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「じゃあ、ルディ様とユウリ様はお付き合いを始めたってことですね。」
ミラに髪を丁寧に櫛でとかしてもらいながら女子トークならぬ、噂話をする。
キラは薄化粧の為に私と向き合い白粉をぽふぽふと優しく叩いていく。石鹸のような良い香りが漂う。
「詳しくはアレン様にお聞きください。さぁ、できましたよ。本日もお美しいです。」
うっ、と苦笑い。
彼女達の美しいは私のブス。いや、化粧して普通ぐらいになっていて欲しいものだと願う。
アレン様から頂いた普段着用のドレスに袖を通しミラに着用の手伝いをしてもらう。
最後に背中の留め具をしてもらい。出来上がり。もう何度も行ってきた朝の支度だけど、元の世界とは天と地の差もあるお姫様のような準備だ。
聖女ユウリ様は、もうこの世界の生活には慣れただろうか。
「では、ご朝食ですので向かいますよ。」
座っていた椅子を引き手を取ってくれるキラ。そしてコツコツとヒールの音を鳴らしながら長い廊下を歩いてゆく。
今日のドレスは水色で派手すぎないフリルのあるタイプだ。これも気に入っているが一番はやっぱりウェディングドレスだ。まだ着ることはないけれど用意は着々と進んでいた。
「おはようございます、アレン様。」
「あぁ、おはようカナデ。」
先に席に着いていたアレン様は今日も美しい。美人は三日で飽きると言った人は嘘つきだ。飽きるどころかずっと見ていたい気持ちになる。そんな方と一緒に居られるなんて何て幸せなこと。私は果報者だ。
「カナデの好きなパンがあるよ。沢山食べるんだ。」
「わぁ、やっぱり焼き立てのパンは美味しいです!」
クロワッサンのようなパンを小さく千切り口に運ぶ。バターの香りが広がり本当に美味しい。
「そうだ、カナデにも報告しよう。ルディと聖女様の件なんだが、」
お付き合いは始まったが、聖女様は他にも仮面の方がいらっしゃるならお会いしたいと訴えてきたらしい。
折角まとまりそうな話だっただけにアレン様も少し疲れが出てきていた。普段の王宮での仕事プラス仲人役。不慣れながら上手くいったと思ったらコレだからとても不憫に思た。
「そうなんですか…ルディ様だけじゃダメなんですかね。」
やはり、アレン様系のタイプじゃなきゃ納得出来ないんでしょうか?と、ナイフとフォークを一度置く。
「そうだ、私と聖女様の目は同じなので、是非この方をって見ましょうか?」
「嫌ダメだ。」
即答で断られる。
「もしもカエデが他の男に惹かれた、なんて事が起きたら俺はそいつを消さなければならなくなる。」
冗談ではなく真剣に言われる。
これはやきもちで合ってるだろうか?
「…えへ、妬いてくれたんですか?」
「当たり前だろう?」
こういったやり取りでも愛されている自信になる。
私は元の世界よりこの異世界での方が幸せだ。帰られる方法が見つかっても帰るつもりは無くなってしまった。
穏やかな朝食は続く。
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