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第3話:新たな挑戦

次の日の朝、ルークは手のひらに収まる黒い玉ねぎをじっと見つめていた。冒険者のリーダーからもらった「グリムオニオン」という食材だ。


見た目は普通の玉ねぎに近いが、表面はツヤのある黒い皮に覆われており、握ると妙にずっしりと重い。何より切った時にどうなるのか、想像もつかない。


「さて、どうやってこれを料理するか……」


台所に立ち、包丁を構える。だが、いつも頭に浮かぶ加護による調理の直感が、今日は妙にぼんやりとしていた。


「ん……?なんだこれ?」


普段なら即座に浮かぶアイデアが、今回はまるで霧の中に隠れているようだ。


「料理神の加護があっても、こんなことがあるんだな……」


少しだけ不安になりながらも、ルークは手探りで調理を進めることにした。まずは半分に切ってみる。


包丁がグリムオニオンに触れると、驚くほど硬い感触が伝わった。ようやく切り分けた中身は濃い紫色で、玉ねぎ特有の香りが漂ってくる……と思いきや、突然ツンとした刺激臭が鼻をついた。


「うわっ!……何だこの匂い!」


あまりの刺激に目が涙でぼやける。慌てて鼻をつまみながら、彼は切り口を改めて観察した。


「これ、生で使うのは無理だな。加熱すれば匂いが変わるのか……?」


ルークは試しに切り分けたグリムオニオンをフライパンでじっくり焼いてみることにした。すると、次第に刺激臭が甘い香りに変わり始める。


「これだ……!加熱で香りが変わるタイプか!」


彼はさらに工夫を凝らし、豚肉と炒めたり、スープにして味を確認した。


調理に没頭する中、家の外から声が聞こえた。


「ルーク、起きてるかーい?」


現れたのは村人たちだった。昨日の冒険者が村を去る際に「ルークの料理は最高だ」と言い残したことが、早速村人たちの間で話題になっていたのだ。


「なんだかここ数日で急に評判が上がったねぇ。今日は私たちも食べさせてもらおうと思って来たんだよ」


「新しい料理ができたって噂を聞いたぞ!」


慌てるルークだったが、同時に自分の料理をもっと知ってもらうチャンスだと気づき、笑顔で村人たちを招き入れた。


「ちょうど新しい料理を試していたんです。ぜひ食べてみてください!」


村人たちのために、ルークが作ったのは「グリムオニオンのキャラメリゼソースを使った肉料理」だった。じっくり炒めたグリムオニオンは香ばしい甘みを引き出し、スパイスで味を調えた濃厚なソースが豚肉に絡んでいる。


「はい、どうぞ!」


ルークが自信を持って差し出すと、村人たちはひと口食べて目を丸くした。


「なんて美味しいんだ!このソース、まるで玉ねぎの概念が変わる味だよ!」


「こんなの初めて食べたよ。甘くてコクがあって……口の中で広がる味わいが最高だ!」


村人たちが次々と感想を述べる中、ルークはようやく一息つくことができた。


「よかった……なんとかうまくいったみたいだ」


マーサも満足げにうなずく。


「お前さん、本当にすごい子だねぇ。この村にこんな才能が隠れてたなんて、誇らしいよ!」


ルークは照れくさそうに笑いながら、次の目標を心の中で考えていた。


その夜、ルークは暖炉の前でグラティアに報告をする。


「グラティア様、今日は冒険者からもらった『グリムオニオン』を使ってみました。最初はちょっと苦戦したけど、なんとか村の人たちに喜んでもらえました!」


金色の光の中から現れたグラティアは、ルークの顔を見て満足げに微笑む。


「それでいいのよ。失敗や迷いがあるからこそ、料理って面白いの。毎回完璧じゃなくても、あなたの一歩一歩が人の心を動かすわ」


「……ありがとうございます。これからも頑張ります!」


「期待してるわ。次はどんな料理を作るのか、楽しみにしてるからね!」


グラティアの励ましを胸に、ルークはさらに成長を誓った。

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