38 後悔
いったい何処へ行ったんだ!アパートに行っても留守だ。
運が悪い、あんな所を見られるなんて、不注意だった。由美と行ったことのあるレストランを予約するなんて!あの女があそこに行きたいと言うから、まさか由美がクリスマスに俺以外と出掛けるなんて考えてなかった。年末に旅行の予定を立てていて、クリスマスは無しでと話し合っていたから。
由美は俺と付き合うまで他の誰かとクリスマスに出かけたり、誰かを家に呼んでパーティーをした事も無いと言っていたから、今年も出かけずに家にいるものだと思っていた。
何故よりによって同じ場所にいたんだ。
時々あの席で視線を感じていたが、寂しい女達が男漁りをしているんだろうと思っていた。
まさか由美の知り合いだったなんて、そういえば携帯をこちらに向けていた。
俺があまりに男前なんで勝手に撮ってるんだろうと思っていたが、きっとあれは友達の彼氏である俺の浮気現場をカメラに納めていたのか。なんて事だ。証拠が無ければどうとでもなるのに、いやいや、まだ本当に撮られていたとは限らない。早く由美に会って話をしなければ。
結婚の話し合いは進んでるのか、何故旅行は行かなかったのか、また由美さんを連れて来なさい。と俺の親が煩い。
もしも親に浮気したのがバレたら、昔気質の生真面目な親に何を言われるか。それだけは阻止しないと。
彼女の部署の部長に由美の事を聞いても一月十四日日付けで退職願いが出されて、今月いっぱいで辞職が受理されたとしか教えてくれない。
退職の話を聞いて直ぐにまた由美のアパートに行ったが既に空き部屋になっていた。外から見える窓にカーテンが無かった。郵便受けの表札の名前も無くなっていた。
何て事だ。去年に結婚式場を探して、今年には結婚式を挙げようと計画していたのに。
新居は子供が出来るまでは俺の住んでるマンションで我慢しようと言っていたし、結婚式には田舎のお婆ちゃんにも出席して欲しいと話して、そうだ!お婆ちゃんだ、長崎だったな、ギリギリで有給をキャンセルしたからまだ有給があるな。
住所は何処だったか?いつかメールで教えて貰った筈だが、何処かにメモしたかな?くそ!何処かにメモした筈だが見つからない!小さな町だと言ってたから行けば探せるか?
いや、田中なんて名字ありきたりで探せる自信がない。
どうする!興信所に頼むか、しかし、お婆さんしかいなかったら、由美の居場所を教えてくれるだろうか?
会った所で由美は許してくれるだろうか、いや、許してくれるまで謝ろう。
よりによって由美の後輩だなんて!そんな事一言もあの女は言って無かったじゃないか。
俺が彼女と結婚が決まった事も知っていて近づいて来た女。
「ご結婚前に後腐れない付き合いよ、どうです?」
って言葉に嵌められた?
「田中先輩と結婚しないなら私としましょう。」
って、あの場でよく言えたな!何が後腐れのない付き合いだよ、計算しまくりじゃないか。
こんな女との結婚なんてすぐ破滅だ。俺より良い条件の男が見つかったら直ぐに乗り換える筈だ。
何でそんな女に騙されたんだか、彼女だけで満足してれば!今更だな。
バレた時の事なんか何も考えて無かった。婚約破棄して仕事も辞めて、住む場所まで変えてしまうなんて、本当に一途な人だったんだ。だから耐えられなかった。考えれば分かった筈だ。そんな所が良いって思ったんだ。真面目で親切で、無くした書類を一緒に探してしてくれるとても優しい人、それが由美だった。
結婚の決まった男に声を掛ける様な女では無い。
時間を巻き戻したい。クソッ
相手に誠実を求めながら自分はどうだ、由美の目の前でディープなキスを交わすなんて、バカ以外の何者でもないな
謝って許してくれるだろうか?もし反対の立場なら?俺は由美を許せるか?
いや、許せないな。
泣きながら謝っても?
もう多分信じられない。
駄目じゃないか
パニクってメチャクチャな量のメールも送ったしな、自分でおかしな事言ってると分かってて、送らずにはいられなかった。いいががりをつけて
「何言ってるの、貴方の方がおかしいでしょう!」
って返信を待っていた。
既読は付いたがそれも十八通目からは見てももらえなかった。何としても帰って来て欲しかった。
やり方が不味いのでは?と思ったのは既読が付かなくなってから。
それでも辞めれず出しまくった。
そりゃ一日百通のメールなんて出した俺でもキモい。俺でも直ぐに引っ越す。
何をやってるんだ!中学生じゃあるまいし。
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