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この異世界ではご主人様はとても生き難いだろうな、と思いちらりと横目で観察していると、さっきまで付けていなかった白い仮面をつけていた。きっと、彼なりの防衛なのだろう。
「着いたぞ。足元に気をつけて降りるんだ。」
私の手を取りゆっくりと馬車から降ろしてくれる。その手は温かく優しいものであり、奴隷として売られていた時の不安や絶望感が少し安らいだ。
「今日からこの部屋で暮らしてもらう。」
私は彼の屋敷に着いてから驚く。
ご主人様は恐らく高位の貴族様であることがわかった。
屋敷は大きく広い、案内された部屋は女性らしい調度品を取り揃えられており、とても可愛らしくて素敵な部屋だ。
どう考えても奴隷が住むような部屋ではない。
「こんなに素敵な部屋を使わせていただけるんですか?」
勿論だ、と。ご主人様は頷き仮面をつけた使用人を呼びつけた。二名共に仮面をつけている。ここでは皆仮面をつけるルールでもあるのだろうか。
「これからはこの二人に日常の全てを教えてもらうと良い。カナデ、君はもう奴隷じゃなく家族だ。」
「あっ、ありがとうございます。よろしくお願いします。」
ご主人様はずっと不安だったせいで涙目になる私に恐る恐る頭を撫でてくれた。
そして、時々こんな風に触れても良いものか聞いてくる。
「どんどん触ってください!」
勢い余ってどんどん、なんて言った後にかぁっと赤面する。そこまで言うつもりは無かった。
クスッと笑われて、今度は大きな両手で頬を包まれる。
「本当に、カナデは平気なんだな…。」
不思議そうに、また嬉しそうに私の頬を撫でては呟いた。
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