35 誰の屋敷?
盗賊の洞穴から歩いて一刻程のこの場所には建物が三棟建っていた。
丸太で出来ているこの建物は俺が住んでいた村の建物とは全く違う。立派な建物、いや、お屋敷だ。
ドアノブが木では無く金属で出来ていた。中に入ると薪の匂いはしないのに暖かい。
入り口から一段高くなった床が板張りにしてある。何て贅沢なんだ。
汚さないように靴は脱がなければならなかった。
村じゃ土を踏み固めた床に粗末なテーブルと切り株を椅子がわりに置いていただけだが、ここのテーブルは六台共全く同じサイズで作ってあった。
椅子もテーブル毎に六脚ずつあるが全て同じ形で同じ大きさだ。どんな職人が作ったんだ。貴族御用達の職人か。
窓が広い、しかもガラスの窓に歪みがない!王様の住む城でさえこんなガラスは無い筈だ。一回城に呼ばれたがかろうじて外の景色が分かる感じだったし、こんなに大きいガラスは初めて見た。今迄に見たガラスは大きくて俺の手のひら四つ分だ。
と言うことはここは貴族の為の保養地か?いやいや、王様より良いガラスを使ってそのガラスの周りも皆金属で出来てるんだ。そんな金持ちこの国に居るのか?誰の保養地だ?この時期にたまたま来る者がいないのでヴィルさんが頼んでくれたのか?
そうだ、新緑のエルフのヴィルフリート様は今でこそ冒険者をしているが、何十年も前は城の魔導士の長を務めていたと聞いた。長寿のエルフだからもっと城にいて欲しいと止められたが、私が居ては新人が育たないと職を辞したみたいだ。
数々の功績でヴィルフリート様は伯爵の爵位まで持っておられるんだ。そのコネでここを借りられたのか。
勿論この冬の寒い中あの動けなくなっている少年達の事を一番に考えての事だったのだろうが。ついでの俺たちもこんな贅沢な作りの建物に寝泊まりさせて貰えるのは幸運だ。
風呂にも入れて、何と言う料理かは分からんが、この旨そうな匂い。口に入れると一層香る。そして甘さの中にスパイスが効いていて、何て美味しさだ!
白いこの粒は麦では無いな。これも一緒に噛むと甘みか?この茶色の料理に際立つ白さのこの穀物も美味い。中にはじゃがいもと人参、とりの肉か、ん、これは玉ねぎが小さく切って混ざってるが、玉ねぎの甘さなのか?初めて食べる料理だが、美味くていくらでも入るな。
こんな綺麗な場所に泊まれて、美味い物も食べれて、あの場に残った五人にはちょっと、いや、だいぶ悪いな。
どうせ襤褸屋だろうからマントは持って行けと言ってたが、忘れたふりをして置いて来てやれば良かったと、零氷の盾と呼ばれる男アルバンは暖かい布団に包まり考えるのであった。
* * *
「師匠!本当に持って来てくれたんだ!流石師匠!あー良い匂いだ!」
「礼は彼女に言え、彼女の手作りだ。」
「え!彼女が!ありがとうございます。」
「今用意しますね。味噌スープとカレーです。暖かいから少しは身体を温められるかしら。もう他の皆は食べたから、このお鍋は平らげちゃって大丈夫ですよ。スープは多めに作ったんで、お代わりして下さい。」
「鍋や食器類は明日私が運ぶから、ゆっくり味わうと良い。美味いぞ。
あと、ほらこれも彼女からだ。明日回収するからな。」
と五枚の毛布を私が給仕している間に皆に渡している。
「何てフワフワなんだ。こんな高価な毛布お借りしても良いんですか?」
斥候魔法の使い手ジーモンも初めて見るフカフカの毛布に驚いた様子で聞いてきた。
「ええ、このブルーシートを地面に敷いて、銀色の敷物もその上に敷くと大分寒さが凌げると思います。使って下さい。明日これもヴィルさんが回収しますね。」
私は小屋にあったスポンジみたいな厚さ五ミリ程の銀色の敷物も、二畳の広さのが三枚あったので運んで貰った。
これを敷くと保温されるし、この上に寝るとお尻も背中も痛く無い。違う世界の人にこんなのが色々知られるのは、もしかしたら駄目かも知れないけど、寒いし、貸すだけだし、何で出来てるかも分からないだろうから、良しとしよう。異世界移転の主人公でも無いしね。ふふふ。
読んで下さりありがとうございます。




