27 痕跡
ログハウスの外へ出るとエルフは移転するから腕に掴まれと言った。
右手でヴィルさんの左腕を掴むと直ぐに目の前の景色が変わった。山の湧水の所だ。
「ここからは歩きだな、道案内を頼む。」
「分かりました。こっちです。」
二十分程で洞穴の場所に着いた。
洞穴の前で声を掛けて答えを待つが返事はなかった。レイラちゃんがやっていたように木を使い石を退けた。入り口から持って来た懐中電灯で中を照らして見たが誰も居ない。
一応中に入ってみようと小さな入り口から入りこんだが、ヴィルさんは身体が大きいので入れないようだ。
待ってて下さいと声を掛けて奥へ行くが、私達が出た時のままで兎もビニール袋に入ったままだ。
「やはり帰って無いようです。兎が置いて行った時のまま残ってますし、寝床の布も私が畳んだままになっています。」
布を四角に畳んでくるりと丸めていたが、その形のまま残っていて使われた形跡が無い。
兎は腐ると不味いから弁当箱と一緒に回収して外へ出た。洞穴が荒らされないように石を元に戻す。
「一回行った所へは魔法で直ぐに戻れる。あと一刻程探してみつからなければ君の家に戻ろう。」
「そうですね、すみませんヴィルさん、付き合わせてしまって。」
「いや、私が勝手に付き合っているのだ、ユミ殿が謝る事はない。」
私達は来た方向とは反対の方に進み探し回った。
と言っても大声をあげて名前を呼ぶのでは無い。ここには魔物がいるので声は出さずに人の通った痕跡を辿って行くのだとヴィルさんに教えてもらった。
私が『ウォルトくーん』と大声を上げて呼んでしまった結果なのだけれど。
魔物だけでなく盗賊もいる世界だ。
ウォルト君が捕まってなければ良いのだが盗賊は子供を捕えて売ってしまう。人身売買だ。
商隊は盗賊に襲われると大人はほぼ殺されてしまうそうだ。
だから商隊はギルドで依頼して屈強な冒険者を護衛として雇って目的地まで守って貰う。
「何に出会すか分からない。私から離れないように、認識阻害の魔法を一応掛けて行こう。」
と言って掛けてくれた。
この世界は怖い、直ぐに殺されるって、レイラちゃんとロウ君もそれで親を亡くしたのね。その二人をウォルト君は連れて逃げたのかしら?
人が通って草が踏まれている通り道のような所を辿って一時間以上歩いた頃複数の人に踏み潰された跡をヴィルさんが発見した。
ここで何かしてたのだろうか。踏み潰された草の道が先に続いているそれに沿って歩いて行くと突然ザザッと背の高い草むらの中から私達の目の前に人が飛び出て来た。
「ここで何をしている!」
と相手が言葉を発するとザザッと今度は後ろにも人が出てきた。
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