28
アレンの屋敷に到着した。
今か今かと鉄格子の入口の前でうろうろと歩くアレンの姿が馬車の窓からみえた。聖女はクスッと笑い、カナデを優しく起こしてやる。
「カナデさん、ほら、一番大切な方がいらっしゃいますよ」
うーん、と目を擦りながら起き上がるカナデ。屋敷の近くまで到着した事に気づき、背筋をピンと伸ばす。
緊張するが、聖女にもう我慢しなくて良いと言われ戸惑う。
ガチャりと馬車の扉が開く。
そこには、アレンが立っていた。
「あ、…アレン様…。」
「カナデ、お帰り。」
手を引かれてアレンの胸に抱かれる。久しぶりの彼の胸の中、歓喜の涙が出る。今日は泣いてばかりだ、と自嘲した。
「私はこれで。今後のことはまた追って連絡致しますわ。それでは、お二人ともご機嫌よう。」
微笑ましそうに口元に手を当てて笑う聖女。
彼女は満足そうに王宮へ帰って行った。
二人きり、庭の大きな木の下で腰を下ろす。
「もう二度とカナデを離さない。」
「はい、私もアレン様から離れません。」
二人は手を繋いだまま、会話する。
「カナデ、俺は君の目が特殊だから君を選んだのは事実だが、二人で過ごした掛け替えのない時間が何より大切なんだ。」
サラサラとアレンの黒髪が風に靡く。アメジストの瞳にはカナデしか映していない。
「はい、私もアレン様が美しいと思う気持ちは変わりませんが、二人で過ごした時がどれだけ幸せだったか。」
手を握れば握り返してくるアレン。どんなに言葉で伝えても伝えきれない愛情もある。カナデの唇を親指でなぞる。
「…キス、したい。ダメか…?」
「私、汚くないで、」
汚くないですか?、の言葉を最後まで言わせないよう口で塞ぐ。優しいキスから段々と深いものになっていく。
二人を繋ぐ唇と両の手。
「…アレン様、…愛しています。」
「先に言われてしまったな。俺こそ、何よりも君を愛しているよ。」
例え他人には醜く見えていても私にとってはとても綺麗なアレン様。彼は見た目だけじゃなくずっと大切にしてくれた愛情深い方。例え禊が終わって生まれ変わったとしてもレインズの事も事実。
それでも尚、愛を示してくれるアメジストの瞳に救われる。
私は最初から幸せ者だったのだ。
白薔薇を一輪、棘を取り除き髪に飾ってくれるアレン様。
「死が二人を分つ時まで。ずっと一緒だ。」
「はい、ずっと一緒です。」
私も白薔薇を一輪取り、棘を取り彼の左胸ポケットへ差し飾った。
今日は雨のち晴れ。とても美しい虹が出ていた。
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