表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

エピソード1:相棒は自分の生徒です!?(9)

『新しい魔法を作るのですね?』


 どこからともなく聞こえてきたのはナビの声。


「そうよ」

『では、魔道書に新しい魔法を登録してください』


 ナビの声に合わせ、目の前に図鑑サイズの分厚い本が開かれる。

 ぴらりとめくれた1ページ目には、何も書かれていない。


「好きな魔法を登録できるのよね?」

『あなたの想像力のままに』

「じゃあ、一撃必殺の特大威力なやつ! 撃つとめちゃくちゃ気持ち良いのを!」


 日頃のストレスをガツーンとぶつけるのだ。

 私もすっきり、見た目も派手でお客さんもわっくわくなやつがいい。


『もっと具体的に指定されますか? それとも、こちらでいくつかご提案しますか?』


 そんなことまでできるのか。

 AIすごいなあ。


「せっかくだから、自分で考えたいわね。会場ごと吹き飛ばすようなやつはできる?」

『可能です』


 できるんかい!


『ただし、新規登録で消費される最大SPを差し引くと、最大一発を発動するために必要な呪文詠唱は、早口でも3年分になります』

「年!? え? そんなの試合終わっちゃわない? どういうこと? あと最大SPって?」

『魔法の新規登録には、その効果によって最大SPを使います。また、登録された魔法の発動には、呪文の詠唱とSPのが必要です。消費SPを低くするためには、呪文を長くする必要があります』


 いやまあ……そりゃあ縛りはあるよね。

 強すぎると思ったんだ、このスキル。


「ちなみに最大SPって、増えたりするの?」

『最大SPは、あなたが配信中に稼いだ投げ銭の金額と、アバターの特性を考慮して算出されます。バトルコロシアムでは一回戦ごとに再計算が行われますが、魔法登録により消費した分は、今年の大会が終わるまで回復しません』


 うへー、厳しい!


「たとえば、私の最大SP240を全部新規登録に使った場合、そのあと投げ銭で最大SPが10上がったとしても、250じゃなくて10にしかならないってこと?」

『その通りです』


 これは……よく考えないと、試合前に積むかも。


「じゃあさ……」


 それから私は、ナビを相手に登録魔法の策定をした。




 一時間ほど議論を重ね……。


『こちらの内容でよろしいですね?』

「おっけー。お願いするわ」

『面白い内容だと思います』

「ありがと」

『通常空間に復帰します』


 景色がコロシアムに戻る。


「おそい! どれだけ待たせるの!」


 一人で練習をしていたらしい西表さんがこちらに気付き、まなじりを釣り上げた。


「あ、ごめんなさい。忘れ……西表さんと組むのだから、よく考えなくちゃと思って」

「今、忘れてたって言いかけた!?」

「お待たせした成果はちゃんと見せてあげるよ」

「ちょっと! 無視!?」

「帰ってもよかったのに、待っててくれるなんて優しいよね」

「べ、別に! 仕事だからよ! 練習もしたかったし!」


 おお……ここまで照れられると、こっちも恥ずかしくなるよ。

 でも、彼女の扱い方がちょっとわかってきたかもしれない。


魔法創作マジッククリエイション!」


 私の声に応じて、目の前に魔道書が出現した。

 ぺらりと1ページめくる。

 そこには先程設定した呪文が書かれている。


 カンペ機能って便利だね。


「小さき火よ、弾けて煙れ! ファイアーブレッド!」


 呪文を唱え終わると、杖の先からピンポン玉ほどの火球が出現、まっすぐ西表さんへと飛んでいった。


 視界の端に表示された自分のステータスは、240あった最大SPが、100まで減っている。

 そして、今の魔法で現在値が99に減少した。


 効果にしては呪文は長め。

 必要最低限の効能で、消費SPを極限まで下げた。


「こんなのがスペシャルスキル……?」


 西表さんは不機嫌そうな顔で火球をひょいと避けた。

 その反応は予想済み!


 ボフンッ!


 彼女の真横で火球が爆発。

 大量の煙を撒き散らした。

 コロシアムの半分近くを覆うその煙は、彼女の視界を完全に奪う。


「目くらまし? でもこれじゃああなたも狙いはつけられないでしょ」


 煙の中からは余裕の声。


 今の魔法は、何かに衝突するか一定距離進んだところで、殺傷力皆無の煙を撒き散らすものだ。

 もちろんこれだけで、相手を倒せるなんてことはない。


 私は魔道書の2ページ目を開く。

 そこには、先程とは異なり、長い呪文が書かれている。


「猛き赤、無情の光よ

 集いし赤、焼き尽くす光よ

 狂えし赤、滅ぼす光よ

 全ての赤よ、全ての光よ」


「何をぶつぶつ言って……まさか、詠唱の長さで威力が変わる特性が!?」


 そこに予想がいきつくあたり、汎用性のあるスキルを持っているVtuberもいるってことね。

 でも惜しい! 私のはまったく別の攻撃だよ!


「くっ!」


 西表さんは、煙幕から真上に飛び出した。


「我が敵を灰燼と化せ! ブラッディデストロイヤー!」


 AIのつけた大仰な名前を叫ぶと、杖の先から真っ赤な極太ビームが発射された。


「なっ!?」


 両手を前に出し、それを防ごうとする西表さんだが、ビームは彼女を飲み込み、ステージを覆う不可視のドームを炙る。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


ブックマーク、高評価での応援をなにとぞ! なにとぞよろしくお願いいたします!

(この下にある★5をぽちっと)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ