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26 親切なエルフ

 



 返事をし、玄関を開けて招き入れた。

 エルフは卓袱台の方を見て少し驚いたようだ。


「あの子たちは?」


「話せば長くて、取り敢えずお上がり下さい。子供が熱を出しているので、すみませんが、寝せてくるのでこちらに座って少々お待ち下さい。」


 エルフを座布団に案内した。床に直座りはちょっと可哀想かと私の座布団を差し出した。


「熱が有るのか?悪い風が体に入ったか。」


「昨夜は凄い熱でしたが、今朝は大分下がってほっとしました。でも子供の熱はまた夕方に上がる事も有るので良くなる迄まだ数日はかかると思います。」


「少し見てあげよう。」

 と言うとエルフは手をロウ君の方に翳して何やら呟いていた。


「うん、回復に向かっているようだ。このまま安静にしていれば大丈夫だろうが、もし熱が上がったらこれを飲ませると良い。」


 と何処からか出して渡されたのは、細い竹で作られたような小さな入れ物だ。コルクの蓋を取ると中には濃い緑の丸薬が数個入っていた。


「その子位だと一粒の半分をあげれば熱が改善されるだろう。大人は君位なら一粒、身体がもっと大きい人なら二粒だな。」


「熱を下げる薬ですね?」


「そうだ、それ以外の時は飲ませないように。」


「ありがとうございます。薬が無くて困っていたんです。助かります。」


 エルフは『んっ』と頷いて座布団の上に座った。

 寡黙なのか、照れ屋なのか、何にせよお薬を頂いたのでエルフ呼び改め、エルフさんに格上げだ。


 レイラちゃんはエルフさんを見て吃驚したのかずっと凝視していた。


「親切なエルフさんだから、心配しないで、お薬も頂いたから一安心ね。またお熱が出るといけないからロウ君はベッドで休んでいようね。」


 子供達に軽く歯磨きをさせてベッドに行かせた。レイラちゃんはこっちに居ても良いのよって言ったけど、ロウ君が心配らしい。一緒の部屋で過ごすようだ。


 エルフにコーヒーを入れて差し出した。

 彼はありがとうと受け取り、香りを確かめながら一口飲むとこちらに視線を動かした。


「彼らとは何処で知り合ったのだ?」


 エルフと私は卓袱台を間に対面して座っている。

 私はレイラちゃん達と合った経緯を伝えた。


「成る程、やはりこの島は他の場所とも繋がってるようだな。」


「繋がってる?何処と?」


「私の住んでいる世界のどこかの大陸とだ。あの子達が居た国の名を覚えているなら何処の大陸か分かるな、後で聞いて見るか。」


「そうですね、後で聞いて見ましょう。

 そこは魔物のいる世界なんですね。いつも繋がってるのでしょうか?それとも時々繋がるのでしょうか?」


「それは調べないと分からない。そのウォルトと言う少年は繋がっている時に元の世界に食べ物を探しに行って、繋がりが無くなって戻ってこれないのか、又は他の理由で戻れないのか、その子達が住んでいた洞穴も、どちらの世界に有るのか分からないな。多分私の世界だろうとは思うが、歩いて三十分ならばあちらの島の中と言う事もあるだろう。」


「何だかややこしいですね。そもそもこの島はどうなっているのですか?」


「この島、いや、あちらの島は魔導士用の移転の中継地点だ、私の住んでいる大陸とは別の大陸と島を結んで、この島から他の遠くの大陸へと移転の魔法で行けるように作られていた。しかし何故か君の世界の島とあの島が繋がってしまったようだ。」


「成る程、何らかの理由で島と島が繋がったのですね。移転の魔法ですか、その魔法を使った為に繋がったのでしょうか?」


「それは何とも言えない。どうして繋がったのかは我々では知る術が無いのだ。」


「そうなんですか、エルフさんも魔導士なんですか?」


「ああ、魔導士だ。私にはヴィルフリート・フォン・バッツドルフと言う名前がある、ヴィルフリートと呼んでくれたまえ。」


「あ、失礼しました。家名では無くお名前の方をお呼びして良いのですか?」


「ああ、構わない。長ければヴィルでも良い。」


「それではヴィルさんとお呼びしますね。私の事はタナカでもユミでも構いません。」


「ん?ユミとは?そなたはヨシミと言う名ではないのか?」


「ユミとは私の渾名です。友人達にはその名で呼ばれていたのでユミの方が慣れているんです。」


 ヨシミなんて名前呼ぶ人は父とお婆ちゃんくらいで、他の人からそう呼ばれるのは何だか変な感じなのだ。


「そうか、では私もユミ殿と呼ぼう。」


「ええ、それでお願いします。」


「それで、取り敢えず私はあの子達が居た洞穴に行って見ようと思います。ウォルト君が帰って来てたらあの子達が居なくて心配するでしょうから。」


「ならば私も行こう。」


「子供達を置いて行くのは心配なので、ここに残って貰うと安心なんですが。」


「ここには結界を張って行く、何が来ても安全だ。

 しかし洞穴に着くまでに魔物がいたら危険だ、一人で行っては命に拘る。君に何かあったらあの子達はどうするのだ?だから私も一緒に行く。子供にはここから出ないように言って早く戻って来よう。」


「分かりました。あの子達に話して来ます。」




 子供達は聞き分けが良く、この家で待ってると言った。

 それ程遅くはならないと思うけど、水分補給のお茶とおやつと、万が一遅くなった時の軽食のサンドイッチを卓袱台に乗せてふわりとラップを被せレイラちゃんにお腹が空いたら二人で食べてねと伝えた。


 レイラちゃんもじっと待つだけでは可哀想なので、紙と鉛筆、消しゴムを、絵を書いても字の練習をしても良いよ、と使い方を説明して渡した。


 ロウ君はまだ熱が有るからなのか、布団に入れるとすぐに寝ついた。

 目が覚めたら飲み物をあげてとレイラちゃんに頼んでおいた。

 ずっと面倒見てきたから大丈夫と言って笑っていた。

 堪らず私がキュッとハグしてしまったのは仕方のない事だと思う。






いつもお読み頂きありがとうございます。

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