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3 クリスマス

 


 十二月二十五日は水曜日で普通に仕事だった事もあり、年末に海外旅行で一週間一緒に過ごす予定もあったので彼とは何の約束もしてなかった。

 その代わり、九州からこちらに出張で来る友人と他の数名で久々に食事の約束をしていた。

 二十五日の夕食と言う事もあり、絶対に予約を取って無いと食事にあり付け無いと思い、彼と良く行ってた美味しくて、駅にも近い店を予約した。

 予約が取れたので前に居た会社の同僚の女子四人が久しぶりに集る。年齢はバラバラだったが、気の合う仲間に久しぶりに会えると思うとその日が待ち遠しかった。


 何年ぶりだろう。前の会社を辞めてもう四年過ぎたから三年ぶり位かな。皆近況を知らせあって、美味しい食事とお酒が進んだ。

 ちょっと飲み過ぎたかな?お手洗いに行こうと移動してふと入り口の方を見ると予約席にご案内しますとボーイさんに案内された二人の客の顔が見えた。

 一人は私の彼だった。

 あら、彼も誰かに食事に誘われたのかなと連れの顔を見ると私の会社の後輩だった。

 彼女は彼と部署が違うので接点は無いはずだけど、同じ会社だし、何処かで知り合う事もあるのかな。


 トイレから帰って、彼が食事に来てる事を話すと、私が結婚を決めた相手の顔が見たいと皆んな興味深々で、紹介してと言ったが、他の連れが居るので気づかれないようにそっと顔だけ遠くから見てよ、と彼の座った席を教えた。


 彼の席はちょっと隠れた位置に有るがトイレに行く時に丁度角度的にチラリと目に入るようなっていた。そこからだけ彼の横顔が良く見えた。

 一緒に食事をしている元同僚達が一人ずつ立ってトイレに向かった。

 良い男ね!と囃し立てられ苦笑いする私。

 三人目の元同僚がトイレに行って帰って来たが、顔色が悪い。どうしたんだろう。飲み過ぎちゃったかな?

 私も、帰る前にもう一回トイレに行こうと席を立ち、彼の方をチラリと見た。


 キスをしていた。


 彼が私の後輩とキスを。


 フラフラと足が勝手に彼に近づく。人の気配がしているだろうに、目の前で彼らはキスを辞めない。

 挨拶のようなキスでは無い。深い恋人のキス。

 女の方が私に先に気づき大きな目をこれ以上開かないと言う程大きく開いた。


 その目を見た彼も此方を見た。

 手が彼の頬をバチンと叩いた音が響いた。


「貴方と結婚はしない。婚約は解消するわ!旅行もキャンセルね。私の後輩とだなんて、最低!さよなら。」


 吃驚する彼


「ま、まってくれ。$€%#+・・・」


 何か聞こえたが、待てない。

 振り向くと元同僚達が直ぐ後ろで心配そうに立っていた。


 かなり大きな声をあげたようで、周りが騒ついていた。


 元同僚達は私を抱きしめて、腕を取って外に出してくれた。会計も済ませてくれたようだ。私のコートとバックを渡してくれた。


「今は一人で居ない方が良いでしょ。カラオケに行こう。」


 と言ってくれて駅の方に向かった。そこで私は大泣きした。泣いて泣いてもう水分はこれ以上出ないと言うほど泣いた。


 でも皆んなを家に返さなきゃ。明日も仕事よね。と頭の中に冷静な私も居る。二時間私が泣くのに付き合ってくれて、もう大丈夫だからとカラオケでの代金と食事代も渡して解散した。カラオケの代金を皆んなが渡してくるから、それは受け取れないと断った。


 明日休みだったらこのまま付き合えるのにって皆んな言ってくれたけど、社会人だからそんな訳には行かないよ。大丈夫。川に飛び込んだりしないから、さぁ、帰って。又会おう。って解散した。


 最後に一人が私に近づいて、


「皆んなで証拠の写真とビデオは撮ったから、相手が何か言って来たらこれ使って!確りするのよ!携帯に送るのは貴方が必要だと言った時にするから、今はこんなの見たく無いでしょ。いつでも電話頂戴。」


 って、うん、今もこれからも、もうあんなの見たく無いよ。



 何故私に結婚しようって言ったの?


 何故ご両親に合わせたの?


 何故私の後輩なの?


 なぜなの、なぜ




 翌日と翌々日、私は初めて病気以外で会社を休んだ。


 その後は会社は年末の休みになる。私は海外旅行の為に有給を使い一月十日迄の長い休みを取っていた。





ブックマーク、いいね、ありがとうございます。

とても嬉しいです。

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