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私には異世界の常識が無かった。街へ出かけてもいなかったから、買われて今まで屋敷の中や庭の世界しか知らなかった。
アレン様がこの国の重鎮で偉い貴族様だとはミラに教えてもらったが国の情勢や流行り等全くわからない。
そして、国の一大事。
聖女様が現れたという話をキラから聞いた。
「聖女様って国にとって大事な方なんですか?」
「あぁ、国に居るだけで奇跡的な魔力で農作物は豊かになり水は清浄され民は食べ物に困ることは無くなる。」
聞くだけで凄さが分かった。
一体どんな人物か聞いたらとても美しいという。つまり私にとってはそうではないという事。
聖女様は数十年に一度のタイミングで誕生するという。
今回の聖女様は私位の年齢、成人した大人の女性らしい。発見されたのは国の重要資源の禁区の森で倒れていたところを王国が保護し、彼女の体調が戻ったところで魔力の発露に気づき国の正式な聖女となったらしい。
「すごい方なんですねー。」
この時の私はただの噂話をしている気だった。
これから起きる出来事に何の不安も感じていなかった。
ただ毎日のゆったりとした時間に安心し切っていたのだ。
今夜は満月。今日こそは、と意気込む私にまぁまぁ、と宥められベッドに横になる。
アレン様と向かい合い視線が重なる。美しいアメジストの瞳が月の光でいつもより煌めいて見えた。
「…まだ緊張してる。」
いいのか?、と聞かれ私は頷き自分から彼に擦り寄った。
この瞬間、私は彼を本当に好きなのか、買ってもらったから好きなのか、迷いがあったがこんなにも大事にしてもらい好意を示してくれているのだから余計な事は考えず自分に素直になろうと思った。
「好きです、アレン様。」
私の言葉に目を見開き驚く彼。そして嬉しそうに目を細めて頭を撫でては深いキスをくれる。
しばらく繋がって、唇を離し囁く。
「…今日も限界までするから、嫌なら言ってくれ。」
両手を重ね握り合い、再びキスが始まる。
身長差や体格差で不釣り合いなところはあっても気持ちは同じ。お互いを求め合っていた。
「俺の姫は誘惑が上手だね。」
キスの余韻で惚けていたらそう揶揄われる。
そんなつもりは無いと訴える前に愛撫が始まり何も言い返せない。
満月の夜、ようやく身も心も繋がった。
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