1 年末セール
目を止めて下さりありがとうございます。
新しい物語始まりました。皆様が最後までお付き合い下さるよう、頑張って行きます。宜しくお願いします。
年末の稼ぎ時、駅ビルで年末セールをやっていた。駅ビルの中のショップ全部が参加した年末セールのようだ。
年末の三十日、流石にもう他の社員は冬休みを取って休みに入ってるが、私は部下のミスで今日の休日に会社に出勤してフォローの仕事をしている。休み明けでも普段なら間に合うのだが、長期休暇を取っている私は、時間が今日しか空いていなかった。
この日は明るいうちに家に帰りたい一心で仕事を済ませた。
夕方、空が茜色に染まる頃、自宅の最寄駅で、買い物をしたら、年末セールのくじ引きの券をレジで貰った。
本当は明日から海外に行く予定だったのが、急にキャンセルになった。それで予定を変更して、祖母の家に里帰りする事にした。仕事の事やその他色々でむしゃくしゃしていた私は、ついつい買い過ぎて、貰ったくじは五回引ける分になっていた。
くじは取手をぐるぐる回して小さな玉が八角形の箱の中から出て来るガラガラくじだ。
青色は三等のタオル、黄色が二等のお米十キロ、銀色が一等の商品券壱万円分、金色の特賞の商品は当たってからのお楽しみと書いてある。ハズレは赤でポケットティッシュ一個だ。
もう一等は出てしまったみたいで、横棒二本で記載が消してあった。
丁度ポケットティッシュを切らしてたから五つ貰えらる、と考えガラガラと四回目を回し終わった。全て赤。最後の一回を回すと、ん?黄色?
ガランガランガラン
赤い法被を着た男性がベルのような物を掲げて大きな音を響かせる。
私が引いたのは黄色ではなく金色の玉だったのだ。
特賞だ!お楽しみの商品とは?
「おめでとうございます!大当たりー!特賞が出ました!何と特賞は島丸っと一島です!凄いですね!島ですよ!」
法被を着た五人の人が大きな拍手とベルを鳴らして賑やかにおめでとうございますを連呼している。
周りのお客さん達が
「島ですって!凄いわね。」
「えー島なの!」
と言っている声が聞こえる。
えっ?島?あのアイランドの島?まさかね。
「では詳しい説明はあちらの奥の事務所で致しますので、事務所まで移動お願い致しますね。彼女を事務所迄案内してあげて。」
若い法被を着た女性が、では此方にどうぞと案内してくれる。私はその人の後ろを付いていった。駅ビルの間の細い階段を上がる。
こんな所に階段があったんだ。毎日通るのに、どれだけ自分が周りを気にしてないのかが良くわかる。
* * *
特賞を当てた女性が見えなくなると、“島“と書いてあった所は“大型テレビ“という文字に変わり、横棒が二本引かれた。
島が特賞だと吃驚していた周りの人達の記憶はいつの間にか“島“から“大型テレビ“に変わっていた。
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