18 畑へ水引き
管理人用ログハウスへ引越した翌日、本当にエルフは現れた。
「コーヒーを馳走になった場所に行ったが鍵が掛かって、呼びかけても応答が無かった。ここに住んでいたご老人に其方の行方を聞こうとしてここに参ったのだ。会えて良かった。」
「お爺さんはここの仕事を辞めて引っ越しされたんですよ。これからは私がこの島を管理します。だから、この管理人の家の方に引っ越してきました。もしまた来ることがあれば、ここを尋ねて下さい。でも昼間は作業しているので、食事時しか居ないかもしれません。」
「分かった、尋ねる事があれば食事時に来よう。」
「あの、今日はお水を引いて頂けるんですよね。」
「ああ、そうだ、約束したからな。で、水の場所は何処が良いのだ?」
「この建物の裏の方です。案内します、こちらです。畑に近いと、水の流れで土が流されますよね。だから、少し畑より離れた所にしたいんですよ。」
「土が流されるか、そのまま水が流れなければ畑に近くても良いのではないか?」
「そんな事が出来るんですか?」
「岩から出る水を樽で溜めて、樽から流れ出た水は元のあの山の流れの所に返すだけだ。ここにはそなたの他に人はいるのか?」
「これからログハウスを宿泊場所として貸し出すので、お客さんが来る予定です。まだ少し先の話ですが。」
「ふむ、そうか、ならば。」
エルフが何かを呟くと岩が現れた。その岩の直ぐ前にどこから取り出したのか、ワインやウイスキーを作るのに使うような樽の形の石が出て来て、設置された。大きな石樽だ。それには側面の上の方に穴が空いていた。
石樽の穴側の前の地面に深さが二十センチ、直径が六十センチ程の石の器が置かれた。器の底に穴があり、模様が彫ってあった。長いリボンの模様の中にうねうねとした模様が描かれたデザインだ。
もう一度エルフが何かを唱えると大きな岩の横のひび割れの所から水が出てきた。ひびのある場所の下が段になって水を誘導するようにU字の岩が飛び出していて、岩から出た水はその飛び出した所を伝って直ぐ下に置いてある石樽に流れ落ち溜まっていった。
石樽の穴の所まで溜まった水は穴からピューと飛び出して石の器に上手く着地している。石の器の水はある程度溜まるが、それ以上は増えない。下に空いた穴から何処かに流れ出しているようだ。
「この石の樽があった方が水が沢山欲しい時に汲み上げ安いだろう。余分な水はあの山の流れに帰っていっている。土が流される事はない。」
「ありがとう御座います。畑の近くに水場が出来て助かりました。この一番下の器の中で野菜を洗っても大丈夫ですか?」
「ああ、土を払いたいのか。」
エルフがもう一度何かを呟くと石の器のリボン模様が増えていた。
「大丈夫だ穴は土では詰まらない。いつも綺麗な状態を保てるようにしたからここで野菜を洗うと良い。このまま飲み水としても使える。」
「わかりました。ありがとう御座います。ここに水が有ると大変助かります。もう、お昼ですね。たいした物は出せませんが、お昼を食べていかれませんか?お礼のコーヒーの前に。」
「そうか、ではお言葉に甘えよう。」
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