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32 くじ引き

 


 まだ一月、外は寒いので家の中に入って貰うように言った。玄関に入りドアを閉めるとヴィルさんは言った。


「この少年の他に四人の子供が盗賊に攫われていた。あの場所からそれ程遠くない洞穴から助け出された。その内の二人は体力が無く起き上がれないのだ。あちらの世界もまだ寒い季節で済まないが空いている部屋で良いので一晩、いや子供が動けるようになるまで貸して貰えないだろうか?」


 盗賊に攫われて起き上がれないなんて、どんな扱いを受けてたの!心細かっただろう。ログハウスは綺麗に掃除も済んでるし、商売を始める練習と思えば良い。エアコンをつければ大人は床にマットを敷いてごろ寝でも大丈夫だろう。


「ええ、構いませんよ。子供達だけで良いのですか?寒いのは大人も同じでしょう。床にごろ寝になるかもしれませんが、大人三十人でしたか?皆さんも泊まる事は出来ますよ。夕飯もカレーで良ければ作っておきますが、どうします?」


「カレー? い、いや大人まで世話になると申し訳ない。子供だけお願い出来るか?」


「ええ、それでも構いません。でも攫われていた子達なので何人か大人の人が一緒の方が安心なのでは?私がこの子達と一緒にあちらの大きな建物の方へ泊まっても良いですが。」


「いや、そこまでして貰うのは申し訳ない大人を何名か同行させよう。私が移転する時に同行出来るのは一人だけなので、子供だけ運んでから歩いて案内してくる。一刻は掛かると思われるからそれまでに子供達の食事をお願いしても良いか?」


「ええ、大丈夫です。大きな建物の方に案内してあげて下さい。そちらに粗末ですが、夕飯も用意しておきますね。」


「助かる。この少年は怪我をしているからここに置いていく事になるが良いかな?」


「ええ、大丈夫です。気をつけて行ってらっしゃい。」


「ありがとう。」


 そういうとヴィルさんは消えた。






「待たせた。もう調べは終わったのか?」


「探索をしてもらってここの場所はもう調べは済んだよ。盗賊は縛って子供達が閉じ込められていた所へ放り込んだ。出られないように結界も張った、魔法が使えないように首輪も魔法を使える全員に嵌めたから危険は無いだろう。」


「成る程、隷属の首輪か、よくギルドが貸してくれたな。」


「シュタウフェンベルク伯の所の騎士達は有名なんだよ、強者の護衛と言う事でな。そんな者達が六人全員殺されていたんだ、盗賊は凄腕か、魔法を使える奴か、又は凄い魔道具を持っていると考えるだろ。」


「成る程、それで魔法使い用に貸し出してくれたのか。」


「そうさ、一応強者と名の通っている俺等を無くすのはギルドにとって損失になるからな。融通してくれた。」


「ところで、ここは寒い。子供だけでも私の知り合いの所で一晩泊めて貰えるように頼んできた。子供達は私が移転で運ぶ。大人も寒いだろうから泊まっても良いそうだが、どうする?酒は無いが夕飯付きだ。」


「飯か、まともな物を何日も食べてないから嬉しいが、盗賊の見張りが要るだろう。全員は行けないな。」


「結界を張っているなら大丈夫だろう。仲間が助けに来ても壊せん。毒も盛ることは出来ないだろう。」


「いや、空気は入るからな、どんな方法で殺されるか分からん。誰の指示で伯爵家の息子を攫ったのか口を割らせる前に死なせられん。くじ引きだな。五人はここに残そう。」


「それは任せる。一人ずつ子供を運んで来る。」



   *     *     *



「くそ!くじを考えた俺が居残りだ!」


「ははは、悪いなライナー、俺たちはご招待にあずかって来るぜ、俺のマント貸してやるからな!」


「こんな大勢分の布団は泊めて貰う所にも無いだろうよアルバン、いいよ持って行け。ここから一刻程の所なんて、襤褸屋だろうさ、暖炉くらいは有るかも知れんがな。」


「この季節は壁があって床が有れば有難い。悪いな。ライナーとジーモン。パンが余計に有れば明日貰って来てやる。」


「期待はしないがあったら宜しく頼むエルンスト。」


 そこへもう一人を運びに来たヴィルが


「食事の話か?余分にあったら運んで来よう。なにぶん急な話で、一人で用意してくれているから余分が有るかは判らないがな。」


「師匠、それなら黙っていてくれたら良かったのに、変に期待しちまうじゃ無いか」


「ぷっ、そうだな、考えなしに済まない。この子を連れて行ったら皆を迎えに来る。用意しておいてくれ。」


 ヴィルは最後に残った子を抱えて消えた。





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