第4話:宴会
宴会当日を控え、厨房で最後の仕込みを進めるルークの前に、金色の光が現れた。現れたのは、いつもの料理神グラティア。
「やっほー、ルーク!今日は何だか楽しそうじゃない!」
「グラティア様……ちょうどいいところに来てくれました!」
「ん?何々?相談事?」
ルークは笑顔でテーブルを指さした。その上には、試作した「ゴールドタートルの香草煮込み」が湯気を立てている。
「これ、宴会で出す料理なんですけど……正直、味に自信がなくて。グラティア様、よかったら味見してもらえませんか?」
グラティアは目を輝かせた。
「ほほぅ!私に味見を頼むなんて、なかなか肝が据わってきたじゃない!」
グラティアは椅子に座ると、スプーンを手に取り、香草煮込みをすくった。その瞬間、湯気と共に立ち上る香りに彼女の目がキラリと光る。
「んん~、この香り……良いわね!さすが料理神の加護を受けた子ね!」
スプーンを口に運んだ彼女は、一瞬目を閉じ、じっくりと味を楽しんでいるようだった。だが、次の瞬間――。
「うわぁ~っ!これ、美味しいじゃないの!……でも、ちょーっと惜しいわね!」
「惜しい?」
ルークは身を乗り出す。グラティアはスプーンをテーブルに置きながら、にっこりと微笑んだ。
「香草の風味は良いけど、もう少しだけ塩を足してみると、全体の味がもっと引き締まるわよ。あと、スープの甘みを少しだけ抑えると、この肉の旨味が際立つわ!」
彼女の具体的なアドバイスに、ルークは感心して目を輝かせた。
「なるほど……さすがグラティア様!すぐに試してみます!」
ルークが言われた通りに塩を調整し、スープの甘みを控えると、たしかに香りも味も一段と洗練されたものになった。ルークは改めてグラティアに一皿差し出す。
「もう一度お願いします!」
グラティアは楽しそうに笑いながら再びスプーンを口に運んだ。
「……ふふふ、これよこれ!完璧じゃない!これならどんな宴会でも大成功間違いなしね!」
ルークはほっと胸をなでおろした。
「ありがとうございます!グラティア様のアドバイスがなかったら、ここまでの味には仕上がらなかったです」
「いいのよ。私がこうして味見するの、楽しいんだから!また何かできたらいつでも呼んでね!」
彼女は笑顔を浮かべながら立ち上がり、金色の光と共に消えていった。
宴会当日、隣村から訪れた村人たちは、ルークが作った香草煮込みに舌鼓を打ち、次々と絶賛の声をあげた。
「この肉、こんなに柔らかくて美味しいのは初めてだ!」
「味付けが絶妙だね。スープのコクが素晴らしい!」
会場は笑顔と感謝の言葉で溢れ、ルークの料理店はさらに評判を呼ぶことになった。
その夜、宴会を終えて帰宅したルークは、暖炉の前で満足そうに座っていた。
「グラティア様のおかげで、宴会が大成功でした。次はもっとたくさんの人に、もっと美味しい料理を届けられるよう頑張ります!」
どこからか微かな声が聞こえる。
「期待してるわよ、ルーク。また呼んでね!」
ルークは笑顔で頷き、次の挑戦を胸に誓った。