17
王国アレクサンドロスでは定期的に剣や魔法の技術向上の為、魔術大会が開かれる。
ここ数年はアレンが優勝を続けていたが今年は聖女と婚姻を結んだエメロードにも注目が集まった。
エメロード本人も今大会で優勝を狙っている。
「アレン様、私も観戦してもよろしいのでしょうか?」
婚姻関係であるが貴族でもない元奴隷だ。関係者席にさえ入って良いものかカナデは悩んでいた。
それにアレンは聞かれることがわかっていたように答える。
「カナデ、悩まなくて良い。気にしている身分は上げられたし夫婦なのだから関係者席で俺だけを見ていて。」
そっと、カナデの髪を撫でて微笑む。二人きりの時は仮面を外して会話をすること。これはカナデが決めた約束事。
アレンの微笑む顔はとても優しい。愛しい人を見る瞳だ。
身分差を完全に埋める事は出来ないが婚姻を結んだことで奴隷など過去を探る輩も現れない。何せアレン=ローレンスは国の重鎮。王への進言も可能。宰相ではないが国を左右する決定ごとに口を挟んだこともあった。
「本当ですか?嬉しいです。応援してますのでどうか怪我なく帰って来てくださいね。」
カナデは嬉しそうにアレンの指を絡ませた。ゆっくりと距離が近づきキスを、
コンコン、とノック音で二人は目を開ける。こほん、とアレンが咳払いをして入室を許可する。
「失礼します。」
少し焦ったように入って来たのはミラだった。
「…その、聖女様よりお手紙が届きまして。」
聖女関連で皆頭を悩ましてきた為また何かあるのか、と気分が下がっていき空気が重くなった。
「開けて良いから読み上げてくれ。」
ミラは指示通り読み上げた。
内容は、要約すると今回の魔術大会でエメロードが優勝した場合、第二の夫としてアレンを所望する。と、いうもの。
到底理解が出来ないものでアレンはミラから受け取り無詠唱で炎を出し手紙を燃やした。
塵と化した手紙は開けていた窓へ飛んでいった。
「えっ、優勝したらって、こんなこと有り得るんですか?」
戸惑いアレンの手を握るカナデ。
「聖女の願いは叶えていくのが国の勤め。ある事を願われたら叶えるしかない。だが、」
絶対に優勝するから安心しろ。とカナデの顔を大きな両手で包む。額にキスをして、また、瞼にもキスを落とした。
「…アレン様、信じてます。どうか優勝してくださいね。」
不安気な顔でアレンの紫の瞳を見つめた。
いいね、ブックマーク、評価ありがとうございます!




