1
私は自他共に認める普通の見た目をしている。体も細過ぎず太過ぎず。本当に普通だ。
普通に生きて普通に死ぬんだと思っていた。
それがまさか、電車の脱線事故で異世界へ転移するとは思わなかった。
異世界転移。小説や漫画の中だけだと思い込んでいたものに実際体験するとは。
私は転移後直ぐになす術無く奴隷として売られた。
そして、すぐに買われた。相手は物凄い美形で背も高くモデルさんのような人。
普通な私より綺麗な奴隷はまだ居たのに私を選んだのは理由があった。
「本当に吐かないんだな?」
「はい、全く。平気ですご主人様。」
何度も繰り返している会話に違和感を覚える。
確かに奴隷として鎖に繋がれていた時に私の近くに居た奴隷達は皆揃って顔を背けたり隠れるように体を縮こめていた。
嗚呼、この世界は美醜の感覚が私の世界とでは違うのだと馬車に揺られながら気づいた。
何もかも初めての事で頭がついていかない。
そんな中、横並びに乗っていた馬車の揺れにより互いの手がほんの少しだけ触れ合った。びくり、と大きく反応したのはご主人様の方。
「すまない!」
奴隷に謝るご主人様はこの世に居るのだろうか。
私は平気です。とご主人様に向き直ると本当に焦って心配している顔をしていた。
「謝らなくて良いんですよ。奴隷なのですから。」
そう私が言うと少し傷ついたような表情を見せた。何か気に触るようなことをしただろうか?
「今後、俺はお前を奴隷として扱わない。」
真剣な眼。
不意に名前を聞かれた。奴隷としての名前なんて無く、少し悩みながら元々の名前を名乗る。
「カナデ、といいます。」
「そうか、カナデ。これからよろしく頼む。」
美しいご主人様。
きっとこの異世界では好まれない見た目なのだろう。
私から握手を求めると戸惑いながら両手で包まれる。
「よろしくお願いしますご主人様。」
一度やってみたかった美醜逆転ものです。




