25
目が覚めたら私の部屋だった。白い天蓋付きのベッド。横には白い薔薇が飾られており辺りを薔薇の香りが漂う。
夢を見ていたのか記憶が曖昧だった。
夢だとしたら途轍もなく酷く悲しい、生き地獄の様だった。
愛しているアレン様もきっと私が汚いと思うはず。
自分を抱き締めるよう縮こまり爪が二の腕にめり込む。痛みが現実を突きつけた。
嗚呼、夢じゃないのだ。私は穢れている。
コンコン、とノック音。
それに返事ができない私は隠れるように布団に潜り込んだ。返事が無くともノックをした人物は部屋へ入って来た。
「……カナデ、何も怖いことはないよ。出ておいで。」
優しい声。一番会いたかった人の声。だけど、穢れた自分には相応しくない方。とてもじゃないが顔を合わせられなかった。
「…カナデ、」
「出て行って下さい…。」
言葉を遮るように彼から背いた。自然と涙が出てきて言葉が止まらない。
「もう、穢れた私など嫌でしょう?どうか時間を下さい。」
涙声、震えた唇。私はアレン様の優しさに縋れなかった。
「嫌になるものかっ!…また明日、…次は顔を見せてね。」
ガチャ、と扉は閉められた。私は心底ホッとした。
明日までに荷物をまとめて出て行こう。何も出来ないけどここには居られない。
少しずつ少しずつ荷物をまとめる。
アレン様から頂いたアクセサリーや小さな細工物が眩しく見えた。なんて幸せな時間を過ごしていたのだろう。
好きな人に好きになってもらえる奇跡。それはなんて幸福なこと。私は確かに幸せだったのだ。
コンコン、再び扉がノックされる。
次は一体誰だろうか。また布団に潜り込み隠れる。
扉の向こう側から話しかけられる。
「カナデさん、私とデートしましょう?」
声の主は聖女ユウリ様だった。
デートとは一体どういう意味だろうか。
「本当は私しか行けない場所です。今の貴女に絶対に必要なところです。私が案内致しますわ。」
絶対、なんて言われたら私も気になってしまう。
扉越しだった距離は開かれたことで縮まり私は聖女様と向き合った。
「どういうことですか…?」
「あぁ、声が届いて良かった。明日昼頃にお迎えに上がりますので私と一緒に行きましょう。」
私の手を両手で握り力強い目で祈りにも似た約束を交わした。聖女様も目元が赤く、きっと泣いていたのだと思われた。
「…私のために泣いてくれるのですか。」
「えぇ、私にとって同郷の人。大切な方ですもの。それに大切なことに気づかせてくれた貴女だから。」
では、と聖女様は去っていった。
明日は一体何処へ連れて行かれるのか分からないが私にとって絶対に必要と仰っていた。
何か理由があるんだろうが今の私には明日を生きる意味となった。




