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狂戦士は平凡な貴族になりたい ~新米領主の領地開拓スローターライフ~  作者: 結城 からく


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第97話 新米貴族は戦いを制す

「え……」


 自分の手元を見る。

 ナイフを握っていた。

 刃はランクレイ准伯爵の胸を抉っている。


 後ずさった拍子にナイフが抜けた。

 胸の傷から血が溢れて、准伯爵が力なく倒れる。

 地面に額を強打したが反応しない。

 彼女の下からじわじわと血が広がっていく。


 見れば彼女は全身が傷だらけだった。

 手足の残骸が周囲に散乱している。


(誰がやったのだろう)


 疑問に思うも、答えは明白であった。

 僕達がやったのだった。

 満身創痍の身体は、ひたすらに苦痛を訴えている。

 死んでいないのが不思議なくらいだった。


 観客は大歓声を巻き起こしていた。

 割れんばかりの拍手だ。

 死体だったはずなのに今は生きている。


「……はは」


 僕は脱力して膝をつく。

 頭の後ろで何かが切れる音がした。


 顔に密着していた木製の仮面が落下する。

 どうやら留め具が切れたらしい。

 縦に割れた仮面は両面が赤黒く汚れていた。


 准伯爵のそばには鉄仮面も転がっていた。

 全体が派手にひしゃげて原形を保っていない。

 修繕するにはかなりの手間がかかるだろう。


 僕は木と鉄の仮面をそれぞれ拾うと、それを手に闘技場の中央部から立ち去った。


 もう戦いは終わったのだ。

 壮絶な殺し合いだったが、なんとか生き残った。


 観客と僕では、見えた光景がまるで違っただろう。

 どちらも実際に起きたことだった。

 真実はこの場に存在している。


 僕は片足を引きずりながら闘技場の通路を進む。

 すぐさま兵士が駆け寄ってきて、場内の医務室へ連れ込まれた。


 ベッドに寝かされた僕はされるがままに治療を受ける。


(ルードは死んだのだろうか)


 ふと考える。


 僕達は確かに殺し合った。

 互いに混ざり合いながら凄惨な戦いを繰り広げた。

 結果として僕が制した気がするが、正直それも定かではない。


 僕は本当にエリスなのか。

 どこかの時点で人格が歪んで、勘違いしていだけではないのか。

 何度も精神が裏返った――いや、あれはそういう次元ではなかった。

 精神分離の禁術はもう破綻していると思う。


 手に持った仮面の感触を確かめながら、僕は顔を曇らせる。


「うおっ」


 治療にあたっていた人間が声を上げた。

 見れば、腹の裂傷が勝手に塞がっていくところだった。

 肉が盛り上がって再生を始めている。


「まあ、そうか」


 なんとなく察していたので驚きは少ない。

 やはり狂戦士はしぶといようだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] >観客と僕では、見えた光景がまるで違っただろう。 >どちらも実際に起きたことだった。 >真実はこの場に存在している。 何が起きているか上手く…
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