36 島?
ヴィルフリート様と同じ部屋に割り振られたので寝室で疑問に思っていた事を聞いた。
「ヴィルフリート様、この屋敷はどなたのお屋敷なんですか?
歪みのない大きなガラス窓、脱衣所の鏡は自分の顔があんなにはっきりと映し出されて吃驚しました。
何処の貴族の屋敷でもあれ程素晴らしい出来のガラスは見た事が有りません。
城にも無い物ですよね。いったいどなたのお屋敷なのですか?外国の高貴な方なのでしょうね。」
「成る程、君にはこの屋敷がそのように見えているのだな。流石伯爵家の息子だ。だがな、この屋敷の持ち主は庶民なのだ。」
「えっ?庶民?そんな筈は」
「もしかしたら本人も知らない、隠された子なのかも知れんがな。」
「成る程、そう言う事か、いや、しかし、それでもあのガラスや鏡の説明には不十分ですね。」
「我々がここに来る時に通って来た場所が何処か分かるか?」
「あ、迷いの森?ですか?」
「そうだ、あの森を通って来ると、この不思議な島に来れるのだ。」
「ここは島なんですか?
あの森に入ったら二度と戻れないと言う話が有りますよね。迷った者はここに来ていたって事でしょうか?」
「迷って違う所へと繋がる道に入ったのだろうな。行った場所がこことは限ら
ないだろうがな。森に入った者が帰らない事も本当にあったのだろう。私達の世界とは違うこのような場所へ行ってしまってな。」
「私達の世界とは違う所?」
「そう、この島のようにな。」
「成る程、違う世界。それならあのガラスの説明がつきそうですね。
ヴィルフリート様はここで働いている者と顔見知りのようですが、迷って来られたのですか?」
「いや、ギルドから指名依頼が来てな、指定された場所で渡されたマジックリボンを使って移動したらこの場所だっだんだ。
依頼は水の魔石を設置してこの場所で水が使えるようにして欲しいと言う事だった。」
「成る程、島だから飲み水が無いのか。しかし、指名依頼ならば他言無用では無いのですか?」
「いや、特に口止めはされなかった。」
「この屋敷の持ち主とは水の魔石を設置して知り合いになったのですか?」
「ここの主人に違う場所に湧水を引いて欲しいと頼まれて、数回来た事がある程度だ。彼女の作る料理は美味いだろう?」
「美味いです。成る程、一度しか食べて無いけど、また来たいと私も思ってます。」
「ふっ、そうだろう。この三棟の建物は人を泊める宿泊所になるそうだぞ。」
「成る程、王都への帰り道にこれからも宿泊出来るって事でしょうか?」
「そうなれば良いな。王都のどの店より美味い料理が食べれるのは魅力的だ。」
「それに清潔な風呂にトイレ、ベッドの布団もフカフカですからね。しかし、そうなると宿代は高そうですね。高級宿ですよね。余り他の貴族には知られたく無いですね。」
「どうしてだ?」
「あの料理人の彼女、貴族に引き抜かれますよ。高い給料で。」
「ああ、多分それは大丈夫だ。彼女がここの主人だからな。」
「えっ?」
「彼女がここの主人だ。」
「いや、聞こえてますよ。驚きましたが。」
「しかし、彼女一人でここの経営は大変だろうな、何人か雇うのか聞いてみるか。」
「まだ宿は開店してないんですよね。こんな辺鄙な所、ヴィルフリート様に教えて貰わなければ誰も来ないでしょう。時々のお客ならば彼女一人で手が回るのでは?」
「美味い飯にいつもお湯の出て来る風呂、経営者は女一人、直ぐに目を付けられる。」
「そ、それは、うーん、腕が立って、宿の手伝いが出来る者、ここで働きたい者か、しかも誠実で信用が有る者なんていますか?ヴィルフリート様がここに住み着く位しか思い浮かびませんよ。」
「成る程、その手があったか。」
「え?住み着くのですか?」
「そうだな、緊急時以外は居ても大丈夫ではあるが。まあ、ゆっくり考えるとしよう。
明日は伯爵家の子供らを王都へ連れて行かねばならん。商人の子供達の荷物の分配やら何処で面倒をみるかも考えねばな。あの二人はまだ明日の移動は無理だろうし、ここには何回も来る事になるだろう。」
* * *
「あの、レイラとロウの面倒を見て貰ってありがとうございます。俺、盗賊達に見つかって、抵抗したんですが、何人もの大人には敵わなくて、レイラとロウが待ってるから帰らなきゃいけないのに、すみませんでした。」
「ウォルト君、頑張ったのね。君一人でこの子達の面倒を見て生活していたのでしょう。凄いわ、私が君位の年齢だったら音を上げていた筈よ。
それにあなたとこの子達は兄弟では無いんでしょう?」
「はい、レイラとロウは商人の子で、その二人も姉弟では有りません。其々に両親が居ました。個人の商人は行き先の同じ所へ行く時はお互いに安全の為に商隊を組んで護衛をその商隊で雇って一緒に旅をします。俺は護衛の見習いとして親父と一緒にレイラとロウのいる商隊を守って旅をしていました。
王都へもう少しで着く時にあいつら大人数の盗賊に襲われて・・・
俺は今回旅に付いて来たレイラとロウを連れて逃げろと言われて、盗賊達を見つけた護衛が直ぐに隠遁を掛けてくれて二人を抱えて走ってにげました。二人を洞穴に隠して俺だけ様子を見に行ったら、あいつらまだ居て、大人は皆んな殺されて、荷物を馬車ごと奪って、ううぅ親父はづよかったどに、あんだにづよい親父ぼごろさられるだんでぇうっうっゔゔゔー」
私は掛ける言葉が見つからずウォルト君の背中をそっと撫でるしか無くて、まだまだ親の保護下にあるべき歳なのに、親を亡くして小さな子供の世話をして来た彼を励ますなんて事、親に甘えてのうのうと生きて来た私にはそんな資格も無いように感じていた。
遅くなり申し訳有りません。体調を崩していて、体調が戻るまで少しお休みします。また読んで下さい。




