57 村の生活
島に村が出来て皆が其々家に収まった。
村の中では漁師のローレンツさんとマルセルさんだけが私の世界と異世界を隔てている結界を通る事が出来る。
私達が地球側の畑等に居る時に緊急な連絡が必要な場合、連絡が取れるようにと二人だけは結界を通れるようにヴィルさんが考えたのだ。
結界で隔てて異世界の人が私の世界に入れないようにして、私の世界の人に目撃されないように対処して貰ったのだ。
山の頂上は異世界側なので村の人達も出入りは自由だ。
買い物から帰った私を村の代表者になったと言う四十歳の男性アルノーさんが待っていた。
食料を確保する為に彼はあの村の近くに皆で畑を作って良いかと聞きに来たのだ。
この島はユミ・タナカというあの女性の所有地だと言う事は教えて貰った。
全員が家に住まわせて貰っているが、本来ならなら借地、借家として貸し出す時に契約と賃貸料が必要なのだとヴィルフリート様から聞いたのだ。
とはいえ、物々交換で生活していた我等はたまに魔物の素材を売りに行った時にレーン王国のお金を見るくらいだ。そのお金で小麦粉などを購入して島に帰ってくる。
今は毎日食べる物もタナカ殿達から無償で分けて貰っている。生活基盤の無い我らが賃貸料を払う等出来ない事は誰もが理解していた。
海で取れた魚をローレンツとマルセルも皆に分けてくれているが、彼等にもタナカ殿とヴィルフリート殿にもずっと頼りっぱなしと言う訳にはいかない。
タナカ殿のくれる野菜はどれも美味しい。あの種を分けて貰えれば魔物を狩りながら畑を耕して何とか生活が出来るだろうと村の皆で話し合った。
漁師をしているローレンツとマルセルは魚を加工してレーン王国の港街に売りに行っていた。買ってくれる所を探せば彼等も生活出来るだろう。畑を持ちながら漁師をしても良い。
お金が稼げて賃貸料が払えるようになったら彼等は私達をずっとここに住まわせてくれるだろうか?
「畑?そうですね、自分達の食べる分を作る畑は必要ですもんね。場所は指定させて貰いますが、畑を作っても大丈夫ですよ。野菜の種なども倉庫にまだ残ってるので、それをお分出来ます。ジャガイモやサツマイモの元は後で説明しますね。」
「わ、分かりました。宜しくお願いします。」
「それでですね、提案なんですけれど、村のどなたか、もしくは皆んなでワイン作りをしませんか?葡萄の木を植えて、実がなるまで何年か掛かりますが、それが製品として売れるようになったら売上の何パーセントかを私に納めてくれればこの島で住んで良いですよ。葡萄の木はこちらで準備するので、どうです?やってみますか?」
「はぁ、そのワインというのは?」
「ああ、そうか、ワインというのはお酒の事です。葡萄の実を潰して寝かせて作る酒なんですが、あ、そうか、樽や酒を寝かせておく場所が必要ですね。ちょっと建物を作るのに時間が必要だわ。」
「樽や建物は私が準備しよう。畑も作りに行こう。直ぐに植えないと実がなるまで時間が掛かるしな。
ワイン作りは君が事業として起こす事にして、働いた賃金を彼等に与える形にした方が良いだろう。」
ヴィルさんが食い気味だ。
「そうですね、失敗しても私が責任をとれば良いだけですもんね。そうしましょう。
取り敢えず畑を作る場所を見に行きましょう。
ワインの事は村の皆さんで話し合って下さい。
それから、ワインがどんなものか知っていた方が良いので、今夜ロッジの炊き出し場に夕刻、少し早い時間に集まって下さい。ワインの試飲会をしましょう。
夕飯を皆の分用意するのは大変なので、作るのを手伝って下さい。エトムントさんやゲラルトさんも呼んで下さいね。」
エトムントさんはレイラとロウが以前隠れて暮らしていた洞穴の近くに程よい洞穴を見つけてそこを住居兼作業場にした。ヴィルさんがその場所に行った事があるので知らせに行ってくれる事になった。
ゲラルトさんは村が出来た近くに元の家を設置して貰っていて、既にカンカンと仕事を始めている。作業の音が煩いので、村を作るならゲラルト家から少し離した方が良いと本人が言っていたそうだ。
前の島でも彼らの家は離れた場所にあったそうだが、そういう訳だったのかと納得した。
試飲会の事は彼等には村の畑の場所を見に行った時に知らせて来れば良いだろう。
村の人の家は隣同士が彼等の家二件分程の距離が開けられて四メートル程の道を挟んで二列に並んでいた。ならばその間の土地を其々が畑にすれば良いだろうと許可をした。田舎の家だからそれなりに広い。よって、間の畑もそれなりに広くとれる。自分達の食べる分だけならこれで十分だろう。
平等に同じ広さに其々の畑をヴィルさんが整地してくれた。全部で十件分だ。
彼等の家の一段高い位置に葡萄畑を作ると良いと思う。
木を切り倒してその上の段にも畑が作れそうだ。
そして少し離れた場所にも葡萄畑を作った方が良い、病気予防の為にね。品種を変えても良いかもしれない。まぁ、それはおいおいかな。
取り敢えず有るだけの種をアルノーさんに渡した。皆んなで平等に分けて欲しい。ジャガイモの種芋とサツマイモの苗は次回の買い物の時に買ってこよう。葡萄は皆が賛成してくれたら買いに行こうと思う。
夕食にローレンツさんとマルセルさんに頂いた魚を衣を付けて揚げてもらい、キャベツと人参とお肉を炒めてもらい、私はテオとニンニクの効いたパスタを大量に作った。
ミニトマトは半分に切ってもらって、ポポンの酢を掛けて出来上がりの簡単なサラダをレイラとロウが手伝ってくれた。
これだけでは足りないといけないので炊き込みご飯もピラフ風に作った。人参と玉ねぎピーマンベーコンをみじん切りにして貰いコンソメと塩胡椒を入れて炊飯器のスイッチを押すだけの簡単な物だ。
炊き出し場の椅子とテーブルでは足りないので各ロッジの外に備えてあったテーブルと椅子をヴィルさんが移動してくれた。
皆が席に着いた。それから今日買ってきたパック入りの格安ワインを大人だけグラスに注いだ。子供達にはアップルジュースだ。
夕食兼試飲会が始まった。
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