54 家
お読み頂きありがとうございます。
主人公の島は長崎の架空の島です。実在はしません。
何となくあの辺に有る島の近くと言う場所を空想して書いておりますので、地図にも載っておりません。悪しからず。
ヴィルさん達は出掛けてから四時間程で帰って来た。
鍛治職人のゲラルトさんの家と、エトムントさんの住居部分、それから鍛治職に必要な道具や窯に鉄鉱石もそこにあった分全て持って来たそうだ。
しかし、山の家は火が放たれ全て焼けて無くなっていた。使えそうな鍬や斧の金属部分、鍋くらいしか持ち帰る事ができなかった。
浜の家もまた人攫い達が立ち寄ったのか、家が皆燃やされていたという。
銛の先や黒焦げの鍋と、攫われた人達が使っていた浜と海に繋がれていた小舟三艘等を持って来たようだ。
もう三艘あったが波に攫われないように海からあげて見え難い所に置いて来たと言っていた。
それからもう一軒、浜の海から直接見えない位置にあった家だけ残ってて、そのままその場所に残して来たそうだ。
その家の持ち主は一年程前に亡くなって空き家になっていたが、石壁の家で、まだ住めそうだった。
万が一攫われた人の誰かが島に逃げ帰って来た時に取り敢えずその家で休む事が出来るようにと、今回島に行った皆が残しておこうと、その家の鍋や道具等もそのままにして来たそうだ。
誰か帰って来れるといいが。
何処に連れ去られたのだろうか、何処の国の船なのか分かるような印が有れば何処の国に行ったかが分かるかも知れないが、わかりやすい印は無かったようだ。ただ、船の船首の彫刻がイルカだった事をローレンツさんが目撃していた。
取り敢えず明日はゲラルトさんの家を、木で隠れる場所を探して設置するそうだ。
エトムントさんは島を探索して少し離れているが住むのに良い場所を探して来たそうだ。そこにヴィルさんが一緒に行って住居部分を設置出来るか確認すると言っていた。
他の人達は取り敢えず、ロッジAに寝泊まりしてもらうが、家をどうしよう。
プレハブなら安くで建てられるけど、夏は暑いし冬は寒い。
ドワーフの夫婦を除いて、四家族と六人分の家だと十軒も建てなくてはならない。
家族だと一部屋では無理だろう。
何かいい方法は無いだろうか。
あっ!あれは?都会も田舎も人の住んで無い家が沢山有る。家を取り壊したいがその資金も無いのでそのまま放置しているとかテレビで言っていた。
行政もそのまま放置されると崩れて危険だから困っていると、そのような建物を安くで譲って貰う事が出来るのでは?ネットで調べてみよう。
私のこの島は九州地方の地図には記載もされてない小さな島だ。
それが何故だか異世界の島と合体して本来の地球に有る島よりも広くなっているのだという。
しかも私の世界の人達は元からある島の大きさにしか見えてないそうだ。
しかし前の管理人さんは私を案内した時に島をぐるっと案内してくれた。
この大きくなっている島の山の上まで知っていた。大瀬さんもこの大きくなった島が見えていたということだわ。
この島を管理する人は見えるようになっているのかしら?
大瀬さんは山の東側は崖になっているから落ちないように注意するのも仕事だと話していた。
山の頂上は元の島には無い場所なのだ。
と言う事は広くなっている事を知らなかったのかしら?元々この広さだと思いこんでいたの?
今となっては聞く事も出来ない。
あれ?見えて無いって事は船が島にぶつかるんじゃない?
でもそんな事故があったなんて聞いた事が無い。素通りできるの?
元々有る島の周りは全部海な筈、でも私には島に見えるその場所は異世界って事?では元の島のエリア外の接している海は?やはり異世界?元の島の周りは日本の海?
これはちゃんと調べておかないとダメだわ。もしエリア外が異世界なら海もそうだろう。
だとしたら悪い事ばかりではないわ。 異世界の海なら昼間でも彼らは漁に出れるじゃない。
それでヴィルさんは地球の島の大きさの所に結界を張るそうだ、許された者だけがこの小さな元の島のエリアに出入り出来るが、許されて無い者は入ることも、このエリアから出る事も出来ないようにするらしい。
「結界内に出入り出来るのは私と君、そして、レイラ、ロウ、ウォルト、テオにクルトで良いだろう。」
「そうですね。でも何かあった時に元エリアにいる私に知らせる術が彼らには無くなりますね。」
「ふむ、そうか、ならば山の人達を助けようとしたローレンツかマルセルは入れるようにしておこう。他の人を助けようとする者は信用出来るだろう。」
「そうですね、連絡役をどちからに頼みましょう。」
家を用意したら元の島のエリアの外に助けられた人達の為に家を設置して、そこに取り敢えず住んで貰う。
島に来た私の世界の人は、元の島のエリアから異世界エリアの島に行く事は出来ない。浜の方の海には入る事はできる。
でも、私の世界の人を客にする事はしないと決めたから、私と同世界の人はそうそう来る事はないだろう。
ん?あれ?そうすると、このエリアにお客さん入れないんじゃない?
A級冒険者の彼ら、たまに来てくれるから商売になりつつあるのに。
そう考えていたらヴィルさんがロッジも移動させようと言ってきた。
客が結界の中に入れないと困るだろうと山の頂上の広場に移動させようと言う。
「えっと、移動はいいですが、頂上まで電気配線を繋ぐのが大変だと思います。
ソーラー施設の場所から山頂まで長い線が要るんです。線を繋げないとお風呂も、部屋を暖めたり冷やしたりするエアコンも使えなくなるんです。
それに、管理人のログハウスはそのまま同じ場所に置いておかないと海から誰か用があって来た時に船着場から見えていた建物が無くなっていたら変に思われます。」
「そうだな。管理人のログハウスはそのまま同じ場所に置いておくしかないな。電気の配線は私が出来る。ロッジだけ移動しよう。
しかしそれでは仕事が終わってから山頂から浜まで暗くなってから降りて来なければならないな、それは危険だ。」
「そんなに距離はないですし、大丈夫ですよ。」
「私の世界は君の世界とは違うんだ湧水の側に結界を設置してはいるが万全ではない。時空の繋がりが一箇所とも限らないから、魔物が私の国の方から入り込んでいるかもしれない。
君も普段は山の上で皆と暮らすといい、
王都から空いてる屋敷を運んで来よう。」
「空いている家が有るんですか?」
「ああ、別宅がある。小さいほうを持って来る。」
「攫われた人達が住めるような空き家は無いでしょうか?無ければ私の世界の譲ってくれる家を探して運ぶのを手伝って頂けると助かります。」
「空き家か、そうだな、君の世界の建物のようにしっかりはしてないが、いくつかあてが有る。調べてみよう。君の世界の家も手伝いをするよ。必要な時は言ってくれ。」
「ありがとうございます。」
「いや、彼らを勝手にこの島に連れて来たのは私だ。本来なら君に頼まなければならないのは私の方だ、子供達も世話になっている。仕事を増やしてしまってすまない。この借りは必ず返すと約束しよう。」
いつも有り難うございます。