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「バケモノ」

 ショッピングモールより南西のとある十字路で、人と車の接触事故が起こった。

 目撃者の話によると歩行者が青信号の横断歩道を歩いていた所へ信号無視の車が突っ込むというよく聞く事故だった。

 しかし不可思議にも車は歩行者に接触する前にフロント部分を半円に穿うがたれコンクリートには拳大のクレーターが出来ていた。それに加えて衝撃からか、車は前輪がパンクし後方が大きく上に上がっていたという。


「そこの人!離れて」


 現場に駆け付けた白いパーカーの人物は歩行者に叫ぶと大破し燃え始めた車へと目を向けた。正確には車の前に立つ人の形をした青白い何かに。


「あなた何者?」


 彼女の問いに『ソレ』は両手に視線を落とした。次いでスキンヘッドの頭に手を当てた。


「私、は……」


 しかし青白のソレは顔を上げるとゆっくりと大破した車の運転席側へと歩み寄る。見ると、燃える車にはまだ運転手が取り残されていた。


(人質を取るつもり……?)


 『青白い何か』は片手でドアを枠ごと外すとシートベルトを引きちぎり、突然の事に怯える運転手の服の襟首を掴むと外へ放り投げた。

 その後車が大きな音を立てて爆発した。

 運転手は命の恩人ではあるものの視認出来ない『人』に恐怖のあまり絶叫しその場から走り去ってしまった。

 彼女はそんな運転手に車はいいのかなという疑問を持ったが、ナンバーや運転手の容姿から見て無免許の盗難車の様だった。


「私はN-221……」


 炎の中から『ソレ』は姿を現した。

 確か先生が吹き飛ばしてしまった荷がN-221と呼ばれていたのを思い出した。しかし、知っている形とは全く違っていた。


「N-221。貴方は一体なんなの? 先程の姿とはまるで違う……」

「やはり貴女は……」


 何も知らないのですね、とN-221は呟いた。


「貴方の名前は」

「エルアよ」

「エルアは私を殺すのですか?」

「いいえ、殺すのは最後の手段との命令よ」

「なら、私は貴女と戦いたく無い」

「なら大人しく捕まってくれる?」

「しかし私はもう彼処あそこには、戻りたく無い」


 N-221(以下略N)は両手で印を結ぶと大きく息を吸った。


-火遁 炎葬えんそう


 ゴゥッという音と共にNの口元から炎が生じた。彼女の側面はブロック塀で囲まれており、前からは炎と退路は断たれていた。

 エルアは素早く地面に錬成陣を描き、両手を押し付けた。すると彼女の前のコンクリートがせり上がり、出来た壁が炎を上に逃した。

 直後、コンクリートの壁が砕かれ、そこからNが飛び出して来た。

 Nは彼女の懐に入ると鳩尾みぞおちに向かって左腕を振り上げた。

 しかし、渾身の一撃を彼女は後方宙返りで回避すると着地時の勢いを活かした二度目のバク宙で後方に飛び退いた。


『…………』


 2人は改めて相対し、Nは拳に呪力を宿した。一方で彼女の両腕に付けていた腕輪が機械製のグローブに変化した。

 その機械製のグローブはサポートアイテムと呼ばれる能力者用に作製されたもので、非能力者でもオーダーは可能となっている。

 Nはゆっくりと彼女に歩み寄ると拳を繰り出した。それを彼女は手の甲だけで攻撃を回避する。回避出来てしまう。

 呪力は打撃で最大限効果を発揮出来るが、当たらなければ意味が無い。

 彼女が回避出来る理由としては、武道で用いられるいなし技を使っているからだ。

 Nは呪力のこもった拳を放ちエルアはそれを払って避ける。それを繰り返しているうちに2人の反応速度は増していったが、攻撃に集中するNの隙を彼女は見逃さなかった。

 彼女は身を屈め、Nの腹部に両手の平を水平に合わせ寸前で止めると、拳を丸めながら突いた。


-衝波 とら


 するとNは勢いよく斜め上に吹き飛びドゴッという音と共に、崩れずに残っていた先程彼女が錬成した壁の上部にめり込んだ。

 しかしその壁も先の衝撃で耐久値が無くなったのか、ガラガラと音を立てて崩れてしまった。

 彼女はとどめを刺すために瓦礫の山へ歩み寄った。しかしそこにNの姿は無く、カカカッという瓦の音が響いてきた。

 見れば所々負傷したNが後方の屋根を伝って逃走を図っていた。

 拘束又は抹殺命令が降っているエルアとしては追うしか無いので屋根に軽く飛び乗るとそのまま跡を追った。

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