8
朝の目覚めはおはようのキスから始まった。
「…おはようございます。」
「おはようカナデ。そんなに気を落とさないで。」
これから何度だってできるんだから。と、アレン様は私に気を使う。
そう、昨夜最後までできなかったのだ。
私があまりに痛がるものだから抱き合って寝ただけだ。
アレン様にはしつこいくらいに謝ったが何だか自信を無くしてしまった。
「…どうか、捨てないでください。」
私の目から涙が溢れると、そっと拭い額にキスをしてくれるアレン様。優しい彼を満足させてあげられなかった事がとても悔しいのと悲しいのとでぐちゃぐちゃになった。
「こんな事で捨てるものか。ずっと一緒だ。」
紫の瞳に射抜かれ私は押し黙る。
「肩の力を抜いて、朝食にしよう。」
こくん、と頷き二人で寝室を出た。
ダイニングまでの長い廊下ではミラとキラが目を輝かして期待の眼差しを寄越す。
残念、昨夜は失敗しました。と、後で話そう。
自分にがっかりしていると、アレン様は私を突然お姫様抱っこをした。
「きゃっ!どうしたんですか!?」
「俺のお姫様のご機嫌がよろしくないようだから。」
そして、唇にキスをする。
どうか笑顔を見せて?と、優しく微笑むアレン様。
こんな事をさせてしまう私が悪い。くよくよせず次に期待だ。上手くできなくてもアレン様は捨てないでくれると言ったのだ。信じよう。
「アレン様、もう大丈夫です。ありがとうございます。」
にこり、と笑うとアレン様もつられるように微笑んだ。
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