ、貴方が植える物は私達が守るから心配しないで。次期聖女様を飢えさせる訳には行かないからね。」


 その小さな生き物は私に近づいてウインクをすると


「島を回ってくるわ、また後でね。」


 と言ってクルクルと宙を舞いあっと言う間に飛び去った。

 いったい何だったの?妖精?いるんだ!ファンタジー!妖精が見れた!凄い凄い!後でヴィルさんに聞いてみよう。


 今日ヴィルさんはウォルトとクルトを連れて冒険者ギルドの仕事があると早めの朝食を取って慌ただしく出かけて行った。妖精の事は時間のある時に聞こうと思う。


 私はレイラとロウ、テオを連れて村の近くに来ている。

 村を作る時に切り倒していたどんぐりの木を一メートル程の長さに切るのだ。

 物置から持ってきたノコでギコギコと切っていたら村の人達が集まって来た。


「薪にするんですか?」


 と村の代表者のアルノーさんが聞いて来た


「いえ、キノコの種菌を植える為にこのどんぐりの木が必要なんですよ。」


「キノコの種菌?それを植えるとキノコが生えて来るんですか?」


「ええ、山に探しに行かなくてもこの木に生えて来るんです。」


「それは便利ですね。お手伝いしましょう。その長さと同じように切れば良いですか?」


「俺も手伝いますよ。」


 と他の村人も申し出てくれた。


 ノコはどれが切りやすいかわ分からなかったので三本持って来ていた。皆んながそれを使ってみるみるうちに一メートルの原木が積み上がりつつある。


 手が空いたので私はインパクトにドリルを付けて穴を開けていく、直径二十センチ程も有る木には六十個程の穴を開ける。

 テオが興味深そうに見ているので「やってみる?」と聞いたら頷いたのでインパクトを渡した。

 動かし方を説明して、穴の間隔も教えて、このテープが貼ってある所まで差し込めたら止めてね、木は私が押さえておくから、真っ直ぐに刺して、力は余り要らないから。と言うと、上手に穴を開けていく。一人でも出来ると言うので穴あけはテオに任せた。


 穴が空いた所に少し太い鉛筆を短く切った様な形の種菌をハンマーでコンコンと打ち込んで行く、これならレイラでも出来るだろう。ハンマーは重いので、直径三センチ程の切り取った枝でコンコンと叩くと上手に入れられた。


 ロウもやりたいと言うので少し差し込んだ種菌を両手で待った枝で叩いてもらう。

 最初は狙った所を叩くのが難しそうだったが、やって行くうちにどんどん上手く当たるようになっていった。


 穴が空いた原木も沢山出来てきた。手の空いている村の子供や女性も枝を片手に種菌を打ち込んで手伝ってくれた。


 村人達と一緒に椎茸の種菌を一メートル程の原木の穴にハンマーでコンコンと叩いて差し込んでいった。

 種菌は一袋に千個入ったのを二袋分買ったから二千個、結果的に原木が五十本必要だった


 穴はせいぜい五、六個開ければ良いのだろうと考えていたが、一応携帯で調べてみた。


 携帯は異世界のこの場所では役に立たない。電波を傍受出来ないのだ。だから携帯を使いたい時は管理人のログハウスの付近迄行って使わなければならなかった。


 椎茸の種菌の穴は直径二十センチ程の木一本に六十個も開けると記されてあって、数の多さに驚いた。

 縦に二十センチ、横は四センチ程間隔を空けて格子状に穴を開ける。穴の深さは三センチ程。

 細い原木だとその半分程の数しか穴は開けられない。

 なので最終的には五十五本というめちゃくちゃな数の種菌付き原木が出来上がった。


 テオは穴開けを村の人と交代しながら種菌の打ち込みも楽しんでいるようだ。


 皆んなが手伝ってくれたので、二千個と言うめちゃくちゃな数の種菌打ち込み作業も楽しく終わった。私が三十本、村の共有物として二十五本をお手伝い賃として持って行ってもらった。


 しかし椎茸が生える迄二年程かかるので、日の当たらないジメッとした所に置いていてと皆には伝えた。


 私用の原木はロッジの裏の木陰に置く事にした。村の男性達が原木をロッジまで運んでくれたので大変助かった。





お読み頂きありがとうございます。


ディスニーのスは間違いではないです。濁点無しです。この名前出して良いものか分からなかったので、濁点無しとしました。

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